架橋完了させて本拠予定地へ乗り込む
その状態でも此岸側部材は安定しているが、彼岸側部材はただ単に両側に乗っかってるだけで、まだちょっと押せばすぐに川へ落ちてしまう状態だ。
そこで、トヨが気をつけて押し込み、噛み合わせ用の細丸太を此岸側部材の溝に噛ませる。
邪魔になった蔓をはずして、完全に噛ませる。
それから携えていた縄を両方の部材に回して、丸太一本ごとに縛り付ける。
一度結合試験を経ているので、加工した溝をすんなり通って行く。
力いっぱい締めても、どうしても弛みは残るので、七五三木で締め上げて、結び目ごと溝へ仕舞う。
蔓は彼岸側の先の端に結わえ直した。
これで無事に結合できた。
しかし、まだこの時点では、ちょっと蹴とばせば川へ落ちるので、此岸側部材の下端の最初の丸太に開けた穴に短い杭を打ち込んで固定する。
そして同じ丸太の他端の穴にも短い杭を打ち込むが、こちらは地面まで貫通はしない。
隣の地面に少し隙間を空けて短い杭を打ち込み、両方の杭に紐付きの縄の環を掛けておき、紐は杭の上に軽く結わえておく。
いざとなれば、紐を引いて環を外せば、他端の杭を軸に橋を回して落としてしまえる。
本拠予定地のある『島』側、彼岸側では、固定はしない。
一応ちゃんと斜面に乗っかってるから、それで良い。
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さて、次は手摺代わりの紐網の設置。
これが無いと、姿勢を崩したら小川に真っ逆さまに転落しそうで、危なっかしくて仕方ない。
紐網も、大して危険回避に役立つわけじゃないんだが、無いよりはマシということで、付けた。
結合試験でそれを見たエイコは、「え゛ぇ゛~……」と厭そうな表情で失望を露わにしていたが、諦めて貰うより他にしょうがない。
ぼくとマサが此岸、トヨが彼岸に、細い杭を打ち込んで立ててゆく。
それが終わると、物資集積所から紐網を取って来て、こちら側の杭と向こう側の杭に結び付ける。
それだけ。
だから、体重を掛けると撓んで、そのまま落ちかねない。
これは心の支えだ(笑)
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エイコを呼んで、空の壺を持っていて貰い、後回しにしていた見張り脱出用ターザンロープを根元からカット。
太い蔓の断面から一気に溢れ出す液が勿体ないので、壺に回収しておいて貰う。
ロープの調整の為に履き物を脱いで高木に登り、予定通りに支点を太い枝の途中に切り替えておいて、トヨに蔓を島へ持って行って貰い、具合を確かめて貰う。
トヨは蔓の端に適当な長さで太い結び目を作り、一度試しに薪をそれに結わえて、脱出テストをさせる。
蔓が大きく振れて、こちらへ戻って来て、枝などに邪魔されずに大きく振れてから、また小川を越えて戻って行って、またこちらへ来るからマサが止めた。
どうやら良い感じなので、マサにトヨの所まで持って行って貰う。
トヨは既に見張りを始めているので。
ぼくはロープの調整が終わったので、木から降りて来て、そこは整地しておらず石も残ってるので、草履を履いて高木から離れて狭い道へ出てから、そこでまた裸足になって草履を腰へ結わえる。
さ、次は事前に互いを繋いでおいた携行柵をさっさと展開するぞ。
トヨが警報を発さないので、まさか発するヒマもなく何かに食われてないだろうな……と思いつつ、物資集積所の一つへ、マサと携行柵を取りに行く。
橋は二分したところから先がどうしても少し余計に傾斜があるので、それを見越して予め少しだけギザギザに削ってはあるけど、やはり荷物があると裸足で無いと危険だ。
しかしまだ天辺は整地していないから、天辺で活動するには履き物を履かねばならず、いざと言う時に履き物を履いたまま橋を駆け下りて逃走するのは、ちょっと危ない。
そこまで考えが到らなかった。
早く島の天辺を整地してしまわなければ……すぐに脱げるように草履で作業した方が良い。
橋の重量限界はあまり高くないし、携行柵は予め互いを繋いであるとは言っても、全部で三つに分かれている。
先ず三枚一組にした最初の一つは中央に、二枚一組にした残りは左右に立てる。
最初にマサが渡り、次にぼくが渡って緩斜面を天辺に登り、草履を履いてから、また残りの柵を取りに戻ったマサが置いて行った最初の柵も拾うと、トヨを見て無事を確認し、
「トヨ、どうだい」
「問題ない」
「よし」
すぐに外側から視認済みの立木へ近寄り、そこが山側へ向けて下る坂の上端に位置するのを再確認後、立木の向こう側へ柵を拡げて立て並べ、両側に広げた柵が重みで坂の下へ向かって垂れさがろうとして邪魔なので一旦手元へ引き寄せてから、真ん中の柵に予め掛けておいた縄をすぐに立木にしっかり結わえる。
左の柵は結わえる立木が無いので放置し、右の柵をまた別の立木に結わえる。
左の柵の端を、別の二枚一組の柵の端と縄で結び付け、展開して、立木に縛り付ける。
右側も同様に処理。
左右両端がぶらぶらしているので、杭打ちの出番だ。
予め打ち合わせた段取り通り、既にマサが搬入してくれていた。
助かる。
拾い上げて、杭打ち穴あけ用大小セットの杭を木槌と掛矢で割と静かに打ち込み、引き抜く。
思いきりやったら折角作ったのが忽ち割れてしまう。
ただ、どうしても少しずつ傷む。
だから予備は当然幾つも作ってあるけれども、できるだけ消耗は避けたい。
なのに、また小さく割れてしまった。
仕方ない、そういうものなのだ。
丁寧に扱っても、杭を五本も打ち込めば、穴あけセットが一組ダメになる。
乱暴に扱えば、一本で一組消耗する。
それから、太目の杭をこれも静かに少しずつ深く打ち込む。
予め穴あけを済ませているので、抑えた力で静かに打っても、良い感じに入る。
杭を深く打ち込めたので、そこに柵の端を縛り付けて、簡易柵の展開を終えた。
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拙作をお読み頂き、実に有難うございます。