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防御的建設作業の安全議論


現場作業中に、危険接近警戒を容易にする為に、白っぽい何かをΩの狭隘部に最初に展開したい。

といっても、布切れ一つ買えないぼくたちには、白い砂や灰を撒いて地面を白くするとか、白い繊維面を剥き出しにした編み込み板を立てるくらいしか、手が無い。


「まあ、警戒だけでなく接近阻止も兼ねて、編み込み板を杭三本で打ち込むのがいいんじゃない?」

「携行していって、積み上げておいて、橋を渡したら現場へ移して積み上げて、狭隘部は少し島の天辺から下がってるから、上から下へ下ろして行って、下で作業する者が受け取って、杭を打ち込んで柵を設置してゆく。狭隘部の端から端までさっさと打ち込んで……」

「待て待て、杭打ち一つとっても、そんな早くできねえよ」

「まあ、男子三人全員で懸かるしかないよ。杭打ちだけ先に」

「いや、先に更に少し奥に砂を撒いて、更に奥に鳴子を設置してさ……」

「砂っても、重いし。鳴子だけでいいだろ」

「柵を立てるのって、真ん中から最初にした方がいいよね?」

「そうだね、とりあえず少しでも防ぐのに役に立ちそうだよね」

「あ、最初から柵と柵を繋いでおいたら、良いんじゃない?」

「おー、それはもしかしたら、良いかもしれない……色々考えてみたいなあ」


鳴子警戒線だけ少し奥に先にさっさと張ってから、次に携行柵をどんどん入れてどんどん杭打ちして、真ん中からどんどん立てる。ドンドン、ドンドン、地響きがしてきそうだ。それだけで獣が逃げてくれればいいんだが。


「杭打ちだけでも結構時間かかるから、どうせなら最初は本拠の壁だけ建てるのが良いよ。あまり奥とか低い所とかで長時間作業していると、敵が迫って来た時に危ないから」

「たしかに、戦うんなら高い所に居たいよな」


本拠の壁を、立木もできるだけ利用して、壁材は丸木橋のこちら側に予め積んでおいて、当日どんどん搬入してどんどん積上げて、壁を建てちゃおう。


「うーん、その資材搬入にも時間かかるじゃん。危ないんじゃないか?」

「じゃあ、トヨ、先に橋渡って、見張っててくれ」

「オレだろうな、やるなら」

「トヨの安全の為に、緊急避難箱を最初に搬入する」

「何それ?」

「いざとなったら、その箱の中に入って身を護る。壊されない強度で作っておく」

「そんなの重すぎて、橋を渡せないンじゃね?」

「うーん、じゃあ、小川のこちらの木の上に太い蔓を結んで、下の端をトヨに持ってて貰って、いざとなったら蔓に捉まって、小川を一気に飛び越す」

「いや、丸木橋を渡って追いかけて来るンじゃね?」


どうやったら安全に作業を進められるのか、討議が続く。

建設作業の安全確保に関する話し合いの結果、やっと幾つかの事が決まって来た。


先ず、小川のこちら側から、『島』へ架橋して、進入・搬入する。

非常時には、紐を引いてロックを外したうえで、縄を引いて橋を水平回転させて小川へ落とす。

引き揚げとかスライドに較べて、子供の力でも可能な方法だから。

落としても橋が流れないようにしておく。


架橋後、連結した携行柵を搬入して、島の天辺から奥側へ下り出す坂の上端に、高速展開する。

その場所にある立木の向こう側へ並べ立てて、縄で固く結わえる。

獣の突進の勢いを殺ぐ簡易防壁。


基本、最も目敏いトヨが見張り続けるが、必要に応じて交代する。

見張りは、最前線近傍で見渡せる柵の辺りで、高い足場の上から観察警戒し、非常時にはターザン方式で素早く渡河脱出する。

その為の足場や蔓(縄)や固定点などの検討は後で。


架橋、携行柵の高速展開後、資材を搬入して、本拠の壁を建設。


また、見張りの警戒の下、奥へ鳴子の警戒線を設置。

設置実行者は、盾を構えたぼく。

体格に恵まれていて逃げ足も速い方だし、鳴子設置も間違えないから。

鳴子は紐を切らせるんじゃなく、踏板を踏ませて、継続的に鳴らせる道具だが、音が聞こえなくては意味が無い──


ここで、はっと気がついて、現場で確認した結果、竪穴を小川に面した崖の上の斜面に造るのでは、増水時に激しくなる流れの音の反響の所為で、竪穴住居内に居てはうるさくて耳が聾するのではないかという重大な懸念が生じた。

建設計画の大幅な修正が必要となった。


--


見直しの結果、竪穴住居は出口を崖側斜面に出さず、湿気も考えて凸部の天辺に浅く掘る程度にせざるを得なくなった。

もう少し島が大きければ、小川から離すことで、音の影響を小さく出来たが、この小丘は本当にかなり小さいので、そうは出来ない。

小さいと云っても、塹壕暮らしからすれば広大だ。

天辺だけで差し渡し8m程度はあるし、斜面部分も施設化可能領域だから。


--


安全策の続き。

鳴子の音が聞こえるように、鳴子は工夫したい。

例えば、踏板から紐を遠く引いて、本拠内部で鳴らす、とか。

それはさすがに紐が切れるリスクも上がるし無理かもしれないが、せめて音響を発する場所を近くにできないか、要検討。


テキサスゲートで、シカやイノシシなど有蹄類はシャットアウトできる。

できれば鳴子の踏板より遠くに設置したいが、作業的には危険……。


島天辺の奥側の山側へ続く坂のところだが、

「できれば堀切を造りたいけど、規模的にぼくたちじゃ無理なんで、堀と土塁が精々だ」

「堀切ってなンだ?」

「ほら、島と山って、間に狭隘部があるけど、なんとなく尾根みたいに繋がってるでしょ? それを断ち切るように、深く掘り削って、切り落としちゃうんだよ」

「ああ、それはいいな。なるほど無理だわ」

「うん、無理だ」

「だから、まあ、最低限の防御として、せめて1mくらいの深さの堀だけ掘って、その土を手前に積み上げて、高低差を出してさ、更にその上に柵でも立てれば、そうそうすぐには攻め寄せて来られない感じになるでしょ」

「それだって大変だなあ」

土塁の土盛を突き固める道具も必要だし、それ一つとっても二人がかりでも子供には大変な作業だけど、やらなければならない。


掘り削る作業中は、坂の下で掘る作業員の安全の為に、緊急脱出装置を考案。

木の上に固定点を設定、滑り具を滑車の代わりに設置して、エレベータと同じく錘の位置エネルギーを利用し、非常時に解放して落下させることで、作業員の着用するハーネスを上方へ急激に引き揚げる。


堀と土塁と柵で突進の勢いを殺げたとしても、熊なら登って来るから、反撃して追い払うか退治する必要がある。

それが夜の場合、登ろうとする熊を照らし出す必要がある。

篝火が要るが、それは普段から柵の上から堀の方へ差し出す形で籠を出しておいて、中に松ぼっくりを入れておいて、松明の火を移して燃えやすくしておく。


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拙作をお読み頂き、実に有難うございます。

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