3.第1話「剣勇 と 第一小隊」(3/7)
教頭先生は再び話し出した。
「申し遅れました。 私は『鉄衣学園』の教頭を務めている "山居紀子" と申します。
「は、初めまして・・・。」
剣勇はぎこちなく礼をした。
礼を終えると、剣勇は急に「ん?」という声を発した。
「山居紀子って、もしかして最初に量産型メタルブレイザーを装着した四人の内の一人では?」
剣勇がそう言うと、山居教頭は頬に両手を当てながら恥ずかしそうにしていた。
「お恥ずかしい。 あの惨劇はあまり誇れるものではないのですがね・・・。」
量産型メタルブレイザーの初陣はチームワークの無さが原因で辛勝だった。
それでも、本人たちはともかく、一般人たちからすると誇らしいことであった。
そのことが切っ掛けで、こうして『鉄衣学園』も誕生したわけでもあるからだ。
「そ、そんなことより、早く職員室の方へ移動しましょう。」
「よろしくお願いします。」
山居教頭に連れられて、剣勇は学園の中へ足を踏み入れた。
そして、校舎を目指して歩き出した。
といっても校舎は複数建っている。
どこになにがあるのかは、当然ながら剣勇には分からない。
山居教頭を見失うと百パーセント迷子になるだろう。
剣勇は周りをゆっくり眺める余裕はあまりなかった。
目の前の校舎に入ると、大きな玄関があった。
「校内は土足で大丈夫ですよ。」
「存じております。」
玄関から上がると、山居教頭は左に曲がった。
そのまま真っ直ぐ行くと、山居教頭は右側の扉の前で立ち止まった。
どうやらここが職員室のようだ。
「では、あとで呼びますので、そうしたら入ってきてください。」
「分かりました。」
剣勇の返事を受け取ると、山居教頭は職員室へ入っていった。
剣勇は待っている間に挨拶の内容を考えていた。
剣勇は、ふと周りを見回した。
職員室の反対側には女子トイレがあり、男子トイレはない。
ここで剣勇は理解した。
職員室の中には女性教員しかいないことを。
もしくは男性が1割しかいないのかもしれない。
剣勇は器用に挨拶の内容を考えながら、そう考えていた。
しばらくして、職員室の扉が開いた。
「では、よろしくお願いいたします。」
山居教頭の言葉を受け取り、剣勇はついに職員室の中へ足を踏み入れた。
すると、そこの光景は剣勇にとって今まで見たことのないモノであった。
見渡す限り女性ばかりで、男性が見当たらなかった。
剣勇の予想は当たっていたようだ。
「こちらが今日から「第一小隊」の指揮官に任命された "嘉堂剣勇" さんでございます。」
山居教頭の言葉が職員室の奥まで響く。
職員室内の女性教員たちが全員剣勇を見ている。
剣勇は思わず目を逸らしそうになるが、なんとか頑張って耐えていた。
「では、一言よろしくお願いいたします。」
「は、はい。」
若干言葉が詰まったが、剣勇は気にせず前へ出た。
同時に被っていた帽子も取り、胸に当てた。
「嘉堂剣勇です。 母や姉ほどではありませんが、十分な実力はありますので任せてください。 「第一小隊」を必ず一人前のメタルブレイザー装着者に育て上げてみせます。 どうぞよろしくお願いいたします。」
剣勇は話し終えると、深く礼をした。
そして響く大量の拍手を音を頭で受け取り、体を戻して姿勢を正した。
「では、飯田先生。 あとはよろしくお願いします。」
「はい、分かりました。」
飯田先生と呼ばれる女性教員は立ち上がり、剣勇の元へ近付いた。
そして剣勇を連れて、職員室を後にした。
飯田先生と共に職員室を出て、どこかへ向かっていた。
剣勇は再び帽子を深く被り、飯田先生を見失わないようについて行ってる。
すると、飯田先生は後ろを振り向かずに剣勇に向かって話しかけた。
「しっかし、本当にこの学園に来るとはね。」
「俺を推薦した一人は聡美姉じゃないか。」
実はこの二人は知り合いだった。
飯田先生は "飯田聡美" という名前で、剣勇の幼馴染のお姉さんだった。
そして剣勇を「第一小隊」の指揮官に推薦した一人でもあった。
「いつか久しぶりに手合わせをしたいわね。」
「聡美姉と違って、俺は今でもヤミガタ相手に戦っているんだぜ。」
「やってみなきゃ分からないじゃない。」
話の通り、飯田先生も昔はメタルブレイザー装着者だった。
正確には『鉄衣学園』の生徒だった。
しかし卒業後は部隊には配属されず、学園の教師となったのだった。
『鉄衣学園』の卒業生の進路は基本四つに分かれる。
一つは政府から推薦されて、部隊に配属されること。
一つは緊急時の戦闘要員として、たまに招集がかかるだけのこと(これを「リサーブ」と呼ぶ)。
一つは自分の経験を武器に『鉄衣学園』の教師になること。
一つは戦いから身を引いて、メタルブレイザーを使わなくなること。
基本この四つのことになる。
「結花さんや姫花ちゃんは元気?」
「実家には全く帰ってこないから知らねえ。」
「それもそうね。 二人とも超有名人だからねぇ。」
幼馴染であるため、飯田先生も直接二人に会ったことがある。
現在、結花は女優業で大忙し。
姫花は説明するまでもないが、メタルブレイザーの『精鋭部隊』として活躍し続けている。
「それにしても、昔に比べて随分身だしなみが綺麗ね。 最初誰か分からなかったわ。」
「「女学園に行くなら綺麗にしろ」って姉貴に言われてな。」
「なるほどね。」
剣勇は昔、今と比べると結構汚い感じの男だった。
『鉄衣学園』へ行くことが決まったときから姫花の命令を受け、髪を切り、髭を剃り、顔や体を洗いまくった。
そして現在に至る。
「おっと、着いたわ。」
話していると、一つの部屋に着いた。
室名札には指揮官室と書かれている。
「ここが剣勇の学校での部屋になるわ。」
指揮官室は職員室とは反対側にある。
玄関から上がり、右に進むと着く。
「言っておくけど、あくまで指揮官としての仕事をするための部屋だからね。 私生活品とかは全部アパートの方に持って行ってね。」
「分かってるって。」
『鉄衣学園』の寮は生徒専用で、教師たちは学園外で寝泊まりをすることになっている。
なので剣勇は、『鉄衣学園』から少し離れたアパートに引っ越してきている。
そこで今後暮らすことになっているのだ。
指揮官室の中に入ると、そこには畳と机と棚があるだけだった。
また、隅に巨大な鉄の箱があった。
「なんだこりゃ。」
「指揮官室なんだから、これだけでいいでしょ。」
剣勇は特に文句は言わなかった。
正直、机さえあれば仕事ができるからだ。
「畳に乗るときは土足は厳禁だからね。」
畳の前には段差があり、そこで靴を脱ぐようだった。
飯田先生は靴を脱いで畳に上がり、鉄の箱に近付いた。
「あと、この中に剣勇のメタルブレイザーが入ってるからね。」
飯田先生は箱を叩きながら言った。
ゴンッゴンッといい音がしていた。
「ああ、分かった。」
剣勇はなにか言いそうにしていたが、面倒臭くなってなにも言わなかった。
とりあえず受け入れたのだった。
「じゃあ、今の授業が終わったらまた迎えに来るから、それまでは寝っ転がったりしながらここで待ってて。」
飯田先生はそう言うと畳から降りて、靴を履き直して部屋から出ていった。
開けられた扉が自然と閉まり、部屋の中はとても静かになった。
剣勇はとりあえず、窓を少しだけ開けた。
外から風が部屋の中に入ってきて涼しそうだった。
窓の外は中庭が見え、反対にこちらの様子も外から見える。
だがカーテンもあるため、とりあえずプライバシーは守られる。
剣勇は早速カーテンを3分の2程度閉めた。
そして剣勇は背負っていたバッグを机の横に置き、畳の上で寝転がった。
帽子をそこら辺へ投げ捨てて、そのまま目を閉じた。
「おーい、起きろ。」
剣勇は目を覚ました。
すると、飯田先生が迎えに来ていた。
剣勇はやや慌てた様子で起き上がった。
「まあ、そう慌てなくていいから。 今終わったところだからさ。」
飯田先生は畳から降りて、靴を履き直した。
そして剣勇の方を見た。
「じゃあ、「第一小隊」の場所に案内するわ。」
剣勇は急いで準備をした。
開けた窓を閉めて、バッグを再び肩にかけて、帽子を深く被り直した。
窓を閉める際に、少しだけ外の様子が見えた。
外では沢山の女学生たちが歩き回っていた。
授業間の中休みだろう。
準備が終わって、飯田先生に連れられ部屋を後にした。
校内にも当然女学生たちが歩き回っていた。
飯田先生は近くの階段を上がり始めた。
剣勇も同様に階段を上り始めた。
二階へと到着をすると、すぐ近くに隣の校舎に続くやや細い道があった。
そこは水平型のエスカレーター、つまり動く歩道となっていた。
飯田先生が動く歩道に乗ったので、剣勇も続いて乗った。
歩道に連れられ、隣の校舎へと移動した。
移動途中はガラスから外の景色が見える。
外にも大量の女学生たちがいた。
隣の校舎へ着くと、再び飯田先生は歩き始めた。
剣勇も飯田先生についていった。
移動途中、当然ながら周りの生徒たちが剣勇のことを見てきた。
この学園でおそらく唯一の男だろうからだ。
剣勇は見られていることを自覚しながらも、特に気にせず歩き続けた。
そして再び動く歩道に乗り、さらに隣の校舎へ移動した。
すると今度は近くの階段を下り始めた。
そして一階に着くと、玄関から外へ出た。
「わざわざ階段を上る必要はあったのか?」
「校舎への移動は楽だったでしょ。」
「まあな。」
「階段を上がる作業でプラスマイナスゼロだがな。」という感想を口には出さずに心の中で思った剣勇だった。
外へ出ると、大きな建物が見えた。
そこはまるで闘技場のようだった。
「あそこに彼女たちがいるわよ。」
大きな建物を目指して二人は歩み続けた。
出てきた校舎と大きな建物への距離は意外とあった。
おそらく大きな建物はメタルブレイザーの訓練所であろう。
騒音などから遠ざけるために離してあるのだろうか。
そんなことを考えながら剣勇は歩いていた。
坂道を上がり終えると、すぐ先に大きな建物の入口が見えた。
二人は歩みを止めなかった。
「ここがメタルブレイザーの訓練所よ。」
飯田先生は喋りながら入口のドアノブを握った。
そして引っ張ると、中から一人の女生徒が飛び出てきた。
どうやら、あちらもドアを開けるつもりだったらしい。
「おっとっとっ!」
女の子は片足立ちの状態で前方に跳んで行った。
そのまま前方にいた剣勇にぶつかった。
思わず剣勇は女生徒を両手で受け止め、女生徒が両足を地につけたことを確認すると手を離した。
「す、すみません・・・!」
顔を上げた女生徒は剣勇へ謝罪した。
女生徒は黒髪のショートヘアで、ピンク色のヘアピンをしていた。
顔も普通に可愛く、背は平均的な女子高生の身長(158cm)より小さめだった。
「あれ、あなたは・・・。」
女生徒は剣勇の顔をまじまじと見た。




