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ワーカホリック浮浪児

作業小屋まで戻って来てから、小丘へ出向いて下見くらいするかと思ったが、初日はそのまま何となく皆だらけてしまい、お休みとなった。

マサもエイコも疲れていたし、ぼくらは新しい環境に馴染まねばならなかったので、それで良かったのだろう。

そうなるとぼくも、もしも山で一人の時に野獣と遭遇したらどうしようもないので、仮拠点に留まるしかなかった。


「マサとエイコは穴蔵か」

「そうみたいだね」


二人はまたトヨの言う『穴蔵』に潜り込み、疲れた体をコットで休めている。

ぼくは『作りたいものメモ』の樹皮のタンニン分が酸化して褐変してきて、早くも読みづらくなってきていたので、メモに使った樹皮のついてた丸太を伐り出して持ち帰って来ていたのへ、燃えさしの炭化した先端でちまちまと丸太に筆写していた。


--


皆の出した希望がいっぱいあって、どれから着手すべきか……あと、やっぱり丸太だと一目で見られないので、本当に単なる備忘以上ではない。

思考が整理できない丸太メモ。


「……あ~、どれから一体……って、あれ?」


いつの間にか、トモトヨの二人が居なくなっていた。

あの二人も寝たのかな?

ま、いいや。


ぼくはちょっとでも、何かやらないと落ち着かない。

何しろ課題が山積してるんだ。


こういうのは最初の上流工程のうちに少しでも整理して、処理しやすい箇所からさっさと片づけておかないと、後で手が付けられないほど積みあがって乱雑になって、机から床にハンコもまだ押していない書類が溢れ出して、狡い奴から真っ先に逃げ出して、残された責任感のあるシャインが有能なだけに最後まで耐えて徹夜で仕事し続けた挙句過労で入院して、一気に大量の仕事が怒涛の如く襲ってきて、皆潰れてしまうんだ。

それを分ってるぼくがやらないと皆死んぢゃうぅ~っ


……はっ!?


何だか、昔そんな経験をしたような、妙な感覚に襲われていたけど、気のせい、気のせい。

たまになにか変な感覚になることがある、うまく言えないけど。

多分、いつかそんな夢でも見たんだろう、夢ってのは不思議な幻をよく見せてくれる、面白いものだから。

まあいいや、大したことじゃない。


別のもう少し小さな丸太を、薪用に採って来てある木の樹皮を剥いで何本か作る。

一本を手にして、レーキ、掛矢、石斧……、と用途・使用場面が同じようなものだけ書き込む。

また別の丸太を拾い上げて、クッション、菰、マント、スカート……、となんとなく一つのカテゴリーにまとまりそうなものだけ書き込む。


こうして、乱雑にとにかくメモしただけの最初の丸太から、総ての項目を細い丸太のどれかには書き込み終えた。

そうしてから、本当にこれはここに一緒にしていていいのかな……と丸太に書き込んだのを一つ一つ吟味し、大体良いとみて、カテゴリーの名称を記入する。

これで大雑把に整理がついた。


--

【 まるたのめも 】



『土工道具』

レーキ

石斧

ナイフ

石鑿

木槌

掛矢

杭打ち用の穴開け杭 逆進用突起つき


『運搬道具』

いろいろな籠の類

行李 必要?

鉢、壺などの土器

もっこ

もっこを吊る索

滑車 作れる?


『安全確保 警報・フェンス・非常箱・防具・武器』

携行柵(灌木の枝を編み込む2m×1m)

携行柵の支柱としての杭(3本/枚、長さ1.6m)

鳴子セット(鳴子本体及び紐)

緊急避退ボックス

緊急脱出装置一式

防具

手甲脚絆

武器 戈


『被覆・被服』

マスク

雨具 笠、マントせめて蓑

防寒具 マントせめて蓑、せめてキンタロ腹掛けと手甲脚絆。腰巻スカート

拭うもの 手拭代わり 足拭きマット

クッション 円座

葭簀


『基本的構成材料』

薬草


『インフラ』

作業場所

燻し場

洗濯場・水浴場

水飲み場

濾過装置と清潔な湯冷まし壺


--


次に、大雑把に用途毎に分けたカテゴリーの中で、優先度を考えてみる。


とりあえず土工具は後回しだな、作業が始まる迄は出番が無いんだもの。

運搬はいつでも優先度高い、但し中には土工具でもあるもっこのように、後回しで良い物も含まれている。

まあ、もっこは運搬というよりもそもそも土工具カテゴリーだったかも……大雑把に分けたから、こんなこともあるけど、まあいい。

安全確保はこの場所に移って来た事で少し優先度が上がって来てるけど、森へ突っ込んでいかないうちはまだ運搬ほどじゃない。

最低限、杭だけはもう皆手にしているし。あと盾だけでも作りたいけど……でも、山猫対策の防具も作りたくはある。知らないうちに忍び寄られて、狙われたら致命的なので。

致命傷だけは防がないといけない。

被服は常に優先度高い。高いが、これまでも何とか耐えて来ては居るから……でも、地味に疲労蓄積とかでダメージが効いてきてしまってるのだから、やっぱり優先したい……。


まあ、運搬の中で特に必要とされるものは作ってしまおう。

そして被覆と紐に取り掛かる。


というか、誰でも作れるから、そういうのはあとで皆に任せてしまおう。

で、ぼくは今は、インフラに注力してみようか……特に濾過装置。

運搬で最も必要なのは湯冷まし壺だろうな。

水が飲めなければとてもキツくなる。

飲料水の確保。


寝所の確保が成った今、次に最優先で取り掛かるのは、飲料水の確保だ。

雨天などで川が増水して濁った時にも安全に飲める水だ。

幸い、炭は既にある。



拙作をお読み頂き、まことにありがとうございます

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