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痛みと休み

「あー、痛~……」

来る日も来る日もずっと灌木を伐り出し続け、切り裂き続け、編み込み続けて、指先が痛む。

どうもこの二、三日、痛むのが早まってる感じだ。

こうなったら、今日一日はただもうのんびり休んだ方がいいか……手先は使えないから、何か作るなんて無理だ。


「可哀そう、これ付けてあげる」

エイコに見せると、幾つかの薬草を千切って、指先で捏ね潰して、ぼくの指を持って塗り塗りしてくれる。

スーっとミントがすぐに効いてくる。

他の薬草もきっと後から効果を及ぼすのだろう。

「ありがとう」

「傷とかない?」

と訊いてくれるので、

「傷はないよ」

「マサくんはこないだささくれが刺さっちゃってたからね~、気をつけてね」

「うん、ありがと。トヨみたいになったら危ないからね」

「うん、ね~!」


トヨはこの前、転んでしまった先に岩があって、膝にぱっくりc字型に傷口が開くような、痛々しい怪我をした。

幸い、洗って清潔にしてから、沸かした湯でエイコが傷薬を作って厚く塗り付けたお蔭で、既に傷は塞がって、膿んだり腫れたり熱を持ったりするような異常も見られない。

エイコ様様である。

それでも赤い傷痕は痛々しく、トヨのそれを見る度に、自分もよほど気をつけないといけないと思った。

トヨはその怪我の所為で、一週間ばかり何もせずに穴蔵で休んでるしかなかった。


ぼくたちは無理せず作業を進めるべく、気をつけてマイペースでやってたが、うっかり刺したり、ちょっと働きすぎてどこかに負担がかかって作業継続に支障を来すような痛みを覚えたり、コケて怪我をしてしまったり、少なくとも男の子は誰もがそういう頃合だった。

ここのところ雨天でも作業を続けるようになったので、あまり休みらしい休みをとらずに来ていた。

そろそろ本格的に休みを入れるべきなのかな……。


とりあえず、指先を使う仕事はできないけれど、他の仕事はできると思ったので、あちこちに分散してある荷物置き場を、ぶらぶらと見回りに出かけた。

物資に異常がないか、配置に問題点はないか、もっと良くなる工夫はないか、考えつつ見て回った。


--


その日の終わりにトモコのハーブティーをトヨ新作の歪んだ湯呑に貰って味わってる時に、切り出してみた。


「最近、雨でもずっと働いてた所為か、休みを取りたくなったよ」

「うん、いンじゃね?」

「そうね、ちょっと休みましょうか」

「うん、みんなで?」

「薬をつけてくれてるから、ぼくはまだまだいけるんだけどね」

「いやいや、マサも働きすぎなンだよ、休めよ少し」

「おう、マサ、疲れて怪我してからじゃ遅いんだぜ」

「あたしたちは平気だから、休みの日にはできるだけあたしたちでやるから、ね」

「魚もあたしが捕るよ!」

「お~、エイコが捕るのは久しぶりじゃね?」

「ぼくはエコの獲ってるのは見た事無いけど、獲れんの?」

「うん、罠でね」


それで、明日は急遽一日休みになった。


--


「で、雨なんだ」

「お休みだけど、まあ、たしかにのんびりしてるしかないなー、これは」

その朝、ぼくとマサは夜明け前から本降りの外の様子を、塹壕小屋の出入口に設けた廂の下で眺めながら駄弁る。

壕の中へ振り返ると、

「エイコー、こんな雨だけど、罠って出来んの?」

「うーん、危ないね~、川に入るだけでも」


一日ずっと横になって眠り、たまに茶を貰う。

お腹はどうしようもなく空くが、眠りに陥ちてしまえば分からない。

そんなお休み。


それでいいんだけど、でもまあ、やっぱりお腹空いてるのか、マサが


「小川じゃなくて、谷川に行ってみる?」

「行ってみようか」

とか言いだしたので、

「いや、雨で谷川は無いでしょ」

「それじゃ、ジンメ川上流?」

「『もう季節だから獲るな』って言われたっしょ」

「くそー」

「まあ、ちょっと散歩でも行ってこようか」

「蛇か蛙か蜥蜴か何かでも居りゃいいんだけどなあ」

「よし、行こ、行こ」


そうして、閉じこもってるのが厭になると外へ出て雨で身体を洗い流して、成果も無く戻って来て炉の熱で乾かして、結局腹ペコでゆっくりするだけのお休みだった。


そんなのではお休みという感じがしない。

ということで、翌日も休みにして、曇りのち晴れたので一応食べて、小川周りや本拠予定地周辺でのんびり過ごした。

そうして少しのんびりした気分を味わって、身体を休め、気持ちを落ち着けて、また次の日から再び作業に取り掛かった。

拙作をお読み頂き、まことに有難うございます。

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