5.第1話「剣勇 と 第一小隊」(5/7)
剣勇たち第一小隊は、再び訓練所の広場へと戻っていた。
第一小隊の女生徒たちは、一人ずつメタルブレイザーの紹介をしていた。
澪のメタルブレイザー「撃」。
打撃攻撃型の赤色のメタルブレイザーで、硬く大きな拳を持つ。
澪は「撃」を装着して、空中を殴るように拳を打ち込んだ。
一発一発良い音がしていた。
続いて、両腕を高速で動かした。
高速で殴ることも可能のようだ。
愛海のメタルブレイザー「斬」。
斬撃攻撃型の青色のメタルブレイザーで、剣を武器にして戦う。
愛海は「斬」を装着し、剣を片手で素振りをした。
剣を素早く動かしまくるが、あまりの速さに刃が見えなかった。
明日香のメタルブレイザー「衛」。
防御型の黄色のメタルブレイザーで、頑丈な装甲をしている。
明日香は「衛」を装着した。
体の四箇所からアームのようなモノが出てきて、先端にはアンテナのようなモノがあった。
そして次の瞬間、「衛」の周りに黄色いバリアがドーム状に張られた。
バリアを解くと、四つのアームが今度は「衛」の前方を指すように伸びてきた。
すると今度は「衛」の前方だけにバリアが張られた。
どうやらバリアの種類が色々とあるようだった。
小型の機銃が両肩部に装備されており、そこから微力ながら連射攻撃をすることも可能らしい。
クラリスのメタルブレイザー「弾」。
射撃攻撃型の桃色のメタルブレイザーで、大型の銃を装備している。
クラリスは「弾」を装着した。
持っているのは連射型の銃だった。
他にも「弾」の装甲には単発高火力型の銃や、小型の護身用の銃もある。
装備していないだけで、他にも種類があるらしい。
唯織のメタルブレイザー「翼」。
飛行型の緑色のメタルブレイザーで、大きな機械の翼が生えている。
唯織は「翼」を装着した。
機械の翼は所謂ジェットパックのようになっており、炎を噴射して空を飛ぶことができる。
また、腰の側面に小型のガトリング砲が付いている。
剣勇は一通りメタルブレイザーを見ることができた。
メタルブレイザーを一度脱いだ女生徒たちは制服には着替えておらず、ボディスーツ姿になっている。
メタルブレイザーを着る際に下に着用するボディスーツである。
「どうだった? 自分で言うのもアレだけど、結構役に立てると思うよ。」
澪が自信満々に言った。
剣勇はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「ああ、役には立つさ。」
剣勇の一言を聞いた澪は笑顔になった。
しかし、剣勇は喋り続けた。
「だが、まだ万全ではない。」
「え?」
剣勇の続いた言葉を聞いて澪は再び微笑に戻った。
他四人も、どういうことか聞きたそうな表情をしていた。
「私たちが未熟だと、そう言うのですか?」
愛海がそう言いながら、前に出てきた。
少し怒っているようだった。
「その通りだ。」
しかし剣勇は特に表情を変えずに答えた。
愛海は黙ったまま剣勇を睨んでいた。
剣勇はそのまま後ろを向いた。
「しばらく休憩でもしていてくれ。 すぐに戻る。」
そう言って剣勇は訓練所の筋トレエリアへの扉を開いて、中へ入って行った。
愛海は追いかけようとしたが、途中で諦めて足を止めた。
剣勇が消えてから数分が経っていた。
残された五人は広場の真ん中あたりで座って休んでいた。
「指揮官さん、どうしちゃったんだろう。」
澪がダラッとしながら他四人に聞いた。
「どうせ、実戦経験のない若造とでも思っているのでしょう。」
愛海が嫌味な言い方で返答した。
すると、寝っ転がっていたクラリスが起き上がった。
「でも、その通りじゃん。」
クラリスは愛海を見ながら言った。
それに対して、愛海は特になにも言わなかった。
数秒間沈黙が続いたが、口を開いたのは唯織がだった。
「とりあえず、指揮官さんを待ちましょう。」
静かな声でそう言った。
それから三十分が経った。
五人は流石に我慢の限界だった。
「遅いですね、指揮官さん・・・。」
大人しい唯織も、剣勇が戻って来ないことに疑問を持ち始めた。
すると、地面で寝ていた澪が飛び起きた。
「遅い! ちょっと、探してくる!!」
澪がそう言って扉へ向かって歩き出した。
「お、大人しく待っていた方が・・・。」
明日香が澪を止めようとしていた。
澪はクルッと後ろを振り返った。
「十分待ったって。 ちょっとそこまで見てくるだけだよ。」
澪は後ろ歩きをしながら喋っていた。
すると、澪の背中がなにかに当たった。
澪が顔を上げると、そこには剣勇の顔が見えた。
「なにをしている。」
剣勇がちょうど戻ってきていた。
再び全員、広場の中央に集まった。
「で、一体なにをしに行っていたのですか?」
愛海が早速聞いてきた。
しかし剣勇は黙ったまま、広場にある地面から生えた装置のようなモノの近くへ移動した。
そして装置にある十個のボタンを使って、パスワードを入力するかのように押した。
「あの、一体なにを・・・。」
愛海がもう一度問い詰めるが、剣勇は黙ったままだった。
しばらくして、四角で囲まれた地面が開き、中から鉄の箱が現れ、観音開きに開いた。
箱の中の隅々には灰色のメタルブレイザーのパーツが入っていた。
五人全員、箱の中のモノが気になっていた。
すると、剣勇は五人の方を向いて一言喋った。
「これから少し、指導をさせてもらう。」
剣勇はそう言うと、地面から生えた装置に上着と被っていた帽子を引っ掛けて、箱の中へ入った。
すると、剣勇の身体に次々に装甲が被せられていった。
そして数秒後に剣勇の全身を灰色のメタルブレイザーが覆った。
生徒たちと違って兜は自分で被るのではなく、そのまま機械によって装着させられていた。
灰色のメタルブレイザーを身に纏った剣勇は箱から出てきて、五人の前に移動した。
剣勇のメタルブレイザーは五人のメタルブレイザーと雰囲気が違った。
体型が男性的であり、透明なはずのバイザー部分は赤くなっていて中の顔が見えない。
口元の部分に鋭い歯が生えた口のような模様があった。
また、腰には「刀」のような武器が刺さっている。
「それが、指揮官さんのメタルブレイザーですか?」
「そうだ。」
澪の質問に剣勇は即答した。
少し間を置いて、剣勇は再び喋り出した。
「一度、俺と手合わせをしてくれ。」
剣勇の発言に五人はどういうことか理解してなさそうな表情をしていた。
しかし、その中の一人が手を挙げた。
「分かりました! まずアタシからやります!!」
「・・・いいだろう。」
澪は剣勇の許しをもらうと、早速近場にある地面から生えた装置のもとへ走り出した。
そして澪は装置についている十個のボタンを押し始めた。
メタルブレイザーが入った箱を呼び出すには、パスワードが必要なのである。
特に専用のメタルブレイザーのパスワードは一般用に比べて長い。
澪はパスワードを入力し終わり、剣勇のときと同じように地面からメタルブレイザーの箱が出てきた。
箱が開くと、中に入っていたのは澪専用の赤いメタルブレイザーだった。
澪は箱の中に置いてあった兜を被り、そして中に入って赤い装甲を機械によって身につけられる。
やがて赤いメタルブレイザーを装着した。
そして剣勇と澪はもう一度ボタンを押して箱を地面に戻した。
澪はいつでも戦えるように構えた。
剣勇も澪から視線を外さなかった。
すると、愛海が二人に近付いてきた。
「待ってください。 とりあえず装置を壊したら大変なので、一度装置を引っ込めます。」
そう言うと愛海は広場の壁の方へ走って行った。
そして壁にある機械をイジり始めた。
すると装置が刺さっている地面が開き、そのまま地面の中へ引っ込んだ。
どうやら、これで壊れる心配はないようだ。
剣勇は機械に引っ掛けていた自身の上着と帽子を回収しており、それを隅に置くついでに愛海に近付いた。
「ありがとな。」
剣勇は愛海にお礼を言った。
しかし愛海は表情を特に変えはしなかった。
「いつでもいいぞ。」
剣勇はそう言った。
すると澪はすぐに剣勇に襲い掛かった。
澪の右ストレートが剣勇に接近する。
だが剣勇は簡単に避けた。
澪が体勢を整えるまで数秒時間がかかったため、剣勇が澪へ攻撃を与える隙はあった。
しかし剣勇は攻撃を与えなかった。
腕を組んで澪を見ている。
澪は再び剣勇に向かって右ストレートを放った。
また剣勇に避けられたが、どうやら予測済みのようで今度は左で殴り掛かった。
剣勇に澪の左の拳が接近するが、その前に剣勇は後ろに跳んで避けた。
しかし澪も剣勇が後ろに跳んだのを見ると、剣勇を追いかけて再び殴り掛かった。
だが、やはり剣勇は攻撃を避けていた。
澪は諦めずに剣勇に向かって攻撃を続けた。
しかし全部の攻撃を剣勇は回避するのだった。
澪はやや疲れてきていた。
若干フラフラしているように見えた。
澪は剣勇に向かって力一杯に拳を放った。
次の瞬間、剣勇は攻撃を避けた後に、自分の左足で澪の足を引っ掛けた。
当然澪はバランスを崩し、転倒した。
うつ伏せに倒れた澪は仰向けになって立ち上がろうとするが、眼前には刀の刃があった。
それは、剣勇のメタルブレイザーの武器である刀だった。
澪は身動きをとることができず、ただ肩を落とすだけだった。
勝負がついた瞬間だった。
剣勇は刀を収めると、倒れている澪に向かって手を差し出した。
「澪だったな。 お前は攻めることに夢中になりすぎて足元への注意を疎かにしている。」
澪は差し出された手を掴んで立たされながら、剣勇の話を黙って聞いていた。
「すると今のように、文字通り足をすくわれちまうわけだ。 今後は足元も気をつけることだ。」
「・・・はい!」
澪は素直に剣勇のアドバイスを受け入れた。
「次はワタシがやります。」
次に名乗り出たのは愛海だった。
彼女の目は真っ直ぐと剣勇を見つめていた。
「わかった。」
剣勇は視線を澪から愛海へと変えた。




