2.第1話「剣勇 と 第一小隊」(2/7)
数十年前。
世界に謎の生物が現れた。
奴らはあちこちの都市に入り込み、人々に襲い掛かった。
生物たちは不気味で、この世のモノとは思えない容姿ばかり。
人々は奴らのことを『ヤミガタ』と呼んでいる。
ちなみにこの名称は、ヤミガタ発生から数日後に政府が決めた呼び名だ。
当然黙って見ている人類ではなかった。
天才科学者 " 橋本賢一 " によって、ヤミガタに対抗するための兵器を作ったのだった。
その名も『メタルブレイザー』。
いわゆるバトルスーツ型の兵器だ。
数ヶ月の時を経て、ついにプロトタイプであるメタルブレイザーが完成したのだった。
しかし、それと同時に事件が起きた。
実は橋本博士は不治の病を抱えていたのだった。
メタルブレイザーが完成した二日後に病に倒れ、この世を去ったのだった。
橋本博士の弟子は数人いたが、誰も博士の足元にも及ばなかった。
こうして、完全なメタルブレイザーを作れる者はいなくなってしまった。
プロトメタルブレイザーは女性用だった。
筋肉量などでは基本女性の方が劣っているため、先に女性用が作られたのだった。
その後、男性用も作るつもりだったが、その前に博士が他界してしまった。
これが、後にメタルブレイザーが女性専用になった第一理由であった。
その後、プロトメタルブレイザーの装着者探しが始まった。
とりあえず国内で数千人の女性を探し回ったのだった。
ヤミガタは自衛隊などが対処をしており、しばらくは比較的安全であった。
ヤミガタは自衛隊レベルでも対処自体はできる。
しかし雑魚一体に数十秒もかかり、強力なのは早くて数分だった。
そのペースでは、一集団の殲滅に数時間かかってしまう。
人々は守れても、住む場所を守ることは難しいだろう。
装着者探しから数週間後。
上手く操縦する女性は数十人もいたが、いずれも実戦投入できるレベルの装着者はいなかった。
しかし、ついに装着者が決まった。
選ばれたのは "瀧原結花" という女性だった。
彼女はメタルブレイザーの操縦が上手く、試運転で軽やかに動かしていたのだった。
短い期間の訓練を受け、ついに実戦投入されたのだった。
プロトメタルブレイザーには近接用の剣と、遠距離用の銃が装備されていた。
背面にはミサイルポッドがあり、また拳でも少しばかりダメージが与えられた。
結果は大勝利。
都市に現れたヤミガタたちは数十分で殲滅させられたのだった。
こうして、世界は "瀧原結花" という英雄を生み出したのだった。
その後も結花はヤミガタたちの討伐を続けた。
日本を飛び出し、世界を回ってヤミガタを殲滅し続けた。
もちろん科学者たちは既に新たな行動に移っていた。
メタルブレイザーの量産だった。
しかしヤミガタが現れ続けている現状では、男性用のメタルブレイザーを作っている時間はなかった。
そのため、プロトメタルブレイザーを基にした量産型メタルブレイザーの製造が開始された。
当然だが、橋本博士でないと完全なメタルブレイザーを作ることはできない。
それも理由にし、質より量を目的とした劣化版メタルブレイザーを作ることになった。
結花や自衛隊などがヤミガタと戦っている間に、科学者たちは次々と量産型メタルブレイザーの製造をしていた。
その結果、四体のメタルブレイザーが完成した。
この四体は、プロトメタルブレイザーを四等分した強さに値している。
ヤミガタ相手にも十分戦えるであろう。
早速装着者探しを再び開始した。
今回は結花のように飛び抜けた才能の持ち主を見つける必要はなく。
そこそこ戦える程度でよかった。
その結果、たった数日で四人の装着者の見つかった。
彼女たちも、結花がいるところとは別の場所で同時発生したヤミガタの対処をしていた。
しかし問題が発生した。
彼女たちも短期間の訓練を行ったが、結花の初陣とは違い、結果は辛勝だった。
原因は「チームワーク」だった。
親しくもない初対面のチームでは連携などが取れず、事故なども起こった。
当然この結果を切っ掛けに、政府は考えた。
そして、メタルブレイザーのための学校が日本に設立された。
その名も『鉄衣学園高等学校』。
この学校ではメタルブレイザーの装着者を育成することが目的の学園である。
学校生活をしていれば自然と他人と親しくもなり、一石二鳥というわけだ。
この学園の卒業生の内、六人は優秀なメタルブレイザーの装着者となった。
現在は『精鋭部隊』というチーム名で世界を回っている。
六人の内一人は、あの結花の娘だった。
名前は "嘉堂姫花"。
結花は結婚して、姓が「嘉堂」となった。
結花ほどではないが、姫花もかなりの実力者であった。
歳を取った結花は引退し、プロトメタルブレイザーは姫花へと受け継がれた。
結花は女優業を始めて、別でまた有名人となっていた。
現在もメタルブレイザーたちは世界の人々を守り続けている。
『鉄衣学園』の方でも、優秀なメタルブレイザー装着者を育て続けていた。
そして、もう一つ大切なことがあった。
結花は二児の母であった。
長女の姫花の他に、長男も生んでいた。
「うわ、でっけぇー・・・。」
一人の男が『鉄衣学園』の校門前に立っていた。
男は自衛官のような地味な色の服装をしており、帽子を深く被っていた。
背中には大きめのショルダーバッグを背負っている。
男はしばらく校門の外でキョロキョロしていると、中から門衛と思わしき女性が出てきた。
「あの、すみません。 不審な行動をされると警察を呼ぶことになりますよ?」
門衛の女性は男を注意してきた。
「あっ、すみません。 実物を見たのは初めてだったので、つい・・・。」
男は門衛に気付くと、慌てて弁解した。
そして、ポケットの中から一枚の紙を取り出して、それを門衛に差し出した。
「実は私、コレでして・・・。」
門衛は紙を受け取ると、紙に書かれた文章を読み始めた。
数十秒後、読み終わった門衛は紙を男に返した。
「申し訳ございませんでした。 最近学園の前で眺めている不審者が多くて困っていまして・・・。」
「いえ、私のおかしな行動がそもそもの原因でしたから。」
男は軽く笑いながら言った。
「今すぐ学園の方に連絡をいたしますので、もうしばらくお待ちください。」
そう言うと門衛の女性は急ぎ足で門衛所の中へ入った。
しばらくして、一人の高齢の女性教員が門まで歩いてきた。
「お待ちしておりました、 嘉堂剣勇 様。 『鉄衣学園』へようこそ。」
そう、この男こそがプロトメタルブレイザーの初代装着者だった英雄・結花の息子であり、現最強のメタルブレイザー装着者である姫花の実弟。
"嘉堂剣勇(27)"。
彼はなんと、男なのに唯一メタルブレイザーを操縦できる人物なのだ。
そして今日から、この学園の「第一小隊」の指揮官となるのだった。




