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文官姫とオネエ騎士の出会い

過去編です。

 ニコルとカミーユの出会いは四年前までさかのぼる。当時12歳だったニコルには、専属の護衛がいなかった。そろそろ専属の護衛が必要だろうと考えたセシルによって連れてこられたのがカミーユだった。


「お初にお目にかかります。私はカミーユ・レナードと申します」

「これからは、カミーユがお前の護衛を務めてくれる。仲良くしてほしい」

「うん、分かった。これからよろしくお願いします」


 ニコルはそう答えたものの、緊張しているのかその表情はこわばっている。その様子を見て、セシルは笑った。


「まあそうなるよね。カミーユ、あんまりへりくだっていると委縮されるから、ニコルには素で接したほうがいいよと言ったじゃないか」

「あらそう? だったら、この口調のほうがいいかしら?」

「え?」


 ニコルがぽかんと固まっていると、セシルはくすくす笑った。


「カミーユはこういうやつなんだ。ちょっと変わっているけれど、腕っぷしはぼくが保証するよ」

「殿下は、この口調が気に障るのかしら」

「い、いえ!! そういうわけじゃありません。少し驚いただけで……」

「そう。ならこの口調でお話しするわね」

「は、はい。よろしくお願いします」


 ニコルはぺこりと頭を下げる。その日から、カミーユは彼女の専属の護衛となった。



 カミーユは面倒見がよく、とても話し上手で、人見知りのきらいがあったニコルでも打ち解けるのにそう時間はかからなかった。いつの間にか、二人は互いのことを名前で呼び合っていた。

 とある日、ニコルは人のあまり来ない部屋のテラスから外を眺めていた。その場所は使われていない空き部屋で、人に囲まれるのをあまり好まない彼女にとって心安らぐ場所だった。

 もう少しのんびりしたら戻ろうと、彼女は手すりに体重をかける。その時、手すりからミシミシと音がして、そのままボキリと折れた。その拍子に、彼女はテラスから投げ出されてしまう。


「えっ、きゃあああああああ!!!!」


 このままじゃ大怪我をしてしまうと、恐怖で思わず目をぎゅっと閉じる。ところが、いつまでたっても衝撃はやってこない。恐る恐る目を開けると、驚いたカミーユの顔があった。どうやら彼が抱き留めてくれたようだった。


「ちょっと、いきなり落ちて来ないでよ!! こっちは心臓が止まるかと思ったわ。ケガしてないわね?」

「ええと、大丈夫。いきなり手すりが折れて……」

「ああ、あの手すりね。あとで宮官長にでも言っておかないと。まあ、ケガしていないならよかったわ」


 彼はそう言って彼女を下ろすと、近くにいた騎士仲間に声をかけた。そのまま二三言話すと、彼女の手を取る。


「さあ、部屋へ戻りましょ」

「はい」


 カミーユに手を引かれながら歩くニコルの胸は、ものすごく速く鼓動を打っていた。彼女の顔が真っ赤に染まる。この時ニコルはカミーユに〝落ちて〟しまった。



 恋をしても、ニコルとカミーユの関係は変わらなかった。ニコルには思いを伝える勇気はなく、さらに自分はいずれ国益のために別のだれかと結婚すると分かっていたためだ。そんなある日、彼女は出かける予定ができたのでカミーユを探していた。

 城の中庭で、カミーユは誰かと話していた。彼の表情は遠くから見ても分かるほど楽しそうで、声をかけるのは憚られた。

 彼の視線の先には、カイルがいた。彼が何か言うと、カミーユはとろけるような笑みを浮かべる。瞬間、彼女の脳内に侍女たちのうわさ話がよぎった。麗しの騎士カミーユは、男色であると。

 ニコルは男色の意味が分からなかったので、噂を耳にした後に図書館で調べた。意味を知って、彼女は驚愕してしまう。でもしょせん噂だと、彼女は気にしないことにしていた。

 ところが、今目の前に広がる光景はどうだ。カミーユの表情が、好きだと物語っている。その視線はカイルに向けられていた。ニコルは、噂は本当のことであり、カミーユはカイルが好きだと判断した。彼女はその場にいられなくなり、こぼれる涙を拭いながら小走りで中庭を後にする。

 部屋に戻った彼女は、初めての失恋に胸が締め付けられ、声を殺してただひたすら泣いた。


読んでくださりありがとうございました。

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