6.第1話「剣勇 と 第一小隊」(6/7)
一度装置を地面から出させて、澪のメタルブレイザーを鉄の箱に戻した。
赤い鎧が細かく外され、中から一人の女子高生が現れた。
澪が鉄の箱を戻すと、今度は愛海が自分のを取り出した。
箱が出てきたのを合図に、愛海は自分の長く美しい黒髪を纏めて髪留めで留める。
そして愛海は箱の中に入り、青い鎧を身に纏って出てきた。
箱を地面に戻し、既に壁の機械近くに待機していた唯織が装置を引っ込めた。
剣勇は最初から刀を抜いて、構えていた。
愛海も背負っていた大きめの剣を抜いて、構えた。
「行きます。」
愛海はそう一言発して、剣勇に素早く近付いた。
そして距離を詰めたと同時に斬りかかった。
既に構えていた剣勇は刀を横にして容易に受け止めた。
愛海もそれは想定していたようで、あえて剣を弾かせて今度は横に斬った。
しかし剣勇は素早く剣を縦にして受け止めた。
それから愛海が攻めては剣勇が受け止めるという繰り返しで戦闘は続いた。
受け止め続けていた剣勇は一歩一歩後ろへ押されていた。
しばらくして、剣勇も反撃し出した。
素早く愛海に対して斬りかかる。
しかし愛海も容易に剣で受け止めて防御する。
ただ、剣勇は斬るだけでなく動きも入れており、斬った後に横に移動したり、回転しながら背後に回ろうとしたりしていた。
そんな剣勇の動きに惑わされないように、しっかりと剣勇に注目する愛海だった。
何回目かは分からないが、剣勇が振り下ろした刀を愛海は剣で受け止めた。
すると次の瞬間、愛海の剣が二つに割れた。
実は愛海のメタルブレイザーが扱う剣は二つに分離することができるのだ。
これにより「両手剣」から「二刀流」のスタイルに変えることができるのだ。
「はぁー!」
愛海は声を上げながら、防いでない方の剣で剣勇を攻撃した。
流石の剣勇もこれは予測していなかったようで、対処が遅れた。
「くっ!」
剣勇の右腕に剣先が当たった。
・・・しかし、剣勇は特に反応はしなかった。
いくらメタルブレイザーを着ていても、剣が刺さったら痛いハズだ。
理由は簡単だった。
腕に剣が刺さっていなかったからだ。
「!?」
愛海は目の前の光景に驚愕していた。
実は剣勇のメタルブレイザーの腕には短いトゲのようなモノがついているのだが、そのトゲは伸縮可能なのだ。
剣勇はトゲを伸ばして愛海の剣を防いだのだった。
作戦を失敗した愛海は剣勇の刀を弾いて、一度距離を空けた。
流石に疲れており、「ハァハァ」と息を吐いている。
「そのような武装があったのですね。」
「お前もな。」
剣勇も少しだけ下がっていた。
お互いに相手から視線を外そうとはせず、警戒している。
「なんか、ワタシのときより良い勝負してる・・・。」
澪がやや不満そうに今の戦いの感想を言っており、そんな澪に対して他三人は苦笑いをしていた。
愛海は再び二つに割れた剣で剣勇に向かって行った。
愛海の斬撃を剣勇は素早く防ぎ、隙を見つけて剣勇も愛海に反撃をした。
互いに武器を振るっており、刃が触れ合うと金属音が広場に響いた。
もはやどちらが押されているかは第三者の目からは分からなかった。
だが、そんな戦いも終わりが近付いていた。
愛海が剣勇に斬りかかるが、剣勇は回避をして、その隙に愛海へ斬りかかる。
愛海は素早く後ろへ跳んだ。
その時だった。
愛海は背中を勢いよく壁にぶつけた。
そんな不意の出来事により、愛海は隙だらけとなってしまった。
次の瞬間、剣勇は刀を愛海に向かって振り下ろした。
剣勇の刀は愛海の首近くで止まった。
愛海はそのまま壁に背中をつけながら腰を抜かして座り込んだ。
勝負がついた。
「愛海だったな。 お前は確かに強い。」
剣勇は刀を腰に刺しながら話している。
腰が抜けている愛海も、頭だけを剣勇の顔を見るために見上げている。
「だが、戦う相手を意識しすぎて周りが見えていない。 それさえ注意すれば、もっと強くなれるだろう。」
剣勇は喋り終えると、愛海へ手を差し伸べた。
しかし愛海は動くことができなくなっていた。
「すみません。 ワタシに気にせず、次の人のもとへ行ってください。」
愛海はそう言った。
負けたショックもあるが、剣勇にあまり良い印象を持っていないので手を取ろうとしないのだろう。
つまり、拗ねているのだろう。
剣勇は差し伸べた手を引っ込めて、腰に当てた。
しばらく考えていたが、やがて愛海に背を向けた。
「せめて兜だけでも脱いでいてくれ。」
そう言って剣勇は他四人のもとへ歩き出した。
メタルブレイザーの兜だけは当然着脱可能。
剣勇のメタルブレイザーも同様にだ。
愛海は兜を脱ぐと、一つに縛っていた髪も解いた。
そしてやや遠くに見える五人を見ていた。
「さてと、次は誰だ。」
灰色のメタルブレイザーが四人に近付きながら言葉を発した。
するとその内の一人が元気よく出てきた。
「ジブンがやります!」
名乗り出たのはクラリスだった。
元気よく手を上げて、微笑んでいた。
ちなみに手を上げた瞬間、クラリスの胸がわかりやすく揺れた。
「分かった。」
メタルブレイザーを装着している剣勇が、この時どこを見ていたかは永遠の謎である。
一度装置を地面から出して、クラリスが自分のメタルブレイザーを呼び出そうとしていた。
その時、唯織が二人のもとへ近付いてきた。
「あの、待ってください。」
「どうした?」
唯織は剣勇の目を見ながら真面目に喋り出した。
「クラリスのメタルブレイザーは銃撃型です。 流れ弾の危険性がありますので、明日香のメタルブレイザーも出してよろしいでしょうか?」
唯織は今度は明日香を見ていた。
剣勇も続いて明日香に視線を向けていた。
明日香は見られていることに気付いて、二人から目を逸らした。
「確かにそうだな。 わかった。」
剣勇はすんなりと納得した。
明日香のメタルブレイザーはバリアを張ることができる防御型。
それなら他の女生徒も大丈夫だろう。
まずは明日香のメタルブレイザーを出した。
明日香は兜を被るために髪型を変えながらゆっくりと近付いてきて、メタルブレイザーを装着し出した。
明日香は黄色い装甲を身に付けて、箱の中から出てきた。
「お、終わりました。」
明日香が出てくると、今度はクラリスのメタルブレイザーを取り出す作業に移った。
明日香のメタルブレイザーが入っていた箱を引っ込めて、クラリスのメタルブレイザーが入っている箱を取り出す。
そしてクラリスは明日香と同じく髪型を変えながら箱の中に入り、桃色のメタルブレイザーを身に纏って出てきた。
「どうです、カッコいいですか?」
「ああ。」
ポーズを決めるクラリスに対して、ややテキトーに返事をする剣勇。
クラリスはメタルブレイザーの腰に下げていたマシンガンのような銃を持ち、構えている。
「いつでもいいぞ。」
剣勇も既に準備はできており、腕を組みながら立っていた。
一方、明日香たちは腰が抜けている愛海のもとまで移動していた。
明日香は剣勇の言葉を聞いて、メタルブレイザーを使ってバリアを展開し、他の皆を包んで守り始めた。
「オッケー!」
クラリスはそう声高に言って、持っているマシンガンを撃ち始めた。
さすがの剣勇も一発一発弾を避けることはできないので、大幅に横へ回避しだした。
クラリスはそんな剣勇を狙って、徐々に体を回す。
何発か打った後に、リロードに入った。
クラリスのメタルブレイザーの腰などにはマガジンポーチのようなモノが付いており、そこから弾を補充できる。
リロード時間は早くて5秒程度だった。
再び剣勇へ向かって銃撃を開始する。
剣勇はしばらく銃撃を避けているだけだった。
広場をグルグルと走り回り、時には反対方向へ逃げていた。
クラリスは一発も当てれないことにイラついたのか、マシンガンを地面に捨てて、背中に背負っていたバズーカのような兵器を出した。
そしてそれを剣勇目掛けて放った。
すると剣勇は危険を察知したのか、跳び上がった。
剣勇の後ろで爆発が起きた。
爆風で剣勇は前方へ吹き飛んだ。
そのまま地面へ叩きつけられる剣勇だったが、二回目のバウンドの後に着地に成功した。
流石にバズーカは一発だけだったようで、予備もなさそうだった。
剣勇はチャンスだと思い、一気にクラリスへ接近した。
素早い動きで近付いてくる剣勇に対してクラリスは焦っていた。
距離がだいぶ縮まったところで、剣勇は腰から刀を取り出してクラリスを斬ろうとした。
しかしクラリスはバズーカを地面へ捨てたと同時に、足に付いていた護身用のハンドガンを抜き出して、それを剣勇に向けた。
剣勇も瞬時にそれに気付き、走る方向をクラリスから右にズラした。
クラリスはハンドガンを一発一発撃って、剣勇を威嚇した。
流石にハンドガンの連射速度では剣勇に当てることは無理だった。
剣勇はクラリスの3、4メートル隣を通り抜けた。
剣勇を引き離したクラリスはハンドガンを元の場所へ戻して、地面に捨てたマシンガンを再び持ち、リロードした。
リロードを終えると、再び剣勇に向かって打ち始めた。
しかし今度は剣勇に接近しながらである。
遠くで撃ってては剣勇に当てることはできないと考えたのだろう。
流石にスピードでは追いつかないが、先回りなどを考えて地道に距離を詰めようとする。
それに気付いて剣勇は別の方向へ逃げようとする。
そういうのが続いた。
だが、剣勇を追い始めて二回目のリロードを終えて再び撃ち始めて数秒が経った後、剣勇の動きが変わった。
突然走る方向をクラリスの方に変えた。
クラリスがまだ銃撃を続けているのに、そこへ剣勇は突っ込んでいった。
クラリスは気にせずに撃ち続けるが、突然弾が出なくなった。
全弾撃ってしまったようだ。
クラリスは慌てて踵を返して、全力で逃走しながらリロードをしようとした。
しかし慌ててしまっているため、マガジンがマシンガンに入らずにいた。
そうこうしているうちに、クラリスは背後から剣勇に捕まえられた。
背後から体に左腕を回され、刀の刃を首に向けられた。
「ま、参ったです・・・。」
クラリスはあっさりと負けを認め、マシンガンを地面に落とした。
遠くからそれを見ていた明日香はバリアを解いた。
「クラリスだったな。 銃を使うのなら弾数は覚えておけ。」
クラリスを捕まえたまま、左後ろから剣勇は語りかけていた。
「リロードは最も隙が出る危険な時だ。 最悪の場合、今のような状況になる。」
剣勇はそう言うと、クラリスを解放した。
クラリスはややヨロヨロしていたが、しっかりと地に足をつけて、剣勇に向かって敬礼をした。
「わかりました!」
メタルブレイザーの中で満面の笑みを見せて、素直に返事をするクラリスだった。




