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オサメの試練

 ついに、俺達の旅が始まった。

 目指すは商業の盛んな国、ディファレント。

 俺は今、ディファレントに向かう為の長い道のりを歩いている。

 と、言っても今は下山しているようなものだ。

 なにせ、俺が最初にいたあの場所は、俺の予想どうり山の頂上だったのだ。

 しかも、結構高い山。

 そのせいで歩いても歩いても獣道だ。

「すごい疲れる」

「はぁ〜、もうちょっと頑張ってくださいよ。もうすぐ下り終わりますから」

 前にそのセリフを聞いてからもう1時間くらい経っているんですが………。

 ………黙々と山を下る。

 音がするのは、踏んで潰れた葉や、木の枝くらいだ。

 本当に、大自然だな。こんなに緑が多い場所は始めてだ。さすが、異世界。

 そういえば、最初の頃にファイルは、武器を持たずにどうやってここまで来たんだ、と言ってたな………。

 せっかくの機会だ。どうゆう意味なのか、詳しく聞いてみよう。

 雑談してる間なら、疲れも忘れられるだろうしな。

「なぁ、ファイル。武器を持たずにこの山に登るのって、そんな危険なのか?」

「危険というか、そもそも生きる術を持ってないと言うか、常識がないと言うか………」

 ファイルは呆れた様に俺を見、話す。

「この山には、ゴブリンが出るんですよ」

「は!?」

 嘘だろッ!? ゴブリン!? そいつはまずい。マジでまずい。

 見つかったら最後、死よりも怖い体験をするぞ。

 絶対に会いたくない。

「てか!」

「なんです? うるさくしてると本当にゴブリンが出ますよ」

 あっ、やべ。

「てか、なんで俺らはあそこにいてゴブリンに会わなかったんだ?」

 俺は周りに注意し、小声で質問する。

「あ〜、それはですね。空気が薄いからです。ほら、高い所に行けば行くほど空気が薄くなるでしょう?」

「………なるほど。そういうことか」

 俺はうんうんと頷く。

 そして

「じゃあ、今は下山してるから会うかも………」

「知れませんね」

 ………………でしょうね、会いたくない。

 見るからに嫌そうな顔をした俺を見てか、ファイルが

「まぁ、出たとしても今の私達なら負けるはずありません!」

 そう、自信満々に言ってくる。

 ………なぁ、それってフラグじゃ……。



 言わんこっちゃない!

 どうするんだよ!

 今、俺達の前にはゴブリンが3体いる。

 背は低く、緑の汚え色をし、3体とも揃って動物の皮を衣服のようにして着ている。

 装備している武器は2体がこんぼう、一体がボロボロの錆びついた剣。

 俺とファイルは武器を持ち、警戒する。

 こうなった以上、戦うしかない。

「オサメさん、ゴブリンはすばしっこく、意外にも頭がいいです。気をつけて」

「ああ、任せろ」

 そもそも、こんな所で負けるわけにはいかない。

「ケ、シャッ」

 剣を持ったゴブリンがそんな謎の言語を放った瞬間、3体のゴブリンが一斉に襲ってくる。

 ッ……あまり俺は戦いたくなかったのに…………。

 だが、そんなこと言っている場合ではない。

 剣を持ったゴブリンが俺に対し、剣を振るってくる。

「………ッ」

 俺は棒でゴブリンの攻撃を防ぐ。

 ……こいつ、何気に力が強い………ッ。

 流石に力負けするようなことはないだろうが、本気でいかなきゃ負ける。

 俺は一気に力を入れ、棒を振るう。

「ケッ」

 しかし、その瞬間にゴブリンが剣の位置を上手く変え、俺の攻撃を受け流すようにして避ける。

 ……ッ、まずい!

 俺は棒を振るった。しかもほぼ全力でだ。そのせいで………。

 体勢を崩したッ……!

 焦るな、俺。ゴブリンは今、回避しつつ俺との距離を空けた状態だ。

 集中しろ。……俺ッ!

 視界からゴブリンがいなくならないよう、俺はゴブリンを見据えながら体勢を立て直し、ゴブリンに向かって走り出す。

 距離が空いてなきゃ、まずかったな。

 ブンッ、とゴブリンの持っている剣に向かって、俺は棒を振るう。

「ケケッ」

 ゴブリンはそれを後退して躱す。

 ちきしょう。

 続けざまに、二振り、三振りと連続して棒を振るっていく。

 しかし、どの攻撃もゴブリンには当たらない。

 くそっ、すばしっこい奴だ。

 だが、ゴブリンは後ろに何があるのかも見ずに、俺の攻撃を後退して避け続けている。

 そして、ここは山の中。木がたくさん生えている。

 つまり………。

 俺は棒を構える。狙うは胴。確実に、当てられるッ!

 ゴブリンは再び後退しようとした所で背中を木にぶつける。

「ケッ」

 今更気づいても、遅………っ!

 嘘だろ…………ジャンプして、避けやがった………っ!!

「ごあっ!」

 頭の位置まで飛んだゴブリンが俺の頭を蹴る。

「オサメさん! くっ……」

 俺は蹴られた勢いに耐えきれず、仰向けに倒れる。

 くそっ、まずいっ!

 ゴブリンは剣を下に向け、俺の心臓めがけて落下してきている。

 ダメだ、避けられない………っ!

「くっ」

 ごめん、俺は何も出来なかった…………。

 死を覚悟したその瞬間

 バシュッ!!

「ゲッ………!」

 横から飛んできた矢が、ゴブリンを撃ち抜いた。

 バタッ、とゴブリンが地面に落ち、剣は俺の顔すぐ隣の地面に刺さる。

「こんな所じゃ、死んでも死にきれないぞ」

 その声と共に現れたのは、一人の男だった。

 アーチャー帽をかぶり、手には大きな弓を持っている。

 顔は程よく伸びた髪に髭。まさに、旅人といった感じで、風格のある男。

 その男は弓に矢をつがえ、ファイルの方にいる残りの2体も撃ち抜く。

 なんて正確な……ッ。動いているゴブリンをあんな簡単に撃ち抜くなんて………。

「ケ………」

 バタバタッと2体のゴブリンが続けざまに倒れる。

 な、なんだあいつはッ、つ、強い。

 素早く動き回るゴブリンを、あんないとも簡単に撃ち抜くとは。しかも、全て頭部を正確に撃ち抜いていた。

 一体、奴はなんなんだ。

 横目でゴブリン達を確認すると、もう奴らは息をしていなかった。そのかわりに、地面いっぱいに赤黒い海を広げていた。

「………ッ!」

 改めて、いついかなる時も死と隣合わせという恐怖が、俺の全身に視覚からの情報で流れ込んできた。

 もし助けてもらえなければ、俺があの姿になっていたかもしれない。

 そう思うと、怖くてたまらない。

「まさか、ゴブリン程度で苦戦する旅人がいるとは」

 男が笑いながら俺のもとに歩いてくる。

 そして、未だ地面に仰向けで倒れている俺に向かって、男は手を差し伸べる。

「ほら、立てるか?」

 俺はその手を借り、立ち上がる。

「ああ、立てる。ありがとう」

 感謝をしたところで、ファイルも俺の方に小走りで近づいてくる。

「先ほどはありがとうございました。あの、あなたのお名前は?」

「名前? ん〜、データ、と名乗っておくよ」

 男は愛想よく笑いながら、そう名乗った。



 データは、これもなにかの縁だからと言って、自分達の仲間がいる所に俺達を案内してくれた。

 そこには、馬車があった。2台の馬車があり、両方とも同じ形、大きさで、馬車というだけあって隣にはしっかり馬もいた。

 なにもかもが俺にとって見るのは初めてだ。馬車なんて、本当に使えるものだったのか。俺はてっきり、アニメとかならよく描写されるけど、実際はそんなに使われるものじゃないと思ってたぞ。

「おーい、客人だぞー」

 データが馬車に乗り込んで呼びかける。

 それから数秒後、わいわいと話しながら三人組になって出てきた。

 残りの2人も、データのように髭を生やし、まさに旅人といった感じだった。

「こいつら、俺の仲間な。左がメジアンで、右がラージ」

 左側にいた、たわしあごの男がメジアン。右側にいた髪が大爆発してる男がラージ。………すごく分かりやすい。違いがはっきりしすぎている。

「よう。俺、メジアン。なぁそこの少女さん、早速だけど俺とデートしなゴッォ!」

 データが笑顔のまま、メジアンの頭をぶん殴る。

「こいつ自体は悪い奴じゃないんだ。ははは」

 そう言って、データはメジアンを連れて奥の方に去っていく。

「「………」」

 えぇ、と困惑した状態で呆然としているともう一人の男、ラージが口を開く。

「まぁ、そこら辺にある丸太にでも座って待っていてくれ。飯でも準備してやるよ」

「ありがとうございます、ラージさん」

 すかさずファイルは感謝を告げる。

「ありがとう」

 俺もそれに倣って感謝を伝える。

 ご飯。そういえばこっちの世界に来てからほとんどじゃがいもばかりの食事だったな。

 ………久々にいい飯が食えそうだ!

 うきうき気分で近くにドンと存在感を放ちながら横になっている丸太に座る。

 座って分かった。丸太は結構冷たい。

 隣にファイルもちょこんと座り、2人並んで待つ。

「オサメさん。まさかとは思いますが警戒心を解いているわけではありませんよね?」

 一体何を言ってるんだ、ファイル。

「ご飯を出してくれるいい人達だ。警戒する必要がどこにあるんだ?」

 俺は率直に、端的に今浮かんだ疑問をぶつけてみた。

 そこまでして気を付けなければならないことなんてあるはずがない。あるとしても、せいぜいゴブリンの対処くらいだ。

 ………まぁ、俺はそれ自体出来なかったわけですが……。

「何、わけのわからないこと言ってるんですか」

 こそこそとファイルが耳元で指摘してくる。

「いいですか。こういうのは毒が入っていることがあるんですよ。しかも食べたら一発でアウトのやつです。旅人の常識ですよ?」

 ……ど、毒。

 毒なんて入れる奴がいるのか。この世界には………。

 ぞくぞくと身震いし、そういえば前に読んだ異世界物の小説で飯に毒を混ぜて毒殺してるキャラいたな、と思い出す。

 怖い、怖すぎる。

 改めて、はっきりと今までの常識が通用しない世界に来たんだと思い知り、これからは自分の常識をどんどんと変えていかないといけないんだと焦燥する。

 たった一つの選択ミスで死を招く世界、それがこの世界だ。社会的地位を失うだけで済む、あの優しかった世界じゃもうないんだ。

 俺はファイルとの特訓で、こっちの世界がどれほど実力主義で成り立っているのか学んだはずなのに。

 それをすっかり忘れてしまっていた。

「………悪い、気をつける」

 ボソッとそう口にし、俺は下を向く。

 なんでこうやって言われるまで気付けないんだ、俺は。

 己の慎重さ、警戒心、先読み能力、どれをとってもファイルに負けている。

 そんな自分、嫌気が刺した。

 あれも出来ない、これも出来ない。特訓をしたのに、先の戦いで死にかけた。善戦すら出来なかった。俺のせいで、ファイルも死にかけた。

 なんで、なんで俺は、こんなに弱いんだッ………。

 その時、グイッと誰かに腕を引っ張られる。

「うおっ」

 突然のことで、俺は情けない声を漏らす。

「お前、ちょっと来い」

 その声は、俺達を助けてくれたデータの声だった。

 いつ戻ってきたんだ? ついさっきメジアンと一緒にどこか奥の方へ行ったはず。戻って来るには少し早すぎる気が……。

 そんな事を考えている間にも、俺は、こっちだと導かれるようにと引っ張られる。

「ちょ、おっさんどういう……」

「黙ってついてこい」

 そう答えたおっさん、データの顔は、真剣そのものだった。

 ファイル達がいる場所から離れ、森の中へと逆戻りする。

 時々、バキッと落ちている枝を踏みながら、俺は黙っておっさんに付いて行く。

 ふと、おっさんが俺の手を離し、止まる。

 前に出しそうになった右足を出さないようになんとか静止し、俺は困惑しながらおっさんの顔を見る。

 おっさんは俺の方に振り向き、声を出す。

「お前、死にそうになったことないだろ」

「………は?」

 おっさんの言葉に俺はますます困惑する。

 何に理由に俺は死にそうにならなきゃいけないんだ。ふざけたことを言わないでくれ。

 おっさんが拳を強く握りしめているの俺は知らず、答えを返す。

「ないですよ。死にそうになったことなんて」

 その瞬間、おっさんが左腰に提げていた剣を引き抜き、剣の腹で思いっきり俺の頬を叩く。

「がっ…!」

 体勢を崩し、俺は地面に尻もちをつく。

 なんで………っ!

「そんな薄っぺらい経験しかしていないから、貴様は俺の攻撃を避けられなかった!!」

 おっさんが怒鳴る。

「あの時俺が助けに行かなかったら、貴様らは死んでいた! その自覚を持て!」

 紛れもない事実。だが、何故俺を叩く必要があった? 身を持って学べということか? それとも………

 何が目的なのかの答えが出せないまま、おっさんは俺に剣を振るってくる。

「……っ!」

 地面を転がり、なんとかその一撃を防ぐ。

「どういうつもりなんだ! おっさん!」

 明確な敵意。俺はそれを感じ取り、リュックサックにしまい込めず、はみ出した棒をなんとなくの感覚で手に取る。

 冷たい棒の感触が手に走る。

 グッと力を込め、リュックサックから棒を引き抜く。

「貴様みたいな小僧に、殺し合いの恐怖を叩き込んでやる!!」

 そう言い、おっさんは俺に向かって走ってくる。

 殺し合い………。そんなことして一体何のメリットがあると言うんだ、このおっさんは……!

 おっさんは剣の刃を向け、俺に斬りかかる。

 ガキィ! と棒でその一撃を防ぎ、不快音が森の中に響く。

「この山は、貴様みたいなザコが来る場所じゃない。あんなゴブリンに遅れを取っているようじゃ、この山は無事に下山出来ない!」

 バッ! とおっさんが剣に力を入れ、弾く。

 俺は体勢を崩し、後退する。

 くそっ……ファイルも言ってた、力が無きゃ死ぬだけだって。おっさんも、同じことを思ってるってことか…!

 今度は俺が攻撃を仕掛ける。

 体勢を立て直し、瞬時に地を蹴る。

 グッと力を込め、棒を振るう。

 だが、その攻撃をおっさんは軽々と避ける。

 攻撃によって生まれた隙。その隙を狙っておっさんの一撃が来る。

「くっ……」

 即座に棒を逆手持ちに切り替え、上から来る攻撃を下から防ぐ。

 重い衝撃が走り、鍔迫り合いになる。

 左手で棒の下方を握り、両手で棒を支えるが、状況が厳しい。だんだんとおっさんに力負けし、押されていく。

「なんで急にこんなことするんだ! おっさん!」

「弱い者はこの世界じゃ生きられない。ましてや、女1人も守れない男は、最悪だ!」

 力が先程より数倍増す。

 弱いことが、そんなにダメなのかよっ。こっちはまだ、一ヶ月しか特訓してないんだぞ!

 自分がなぜここまでボロクソに言われなきゃいけないのか。だんだんと湧いてきた怒りで、一気におっさんを押し返す。

 その時、不思議と力が入りやすく、軽々と押し返せた。

 一旦距離を取り、様子を見る。

 先手を取れれば勝てるはずだ。それには、まずわざと攻撃させる。そしてその攻撃を避け、俺が一撃を確実に食らわす。

 一瞬で作戦を練り、次の攻撃に備える。

 勝てばいいんだ。そう、勝てば。そうすればもう弱いだとか、死にたいのかとか、馬鹿にされないで済むようになるはずだ。

 だから、おっさん。俺はあんたに、恩を仇で返させてもらう。

 再び迫ってくるおっさん。

 右手でしっかりと握られている剣。その剣が切っ先を地面にこすりながら俺に肉薄した瞬間、その剣を斜めに振り上げる。

「………ッ」

 意外にも長い刀身を避けきれず、剣がリュックサックの肩紐を掠める。

 反撃とばかりに俺は棒を振るう。

 だが、それはスカッとおっさんに避けられ、空を切るのみだった。

「くそっ……」

 その後も、同じような展開が続く。

 おっさんの攻撃をギリギリで避け、俺は攻撃を行う。

 けれど、どんなに攻撃をしても俺の攻撃がおっさんに届くことはない。

 ただただ、空を切るのみ。

 どうやったら勝てるんだ。おっさんに………。

 考える。今までの数少ない経験。この世界に来てからの全ての戦いを思い出す。

 ファイルとの特訓。ゴブリンとの戦闘。それ以外は………何も、ない。

 圧倒な知識、経験不足………ッ。

 何も進展のない、同じことを繰り返す戦闘。これじゃあ体力が尽きたら終わりだ。なんとか打開しないと………。

 じわじわと焦りが生じる。

 おっさんからの攻撃が先程よりも速く感じる。

 どれだけ考えても最適な行動が思いつかない。

 くそっ……どうすれば勝てるんだっ! どうすればっ……!

 戦いから一瞬、気をそらした隙を狙われ、俺は顔面に打撃を食らう。

 剣の腹が思いっきり頬にぶつかり、勢いで俺は倒れる。

「くそっ……」

 悪態をつき、立ち上がろうとする。

 だが、シュッと目の前に剣を突きつけられる。

 切っ先が日の光を反射し、きらりと光る。

「もう終わりか? 坊主」

 おっさんが俺を見下す。

 ふざけやがって……!

 ガササッ!!

 草や葉にこすれる音。

 一体何が……。今ここには俺とおっさんしかいないはず。他に人は………。

「ケ……」

 音のした方を見て俺は絶句する。

 汚い緑色をした体に人間よりも遥かに小さい身長。そこにいたのは、ゴブリンだった。

 なんでここにいるんだっ、ゴブリンはさっき倒したはず、なのになぜ……。

 俺の疑問にまるで答えるようにしておっさんが口を開く。

「あ〜あ、来ちまったか。別のゴブリン共」

 別の……。ということは、まさかこの山にはまだたくさんゴブリンがいるのか……!?

 途端におっさんが剣を仕舞い、俺に声をかける。

「俺のいる拠点には魔除けの石がある。そこまでくればこいつらは襲ってこない。…………行きて帰って来れたら、認めてやるよ」

「あんたは一体何を言って………」

 おっさんは華麗な動作でこの場から立ち去っていく。

 残されたのは俺1人。そしてゴブリンが2匹。

「ケケ」

「ケケケケッ」

 ゴブリンは2匹共武器を構え、俺の様子を伺う。

 俺は立ち上がり、棒を強く握る。

 急に殺そうとして、認めるとか言い出して………。

 俺は腹がたった。自己中心的な行動で死に追いやられ、あげくの果てにゴブリンが2匹、今度はおっさんのかわりに俺を殺しそうとしてくる。

 どいつもこいつも、行きるか死ぬかしか考えてない。俺が弱いからダメなのか、この世界がダメなのか。なんなんだよ。俺はまだ、この世界でやりたいことも決まってないのに……!

 棒を構える。

 俺は今、無性に暴れたい気分だ。

 ゴブリンにまったく歯が立たず、俺は死にかけた。正直、勝てる気がしない。

 逃げるにしても、きっと俺の脚力じゃ逃げ切れない。

 絶望的な状況。生き残るには、きっとこいつらを倒すしか道がない。

 今、俺は1人だ。誰も助けに来ないし、助けを呼んでもきっと気付いてもらえない。

 棒を強く握り、集中する。

 未だに理解出来ないこの世界。まったく分からないこの世界の当たり前。

 けれど、1つだけはっきりと分かるもの。

 それは、戦えない者は死んでいく。

 ゴブリン2匹が俺に対して走ってくる。

 すれ違いざまの攻撃。俺は棒で片方の攻撃を受け、片方は避ける。

 この瞬間、俺とゴブリンの戦いは始まった。

約半年ぶりの更新です。

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