4.第1話「剣勇 と 第一小隊」(4/7)
女生徒は剣勇の顔をまじまじと見た。
校内に男が入ってきていることに不思議がっているのだろう。
飯田先生は一度扉を閉めて、女生徒の方へ向いた。
「昆野さん、こちらが先程話していた指揮官さんです。」
飯田先生は優しく丁寧に話した。
すると昆野と呼ばれた女生徒は表情を明るくして、剣勇の顔をさらに覗いた。
「ああ、あなたが指揮官さんですか!」
女生徒は落ち着きがなく、ウロウロしながら剣勇を見ていた。
すると飯田先生が口を挟んできた。
「と、とりあえず中へ入りましょう。」
飯田先生は再び扉を開いた。
飯田先生に手招きをされ、剣勇は扉の中へ入った。
その後に飯田先生も中に入った。
建物の中には、大量の筋トレ器具が置いてあり、いくつか生徒が使用していた。
「ところで昆野さん。 どこかへ行くつもりだったのでは?」
「あっ、そうだった。」
昆野と呼ばれた女生徒もなぜか一緒に入ってきていた。
女生徒は再び扉を開けた。
そして外に出ようとしたところで足を止めて、後ろを振り返った。
「またね、指揮官さん。」
女生徒は手を振りながら、扉の外へ消えた。
「彼女は "昆野澪" さん。 また後で会うと思うから、その時に改めて自己紹介をさせるわ。」
飯田先生は再びタメ口でそう言った。
剣勇は「後で会う」の意味が分かっていなかったが、とりあえず「分かった」と言った。
飯田先生は奥へ奥へと進んでいった。
剣勇も周りの女生徒たちの目を気にせずに進み続けた。
そして一番奥の扉を開いて、二人共扉の中へ入った。
出たところは広々とした場所だった。
前方までだけなら100メートル以上はあるだろう。
それくらい広かった。
真上を向くと、空が見えた。
まるでドーム球場のようだった。
よく見ると、所々に女生徒たちがいた。
全部で四人だった。
それぞれがメタルブレイザーに身を包んでおり、特訓をしていた。
一人は剣を扱った特訓。
一人はバリアを使った特訓。
一人は銃を扱った特訓。
一人は空を飛んだ特訓。
それぞれが自分に合った特訓をしていた。
「彼女たちが「第一小隊」のメンバーよ。」
「あれは、専用のメタルブレイザーなのか?」
「うん、そう。」
それぞれ明るい色のメタルブレイザーを身に纏っている。
剣使いは「青」。
バリア使いは「黄」。
銃使いは「桃」。
翼持ちは「緑」。
二人は前進し始めた。
すると四人は二人に気付いたようで、特訓を辞めて二人に近付いた。
四人が二人の前で、横一列に並んだ。
「ご苦労様。 とりあえずメタルブレイザーを脱いでちょうだい。」
飯田先生の言葉を受けて、四人が「はい。」と答えてそれぞれが離れた。
すると地面から生えた装置のようなものに付いているボタンをそれぞれがパスワードを入力するかのように押した。
次の瞬間、四角で囲まれた地面が開き、中から鉄の箱が現れ、観音開きに開いた。
女生徒たちが中に入ると、身に着けていたメタルブレイザーが次々に取り外され、やがて兜だけとなった。
最後に兜の側面にあるボタンを押して下半分が開き始め、顔の下半分が露わになりそのまま兜を脱ぐ。
そして、メタルブレイザーの中に入っていたボディスーツを身につけた女生徒たちが現れた。
女生徒たちはメタルブレイザーを脱ぎ終わると箱から出て、先程自分たちが入っていた場所の床に上半分だけとなった兜を置く。
その後、装置の別のボタンを押した。
すると鉄の箱が閉じて、地面に潜って行った。
そして開いた地面が閉じて、普通の地面になった。
女生徒四人が、再び二人の前で横一列に並んでいた。
それを確認して、飯田先生が喋りだした。
「こちらが今日から皆の指揮官となる"嘉堂剣勇"さんだ。」
生徒たちが一斉に剣勇を見始めた。
飯田先生は構わず喋り続けた。
「彼は実戦経験も豊富なので、あなたたちの強い力となるでしょう。」
飯田先生は喋り終えると、剣勇に合図を送った。
それに反応し、剣勇は一歩前に出た。
「嘉堂剣勇だ。 お前たちを一人前のメタルブレイザー装着者にしてやる。」
剣勇はそう言い放った。
それに対して、女生徒たちは「よろしくお願いします。」と頭を下げた。
「では、ここで話すのもアレですし、一度移動しましょう。」
飯田先生がそう言って皆を誘導させようとしていた。
その時だった。
「あー、待ってー!!」
剣勇の後ろから大きな声がした。
剣勇が振り返ると、そこには先程の女生徒が走ってきた。
「今、戻りましたー!!」
女生徒は元気よくやってきた。
二人の近くまで来ると、女生徒は膝に手をついて「ハァハァ」と息を荒げた。
女生徒は息を整えると、再び背中を真っ直ぐにして顔を上げた。
「指揮官さん、よろしくお願いします!」
女生徒が敬礼をしながら元気よく剣勇を見ながら言ってきた。
剣勇はいきなりのことに混乱していた。
「あ、えっと、彼女も「第一小隊」のメンバーです。」
理解した飯田先生が優しく紹介してくれた。
剣勇は「さっきのはそういうことだったのか。」ということを言いそうな顔をしていた。
剣勇も含めた七人は、建物の一室に移動した。
少しだけだが机と椅子が並んだ部屋だった。
「じゃあ、後のことは剣勇に任せるわ。 私は他に仕事があるから失礼するわね。」
「え?」
剣勇がなにかを言おうとしたが、その前に飯田先生は部屋を出て行ってしまった。
剣勇は数秒だけ固まっていたが、すぐに元に戻った。
五人の生徒が剣勇を見ている。
剣勇はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「えーと、じゃあまずは自己紹介をしてくれ。」
剣勇は特に緊張してる様子は無く、普通に話していた。
剣勇の言葉を聞いて、女生徒たちがお互いに見合っていた。
しかし、一人だけ見合っていなかった女生徒がいた。
「はい、アタシからやります!」
その一人の女生徒が手を上げた。
"昆野"と呼ばれた女生徒だ。
昆野と呼ばれてた女生徒は立ち上がった。
「アタシは "昆野澪" です! 食べることが大好きで、特にケーキが大好きですっ! よろしくお願いします!!」
女生徒・澪は終始元気だった。
彼女は話し終えると、スタッと席に着いた。
そして笑顔で剣勇を見ていた。
周りの女生徒たちは澪を見て黙ったままだった。
「どうしたの? 早く皆も自己紹介をしなよ。」
澪の言葉でその他四人がやや慌てていた。
しばらくして、その内の一人が手を上げた。
「では、次はワタシが。」
手を上げた女生徒は、静かにそう言った。
見た目は黒髪のロングヘアの美少女だった。
女子高生とは思えない落ち着いた大人の雰囲気があった。
黒髪ロングの女生徒は立ち上がった。
「ワタシの名前は "日鷹愛海" です。 これからよろしくお願いします。」
澪に比べて愛海は短めに自己紹介をし、静かに席に着いた。
「愛海ちゃん、もう一言くらい言った方がいいんじゃないの?」
「別に必要ないでしょ。」
澪も気になったようで愛海に忠告したが、愛海は特に改善しようとはしなかった。
剣勇は特に何とも思ってはいないので、問題はないが。
「まあ、いいか。 じゃあ次は明日香ちゃん。」
「・・・え!?」
誰もやろうとはしないので、ついに澪が指名した。
指名された女生徒は澪と同じくらい小柄で、黒髪のサイドテールだった。
明日香と呼ばれた女生徒はしばらく座り込んでいたが、ゆっくりと立ち上がった。
「さ、 "佐久間明日香" です・・・。 ど、動物が大好き、です・・・。 よ、よろしくお願いします・・・。」
明日香は口下手だった。
というより、初対面の剣勇に対して免疫がないのだろう。
これは時間が解決するだろう。
明日香は静かに席に着いた。
「あ、じゃあ次はジブンがする。」
次に手を上げたのは、この中で唯一の外国人の女生徒だった。
金髪と茶髪の中間あたりのロングヘアで、後ろを一箇所結んでいる。
また、発育の良い体をしている。
外国人の女生徒は立ち上がった。
「ジブンは "クラリス・グリーンフィールド" です。 お寿司が大好きです。 よろしくです。」
クラリスも澪ほどではないが元気だった。
それと、日本語が上手だった。
剣勇はクラリスが立ち上がる際に揺れていた胸に目線がいってたが、急いでクラリスの顔に照準を合わせていた。
幸いバレてはいなかった。
「じゃあ、最後は・・・。」
澪がそう言うと、剣勇を入れた五人は一斉に残り一人を見た。
最後の一人は、五人から見つめられて顔を真っ赤にしていた。
クラリスは最後の一人を見ながら、スッと席に着いた。
「え、えっと・・・。」
最後の一人は慌てていた。
他の五人は特になにも言わずに、彼女が自分から喋るのを待っていた。
最後の一人である女生徒は黒髪のセミロングヘアで、大人しい少女だった。
意外と早く最後の一人はゆっくり立ち上がった。
「 ワタクシは"新嶋唯織" と申します。 趣味は読書です。 よろしくお願い致します。」
唯織は静かな声で丁寧に自己紹介をした。
そして、そのまま席に着いた
「さて、自己紹介ありがとうな。 この先の訓練などでいいから、その時にでももっとお前らのことを教えてくれ。」
剣勇は優しくそう語りかけた。
それに答えるように小隊の皆は笑顔や微笑みを見せてくれた。
無表情の愛海を除いて。
剣勇は間を置いて、再び話し始めた。
「よし、じゃあ次は・・・。」
剣勇がなにかを話そうとした次の瞬間、澪が手を上げた。
「待って、指揮官さんの自己紹介がまだです!」
「・・・なに?」
澪の言葉で、剣勇の話が止まった。
「そうです。 指揮官さんのことも教えてほしいです。」
クラリスも澪に続いて剣勇に意見した。
他三人も剣勇を見ていた。
剣勇は被っていた帽子を取り、胸に置いた。
そして、五人の視線に押されて仕方なく自己紹介を始めた。
「・・・俺は "嘉堂剣勇" 。 知っての通り嘉堂結花の息子で、嘉堂姫花の弟だ。 よろしく頼む。」
剣勇も無事に自己紹介を終えた。
剣勇が再び帽子を被ろうとした次の瞬間だった。
「指揮官さんの好きなモノや趣味は?」
澪がさらに意見してきた。
剣勇は帽子を被ろうとした手を止めた。
「釣りや筋トレなどだ。 珍しいことではない。」
剣勇は再び手を動かし、帽子を被った。




