表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜に恋ゆ  作者: シン
9/16

#9

彼女と会う日は、あっという間に訪れた。


彼女の希望で、学校の最寄り駅、登校の時とは逆側の改札で集合することになった。

同じ駅だというのに、改札が違うだけで違う場所の様に思えるから、不思議だ。


改札を出ると、いつも見慣れた並木道が目に映る。

ただ、桜並木以外の光景は、使い慣れた同じ駅とは思えないほど栄えていて。

少し先に見える、大学病院の窓が太陽光を反射してキラキラと輝いていたのが、やたらと印象に残っている。


改札を出てすぐの柱に寄りかかって彼女を待つ。


慣れない髪のセット、少し背伸びをして買った洋服。

少し張り切りすぎていないだろうか、彼女に引かれたらどうしよう。

今日という日のために、色々と考えすぎて緊張していた僕は、

目の前に迫る人影に気づくのが遅れた。


人の気配を感じて、ぱっ、と顔を上げると、

僕を覗き込む彼女の薄茶色の瞳が目に映る。


驚いたように丸くしてから、きゅっと細められる彼女の目。

彼女は、イタズラに成功した子供のような無邪気な顔で笑っていた。


あの日と同じ桜色のワンピースに、夏に似合わない長袖の白いカーディガン。

僕の目の前にいる彼女は、記憶の中の彼女よりも線が細く、透き通った白さをしていて、

今にも消えてしまいそうだった。


その儚さすらも、彼女の美しさの一欠片のように思えてきて。

僕は彼女を前に、時が止まったかの様な錯覚に陥っていた。


「待たせちゃった?ごめんごめん。て、おーい?きこえてるー?」

顔の前でブンブンと手を降る彼女の姿を見て、ようやく僕の時は動き出す。


「びっくりしすぎてフリーズしてたわw 心臓にわりぃ〜」

「気づいてくれないんだもん、仕方ないじゃん?」

「それは、すまん。」


彼女は、くるりと向こうを向いて

それから、こちらを振り返って僕に言う。


「そんな事は置いといて、早く行こ?」


軽快に歩き出した彼女の後を追いかける。

風になびく彼女の髪の毛は、太陽の光を吸収して、明るく輝いている。


手を伸ばせば届く距離にいる。

彼女の細い手を握りたい、その衝動をグッと抑える。


手を握るのは、きちんと彼女に想いを伝えてから。


僕は今日、彼女に告白する。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ