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#5
それから、彼女とチャットをする日々が続いた。
学校にいる以外の時間は、彼女と連絡を取り合う。
決して早くは無い彼女の返信だが、それをソワソワと待つ時間までもが楽しかった。
彼女と連絡を取り始めて1週間が経った。
彼女との連絡の中で、気づいたことがある。
彼女は自分の生活に関することをほとんど話さない。
家族、学校、友達。
まるで何もかにもが彼女とは関係がないかのように。
全てを切り捨てている訳ではなく、そこに何も無いから話さない、といった感じ。
だから、あえて問うことはしなかった。
そのミステリアスさもまた、彼女の魅力であるように感じたから。
ある時、彼女に通話をしないか、と聞いた。
深い意味は無い、ただ話してみたいと思っただけ。
返信を待つ僕の心臓がドキドキと高鳴っているのを感じる。
10分ほどしてから、彼女の返信が届いた。
"ごめん、今は無理。周りがうるさいから。10分だけとかになるかもだけど、通話出来る時に私からかけるよ。"
"わかった"
通話自体が嫌な訳では無いのか。
そんな些細なことに少し嬉しくなる。