#8
その後は会う日のことについて話し合った。
ここは行きたいよね、この店とかどう?
"デートの予定を立てるカップルみたい"
喉まででかかった言葉を飲み込んで、
ふと、恋愛について話した事がなかったな、と考えた僕は
自然な流れで彼女に聞いた。
"ねえ、ハルは、さ? 好きな人いた事あるの?"
"おっ!初めて私のこと名前で呼んだじゃん! 感動感動✨️"
"確かに! じゃなくて、はぐらかすなよ。"
また、はぐらかされるかな。と思っていたのに。
意外にも彼女は素直に答えてくれた。
"はいはい。好きな人くらいは、勿論。でも、付き合ったことは無いかな。告白されたことはあるけど、断ったんだよね。"
"まじか、勿体ない"
"そういう君はどうなのよ。"
僕が好きなのは君なんだけどな。
"好きな人くらいはいるよ。残念ながら告白されたことも付き合ったことも無いけど。"
"ふーん。じゃあ非リアな訳ね。お可哀想にw"
"うるさいな、ブーメランだろ?非リアさん。"
"ひどーいw まぁいいじゃん!非リア同士仲良くしよ?"
"惨めになるからやめてくれ泣"
本当に、惨めになるから。
"ポジティブに捉えなよ。ほら、初カノが嫁になる未来もあるかもじゃん?"
"世の中そんな甘くないわ"
自分に言い聞かせる意味も込めた言葉に、
勘の良い彼女は、気付いていたのかもしれないと、今になって思う。
" ん? 旦那の方が良かった? なんか、話聞こか?"
"んなわけあるか。バカなのか?"
"あ、バカって言った〜。バカって言う方が馬鹿なんだよ?"
"わかりましたすみませんw"
"よろしい。で、計画の続きなんだけどさ…"
上手く流された気がする。
でも、彼女に恋人がいないことを知れただけでも、
当時の僕は幸せだった。