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第2話目 運命の日②


 

「え?」


「この花だ」


 驚く私の目前に差し出されたのは、小箱。

 正方形のそれを手に持つディオクス様は、ゆっくりと箱の蓋を開けた。

 破砕(はさい)している白い花弁。

 中に入っていたのは、あの夜に見たものだった。


「やはりな」


 溜息を含んだ低い声色は、冷気を感じるものだった。

 ゾクリ。

 悪寒に見舞われた私が、ディオクス様のほうを一瞥(いちべつ)すると、彼は眉を(ひそ)めていた。

 花弁を見つめる私の表情から、何かを読み取ったらしい。

 こちらをじっと見つめていたディオクス様は、花弁に視線を向けながら口を開いた。



「この花は、私が育成を依頼しその過程も見守っていたものだ。信頼のおける庭師が、花をダメにしてしまったと必死に謝ってくるものだから、おかしいと思って調査をした。その結果、とある令嬢がその花をダメにしたことがわかり、割り出した先で君の名があがったのだ」


「はい?」


「……ロサ・エンヴァイロ穣が、花をダメにしたことがわかった、と言ったのだが」


「~っ?!証拠は、おありですの?お言葉ですが、証拠もないのに犯人扱いするのは不躾かと存じます」

 

 無愛想な語り口調、名指しでの犯人扱い。

 加えて、途中から向けられた冷たい眼差し。

 それらを受けた私の口から、反撃の言葉が出た。

 

 私の最敬礼を無視したかと思ったら、証拠も無いのに犯人扱いされ、冷淡な態度を向け続けられる。

 麗しき令嬢に向ける態度として、有り得な過ぎでしょう?!

 非のない私に対して、失礼な言動の数々、いくら王太子とは言え許せない。



「離宮は我が大事にしている場所だ。調べれば、わかるようになっている」


 苛立っていた私に返ってきたのは、金色の鋭い瞳だった。

 浅はかな者だ。

 そう捉えられる視線に、私は目を見張った。

 

 責められるようなことは、何もしていない。

 花を踏みつけた事は事実だが、私はきちんと、いや十分過ぎる対処をしている。

 そんな私に対して、冷たい視線や見下すような態度をとるだなんて。

 おかしいのは、私ではなく目の前の人物だ。

 しかし。

 私に対する悪印象、それがつくのは宜しくない。

 王太子妃に選出され無くなるような事があれば、一大事。

 御機嫌伺いはしておかなければ。

 


「……確かに、私はあの花を踏んでしまいました。その点は、お詫び申し上げます。しかし、私は被害者なのです。花が通り道に置いてあったんですもの。暗い道でしたし、花が見えなかったために、踏んでしまっただけなのです」


「……そうか」


 私は悪くない。

 それに、調べたからといったって、監視されていたわけじゃなし。あの時の出来事を、事細かにわかっているわけはない。

 悪くないのに謝ってあげたのだから、十分でしょう。

 そう思って発言してみたが、


「君は、よく見えなかったという花を、痛み壊れるまで踏むことができるのだな」


 ディオクス様の視線は、鋭さを増してしまった。

 ふっと笑った表情は威圧感を放っていて、これ以上無駄口を叩くことを許させない何かがあった。

 その圧を受けた私は、言葉を失う。



「その様子では、己の過ちに気づいていないようだ」


 呆れた表情を浮かべるディオクス様は、ソファ後ろに待機していた側近に何かを出すよう命じた。

 そっと、目前にあるソファテーブル上に置かれたのは、庭師に投げつけた金貨袋だ。

 

「あの日、裏門側の庭道に立ち入っていたのは、我が関係者では庭師と見張りの者以外いない。ダメになった花の花弁には、グリグリと靴のヒールのようなもので踏みつけられた跡が見て取れている。つまり、これは、花を踏みつけた者の物だと言えよう」

 

「っ!」


 指先で袋の右下をトントンと叩かれ、私は思わず息を呑む。

 小袋の右下に見える、我がエンヴァイロ家の紋章。

 今の今まで忘れていたが、我が家は金貨を入れるものには紋章を小さく刺繍しておく風習があったのだ。

 

「君のもので間違えないな?」


絶対的な証拠が目前にある手前、言い逃れはできない。

 

「……はい」と小さく答えれば、「権力や金で物を言わせる、か」と笑い声混じりの言葉が返ってきた。

 軽蔑され始めている。

 それが分かる雰囲気に、私の中で焦燥感が湧き始める。 



「お、お待ちください。私は、花を踏……ダメにしてしまった分を金貨で賄ったのです。庭師に対するお詫びの意味をこめて、そのお金を渡したのです。けして、お金にものを言わせたわけではございませんっ」


「愚かだな。全て調べがついているというのに」


 ふぅと溜息を吐き、目を閉じてしまったディオクス様。

 会話をするのは終了だと取れる態度に、私の焦燥感は増していく。

 このままではマズイ。

 そう思った私は思わず、身を乗り出した。


「~失礼ながら申し上げます。国王様や王妃様はなにか起きた際、お金を支払い対処なされると父から聞いております。私は花を育てる技術は持ち合わせておりませんし、財力を持つ高貴なものがお金で解決できるよう振る舞うのは、必要な事ではありませんか?」


「己をこの国の最上位者だと思ってやまない父上、社交が好きでたまらない義母上ならば、その考えに同意しただろうな。しかし、私は違う」


 ディオクス様はそう言うと、座っていたソファからスクッと立ち上がった。

ソファに座った私は、見下される形になる。

 

「身分や財力は誇示するためのものでも、己に都合よく使うものではないと思っている。己の過ちを拭うために誰かや何かを無下に扱う愚か者には、ひどく虫唾が走る」


 激しい嫌悪の目。

 それを向けられ、私は身動きが取れなくなった。

 突き刺さる視線、全身から放たれる威圧感。

 それらは、受ける度にどんどん巨大化し、自分に降りかかってくるかのような恐怖感があり、なぜか自分の体は小さく縮んでいくように思えた。

 まるで、蛇に見込まれた蛙。

 窮地とも言える状況に、私は息をするのが精一杯になる。


「先に言っておくが、私は君のような令嬢は選ばない」


 嫌悪感顕に、はっきりと述べられた言葉。

 グサリと急所を突き刺すそれを耳にした私の目が、大きく開かれていく。


「呼び出しを良きものと捉えてやまない、思慮の浅さ。己の野心のみで動き、人を欺こうとする邪心。未来の王の伴侶として相応しいわけがない。なにより」


 ディオクス様の金色の瞳が、ギラリと光る。

 

「地獄でしかない。君のような高慢な女性と、生涯を共にしなければならない未来など」


 閃光を目にしたかのような衝撃を受けた私は、自ずと視線が下がり、顔を上げることができなくなる。

 こちらの思惑は、全て見透かされている。

 私の内情を見通すだけの洞察力、彼はそれを持っているのだと私は理解した。

 背筋がスーッと凍っていく。

 これ以上、自分の内側を明かされたくない。


 

「心清き者からの恵みを受けて帰るがよい」


 案内の者が来るまでここで待っていろ。

 そう言ったディオクス様は、身動き出来ずにいる私をそのままに、側近らと共に部屋を出ていった。

 

 





 お読み下さり、ありがとうございます✩.*˚


 間が空いてしまい、すみません……。


 情景描写、主人公の心理(気持ちの変化)を、細かく表現した形にしたい。

 そう思う反面、まずは話を進める形・構想を形にすることを優先すべきかな、と悩んでいたりしたら、形にするまでに時間がかかってしまいました:( ´ `;)



 ブクマ、いいね!くださる方々、ありがとうございます( ; ; )感涙✨

(執筆の励みになっております)



 現段階では、本作はサクサク話を進めよう(細かな描写の形より、話進めるを優先)と思っております。

 が、心理描写が必要と思う場、描写が細かくなるシーンもあるやもしれません(>_<;)


 

 ご興味あります方、引き続きよろしくお願い致します(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)


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