おトイレと世界の産声
「殿下どうかお助け下さい!ま、魔族達がわたし達を食べようと…」
「腕を掴まれ部屋に引き摺り込もうと…」
っと侍女達が部屋に駆け込んできた。
侍女達が慌てるのは仕方がない、魔族を御す事が出来るのは俺達だけなのだから。
まぁ今回は、傷一つ負ってはいない様だから軽く注意するだけで良いだろう。
っと思っていたら。
「リマ」
「ジュリ」
「シエラ」
魔族が俺達に近づいて、自分を指差して口にした。
名前だろうか?
俺達は顔をみ合わせ、侍女達は怯える。
魔族が自分から名前告げる。
それも俺達より先にだ!っと言う事は俺達を上位者と認め服従の意を示したと考えていいのではないだろうか。
これが名前で無かったら…もし名前と言うのが勘違いで、俺達が先に名前を告げてしまったら、俺達が服従したと言う事になる。
魔族は3回繰り返した。
不安を感じつつも
「リマ、ジュリ、シエラ」
とそれぞれを指差して言うと、首を縦に振り私を指差す。
名前で合っていた様だ、あとは俺が名を告げれば主従関係が成立する。
「俺はケモネスキー王国国王ティックボーンエンセファリティス・ウルス・ケモネスキー王妃メリテンシス・ウルス・ケモネスキーが第一子レイビーズ・ウルス・ケモネスキーである」
発音は悪いが魔族達は口々に国の名を呟いっている、魔族国でも我が国の名は知れ渡っている様だ。
俺の名前を聞いても服従の姿勢を取らないのは気に障るが、まぁ蛮族ゆえ礼儀に疎いのだ仕方ない今回は許してやろう。
リマが仲間の一人を指差した、主人となる者全員の名前を知っておきたいのだろうな。
そして、俺達が自己紹介を終えた後、魔族は侍女達を指さした。
「この者達は食糧では無い!お前達は蛮族ゆえ此方の高度な生活には不慣れだろう、そこで慈悲深い俺はこの者達にお前達の身の回りの世話を命じたのだ」
「「「ありがとうございます」」」
「念の為だ名を教えてやれ」
「はい」
「イ、イヘナと申します」
「ワンニャンと申します」
「ペロマールと申します」
「コレで喰われる心配は無くなった!安心して世話に励め」
「はい!殿下ありがとうございました」
っと侍女達が安心した頃、シエラが足を擦り合わせながらリマに何かを言っている。
アレは⁉︎まさかアレだろうか?
シエラの話を聞いたリマは、僅かな沈黙の後、侍女達を残し俺達を部屋から追い出した。
「なんと無礼な!!王子や私達の身分を知りながらもあの態度とは!」
「落ち着け!アレは仕方がないのだ…」
「しかし!服従の意を示して置いて、主にあの態度は許せませんぞ!」
「では、貴様に問う奴隷を従える者と魔族を従える者の違いはなんだ?」
「違い…ですか…」
「奴隷とはなんだ?如何なる命令も、たとえ何をされようが主人に絶対服従、それが奴隷だ!口減し、借金、戦争、犯罪、生まれ如何なる奴隷でも奴隷は奴隷だそこに恐れは無い、それは魔族であっても同じだ。しかし、奴隷としてでは無く、恐怖の象徴である魔族を従えた者は、その恐怖よりも大きい賞賛が得られると言う事だ」
「牙を抜いた獣を飼うのでは無く、有りの侭の猛獣を飼い慣らすっと?しかし、それでも礼儀は…」
「そしてもう一つ!あの態度を許す理由がある」
「そ、の理由とは…」
「部屋から出る前の…シエラの行動を覚えているか?」
「えぇっと…確か、この様に膝を擦り合わせて⁉︎ってまさか!おショ…
「その通り!アレは間違い無い」
そうだ間違い無い身体に触れ(チチを揉み)、服従させる魔法(土下座でゴメンニャサイ)そして俺の身分と名を明かし、さらに上位者として威厳に満ちた態度と寛容さを目の当たりにした…その結果、俺に惚れ発情したのだ
「では、伝説にあった、魔族の国にはスライムがいないと言うのは」
「事実だろう。あの話を知っているとは、オマエも中々だな」
「はい、魔族の話しながら興味深い点が多いので何度も読み返しております。ほんとに素晴らしいですよね」
「そんなに素晴らしいのですか?」
「あぁとても素晴らしい」
「オレも読んでみたいです。本の名前はなんと言うのですか?」
「「オーダーの魔王(間男)伝説」」
「ん?王子今なんと?」
「オーダーの間男伝説だ」
「それは春本ですよね?エロ王子」
「そうだが?魔族の国にはスライムがおらん、だから発情しても独りで欲望を処理出来ず、手当たり次第に街の娘達を…」
「「おぉ!!」」
「その話しは空想です。私が言っているのは“オーダーの魔王伝説”です、魔族の国ではスライムの代わりにカワーヤでおションをするそうです。そのカワーヤの土からはモンスターをも粉微塵にするカヤークが出来きると言う古文書にある伝説です」
「家の未来(子種)が潰れても、国の未来を築くとは流石は公爵家の長男ですな…それに引き換え、この残念王子は」
「そんなのは放置して部屋に帰りましょう。ココにいると王子の病気が感染するかも知れません」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(王子、ワタクシは間男伝説好きですよ (๑•̀ㅂ•́)و✧ )
(おぉセヴァスタン!心の同志よ〜 (*゜▽゜*) )
心の同志を得た王子とセヴァスタンは友情を確かめ合う様に、身体を寄せて手を取り合った。
その仲睦まじい姿を扉の隙間から暖かく見守る九つの目。
この光景が、後に国を揺るがす闇の秘密組織誕生の切っ掛けとなった。
が、本人達は生涯知る頃は無かった。
ケモナー衆道教会、聖典第一章第一節“聖者の降臨と世界の産声”より
次のお話は明日投稿の予定です。