ノルンとふしぎなお星さま
ノルンはキラキラしたものが大すきな女の子。
ガラスでできた小さなビンをながめたり。
雨のしずくをあつめようとしたり。
キラキラした小川のみなもを、あみですくおうとしたり。
とくに、ノルンはキラキラしたお星さまを見あげるのがすきで、ひとつゆめがありました。
「いつかお星さまをちかくで見てみたいなぁ」
ノルンの住む町では、年にいちど、『お星さままつり』がありました。
おまつりの日は、いつもよりももっとお星さまがきれいに見えます。
ノルンが、たのしみにしている日のひとつです。
それが、ついにあしたとなりました。
ノルンは、うれしくてなかなかねむれませんでした。
「ノルン、まだおきていたの?」
明かりもつけず、まどべで夜空をながめていたノルンに、マイヤーおばさんは言いました。
「あしたがまちどおしいんですもの、マイヤーおばさん」
おばさんは、ノルンをやさしくだきしめました。
「さあ、あしたをたのしむために、きょうはねむらなくっちゃ」
「そうね!」
ノルンがうなずいたときです。
夜空から、お星さまがひとつ。
スゥっと町はずれの森へ落ちていくのが見えました。
「あっ!」
ノルンがおどろくと、マイヤーおばさんもビックリしていました。
「お星さままつりの前の日に、お星さまがながれるなんて、めずらしいわね」
ノルンはすぐにでもお星さまのおちたところを見に行きたくなりました。
でも、おばさんはそんなノルンにきづいていました。
「ノルン、きょうはダメ」
「おばさんには、なんでも分かっちゃうのね」
ノルンがそう言うと、おばさんはほほえみました。
ベッドにもぐりこむノルンを見て、おばさんは言います。
「おやすみなさい、ノルン」
「おやすみなさい、マイヤーおばさん」
おばさんが明かりをけすと、ノルンはすぐにねむたくなりました。
お星さまが、キラキラ、キラキラ。
ノルンの住む町を、朝までやさしくてらしました。
朝ごはんをいそいで食べるノルンに、マイヤーおばさんはしんぱいそうに言いました。
「そんなにあわてて食べたら、おなかをこわしてしまうよ」
でも、こうしてはいられません。
ノルンは、きのうおっこちたお星さまが、きになってしかたがないのです。
「マイヤーおばさん、いってきます!」
「いってらっしゃい、ノルン。きをつけてね」
おきにいりのきいろのくつをはいて、ノルンはさっそく町はずれの森へとむかいました。
そのとちゅうで、ともだちのジャックに会いました。
「ノルン、おはよう!」
「ジャック、おはよう!」
あいさつをしながらはしっていくノルンを、ジャックはおいかけます。
「そんなにいそいで、どこへ行くんだよ?」
「お星さまがおっこちたところよ」
「えっ⁉」
ジャックは、町の子どもたちの中でいちばんかけっこがとくいな男の子です。
ノルンにあっというまにおいつきます。
「ぼくも行くよ!」
「うん! いっしょに行こう!」
ふたりは、町はずれへと向かいました。
そこは、朝でもすこしくらいのです。
「ほんとうにここ?」
「きのうの夜、見たもの」
「ゆめだったじゃない?」
「そんなことないわ」
ノルンのうしろを、ジャックがビクビクしながらあるきます。
カラスさんがカァカァないています。
ふたりがあるくたび、カサカサとした草やえだの音がしました。
「ねえ、ノルン!」
ノルンとジャックがキョロキョロと森の中を見ていたときです。
ジャックが、大きな声でノルンをよびました。
「あそこ、キラキラひかってる!」
ジャックがゆびをさしたほうこうは、ひかったり、くらくなったり。
「あれだわ!」
ノルンとジャックはかおを見あわせて、はしりました。
大きな草をかきわけて、ふたりはそこへたどりつきました。
「わぁ!」
ふたりが見つけたのは、お星さま――ではなく、ひかる大きなトナカイでした。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「にげないね」
トナカイは、大きな目でノルンとジャックを見つめて、そこからうごきません。
「ケガ……しているの?」
トナカイの右足が赤くなっています。
「血が出てるぞ!」
「手あてをしなくっちゃ!」
「どうやるんだ?」
「マイヤーおばさんのお店に、おくすりとほうたいがあるわ!」
そう言ったノルンに、トナカイはほおをよせてきました。
ひとりになるのがこわいのかしら?
ノルンがトナカイのほおをなでると、トナカイはもっとノルンにほおをよせます。
「ひとりは、いやだよね」
「なら、ぼくがもらってくるよ! ノルンは、トナカイのそばにいてあげて!」
ジャックはそう言って、はしりだしました。
お日さまが、町をいちばんてらすとき。
お昼ごはんのじかんになってもかえってこないノルンをしんぱいして、マイヤーおばさんはお店の前でまっていました。
「ノルンったら、森でまいごになっているんじゃないだろうね……?」
そんなマイヤーおばさんの目に、こちらへはしってくるジャックが見えました。
「マイヤーさん!」
「あら? ジャック、そんなにあわててどうしたの?」
「おくすりとほうたいをちょうだい!」
ジャックのことばに、おばさんはおどろきます。
「まあ! だれかケガでもしたの?」
「ノルンが……!」
「ノルンが⁉」
いきをきらしたジャックのことばに、マイヤーおばさんはあおざめました。
「ちっ、ちがうよ! ケガをしたのはノルンじゃなくて、ノルンが見つけたトナカイさ!」
「トナカイ? この町に?」
くびをかしげるマイヤーおばさんでしたが、ジャックのあわてようにウソではないとおもいました。
「わたしも行きましょう」
「えっ? でも、お店は?」
ノルンとマイヤーおばさんが住んでいるおうちは、町でただひとつのお店。
おばさんがいなくなれば、町のみんながこまります。
でも、おばさんはくびをよこにふりました。
「だいじょうぶ。お星さままつりのかいものは、みなさん、お昼までにすませているわ。それに、ケガをしているトナカイさんをほうってはおけないよ」
おばさんはいそいでおくすりとほうたいをもって、店のドアに『しばらくるすにします』とかんばんをかけました。
「ジャック、あんないしてちょうだい」
「うん!」
マイヤーおばさんがいてくれたら、こころづよい。
ジャックは大きくうなずき、また来た道をはしりだしました。
ジャックは、町の子どもたちの中で、いちばんかけっこがとくいな男の子。
「こんなにはしるのはいつぶりかしら?」
「おばさん! はやく! はやく!」
「ええ! わかっているわ!」
ジャックのせなかを見うしなわないように、マイヤーおばさんははしりました。
ノルンは、トナカイのよこでずっと声をかけていました。
「もうちょっとでおくすりがくるからね。がんばってね」
ノルンはそう言いながら、ジャックがはしっていたほうこうを、なんども見ていました。
こころぼそさが、だんだんとわいてきます。
トナカイのひかりで、ときどき明るくはなりますが、森の中はやっぱりすこしくらいのです。
風のせいで、草や木がガサガサと音と立てます。
おばけが出てきたらどうしよう……
ノルンが、キョロキョロしていると、トナカイがお空を見あげました。
「トナカイさん、どうし……きゃっ⁉」
すると、大きなひかりが、森の木の上をすごいはやさでとおりすぎて行きました。
それは、まるでお日さまのようでした。
「お日さまも、おっこちちゃったの⁉」
ついにこわくなってしってトナカイにぎゅっとよりそうノルンに、ジャックと、まさかのマイヤーおばさんの声がきこえてきました。
「ノルン!」
「ノルン! どこなの⁉」
「ジャック! マイヤーおばさん! ここよ!」
ノルンがこたえると、トナカイがちからをふりしぼり、ひかりました。
「あっ! おばさん、あそこだよ!」
「ノルン!」
ジャックとマイヤーおばさんが、草をわけてノルンのもとへとかけよりました。
トナカイを見たおばさんは、目をまるくしました。
「りっぱなトナカイさんだこと!」
マイヤーおばさんは、トナカイのキズを手ぎわよく手あてしました。
「ノルン、どうしたんだ?」
おばさんが手あてをしているあいだ、まわりを見まわしているノルンに、ジャックはふしぎそうなかおをしました。
「さっきのひかり、なんだったのかしら?」
「さっきのひかり?」
「えっ? さっき、大きなひかりが、森の上をとおって行ったじゃない?」
こんどは、ノルンがふしぎそうにジャックにききます。
でも、ジャックはくびをよこにふるだけでした。
あれは……なんだったの?
ノルンとジャックがおはなししているあいだに、マイヤーおばさんの手あてが終わりました。
「はい、これでだいじょうぶよ」
おばさんがほほえむと、トナカイはうれしそうに一回はねました。
「よかったね!」
ノルンがわらうと、トナカイはまたうれしそうにほおをよせます。
「そのトナカイ、ノルンがすきなんだな」
ジャックも、たのしそうにわらいました。
「トナカイさんに、お星さままつりにも、さんかしてもらいましょう」
マイヤーおばさんも、うれしそうです。
ノルンは、手をたたいてよろこびました。
「うん! トナカイさん! ぜひ!」
トナカイは、またまた大きなひかりでかがやきました。
お星さままつりの夜。
ノルンは、ジャックとトナカイといっしょに、たくさんのお星さまを見あげていました。
マイヤーおばさんがつくってくれたわたあめをもって。
ふたりは、ワクワクしながらまっていました。
「そろそろだね」
「うん」
お星さままつりのときは、かならずおこることがあるのです。
それは――
「きた!」
「あっ! ノルン、あっちもながれたよ!」
お星さまが、つぎからつぎへと、夜空をキラキラとながれていきます。
すると、大きなお星さまひとつ。
こちらにむかってながれてくるではありませんか。
こんどは、ノルンだけでなく、ジャックにも、まちのみんなにも見えているようです。
「えっ⁉ こっちにくるよ⁉」
「どっ、どうしよう⁉」
「にっ、にげろー!」
みんながあわてました。
でも、トナカイだけは、うれしそうに体をかがやかせました。
すると、ひくく、おちついた男の人の声が、町にひびいたのです。
「やっとみつけたよ、トナカイ」
大きなひかりは、ゆっくりとおじいさんへとかわりました。
白いおひげをたくわえたおじいさんは、赤いおようふくをきて、赤いぼうしをかぶっています。
「わしのしんゆうよ。むかえに来るのがおそくなってすまない」
おじいさんは、トナカイに言いました。
それから、ノルンにむきなおりました。
「おじょうさん、キミが、しんゆうをたすけてくれたのかい?」
「えっと……たすけたのは、ジャックやマイヤーおばさんが……」
「見つけたのはノルンだよ!」
ジャックが言いました。
おじいさんは、お日さまのようなえがおで、うなずきました。
「そうか、ありがとう。ノルン、ジャック、マイヤーさん」
おどろく町の人たちにも、おじぎをしたおじさんは、また言います。
「わしは、ニコラス。みんさん、おどろかせてしまい、もうしわけない。まだきせつははやいが、このあたりをすこしさんぽしていたら、わしのふちゅういでトナカイが足をケガしてしまってね。この町の森へおちてしまったのだよ」
トナカイが、ニコラスおじいさんにむかってあるきました。
「ほお、なるほど。うん、うん」
ニコラスおじいさんは、トナカイが言っていることばが分かるようです。
ノルンのほうを見ると、なにかを手わたしました。
「これは、わしとトナカイからのおれいだよ」
ニコラスおじいさんは言うと、トナカイのせなかをやさしくなでました。
「さあ、むりせずに行こう。ノルン、ジャック、マイヤーさん、みなさん。またどこかで」
ニコラスおじいさんがれいをすると、トナカイもノルンのほおにそっとほおをよせ、おわかれを言ってくれました。
またひかりがあたりをてらして、みんなが目をあけたときには、トナカイもおじいさんもいなくなっていました。
みんながあたりをキョロキョロとしていると、ジャックがノルンにききました。
「ニコラスさんからなにをもらったんだ?」
ノルンが、手のひらをひらくと、そこには小石がありました。
それは、とてもキラキラひかっています。
「わぁ! お星さまみたい!」
ノルンは、うれしくなって夜空にそれをかざしました。
「ちかくでお星さまを見るゆめがかなったわ。ありがとう! ニコラスおじいさん!」
ノルンの小さなお星さまといっしょに、夜空のお星さまもいっぱいながれていきます。
大きなながれ星が、ノルンのゆめをかなえてくれたようですね。
~おわり~
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