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メタルブレイザー -鋼鉄の戦乙女たち-  作者: サムライドラゴン
明日香 編
33/33

31.第6話「剣勇 と 明日香」(3)


 坂の下へと転がっていった明日香を発見した愛海。

 後から澪、クラリス、唯織もやってきた。


 四人はどうするべきか慌てた様子を見せたが、まず唯織は助けを呼ぶためにメタルブレイザーを使って空を飛んで行った。

 そして残った三人は明日香を山道の一番下まで運んで救助が来るのを待つことにした。


 その最中に何回か飯田先生が安否の通信をしてきていた。

 しかし生徒たちには通話ができる機能が付いていないため受け答えができなかった。

 当然明日香のことも報告ができていない。


 今は唯織が帰ってくるのを待つだけ。




 数十分後ほど経って救急車がやってきた。

 救急車には唯織と一人の警備隊の隊員も乗っており、二人とも車から降りてきた。

 そして担架(たんか)を救急車から降ろす手伝いをして、その上に明日香を乗せた。


 メタルブレイザーの兜を外して素顔を現し、髪留めを外す。

 そしてそのまま担架を再び救急車に乗せて、救急車は病院を目指して発進した。

 唯織と警備隊隊員をその場に残して。


 救急車はヤミガタがいないルートを通って走っていくので安全である。


「他の皆は怪我とか大丈夫か?」


 警備隊隊員が澪たちの方を向く。

 聞き覚えのある声だった。

 身に(まと)っているガーディアンの首には青いマフラーを巻いている。


「だ、大丈夫です・・・。」


 愛海が元気のない返事をする。

 明日香の件で元気をなくしてしまったようだ。


 すると警備隊隊員が澪とクラリスの前に移動する。


「君たちとは自己紹介がまだだったね。 俺は"如月凡人"。 剣勇の友達だ。」


 警備隊隊員は凡人だった。


「チーフの友達?」


 「剣勇の友人」というワードを聞いて興味が出る澪。

 いつもなら色々聞くところだが、今は明日香のことが気になるためかそれ以上聞こうとはしなかった。


「剣勇から指示を預かっている。 『今日はもう帰還をしてくれ』だとよ。」


 凡人は四人を順番に見ながら話す。

 それを聞いた四人は一斉に「え!?」という声を上げた。


「ど、どうしてですか・・・!?」

「今の君たちは明日香ちゃんのことが気になっていて集中力が下がっているのだろう?」


 凡人の言葉に対して、四人はなにも言い返せなかった。

 事実、四人は明日香のことが心配で気になっていた。

 ヤミガタ相手にやられることはないだろうが、全力で戦うことはできないだろう。


「俺がヘリコプターの着陸地点まで案内する。 ついてきてくれ。」


 そう言って凡人は歩き出した。

 生徒四人は「はい。」と言いながら彼について行く。



 すると、歩きながら凡人は喋り出した。


「ところで、明日香ちゃんはどうしてああなったの?」


 凡人は前を向いた状態で四人に聞く。

 四人は互いに顔を見合わせるが、数秒間ほど沈黙が続いた後に代表して唯織が説明をし出した。

 剣勇を見送った後、うっかり明日香がヤミガタに襲われてしまったことを。


 唯織の話を黙って聞き続ける凡人。

 説明が終わり、数秒間の沈黙が続いた後に凡人が喋り出す。


「念のため、後であの周辺を調査しておくよ。 その男性の行方も気になるしね。」


 優しい声で話す凡人。

 彼は周囲を見回しながら四人を誘導し続けた。



 数十分後、ヘリコプターがやってくる予定の場所へと到着した。

 そこには見知った灰色の装甲に身を包んだ男が立っていた。

 剣勇である。


「隊長・・・。」


 愛海が真っ先に剣勇を発見して呟く。

 他の三人も剣勇に目を向けた。


 一方で剣勇は足早に四人の元へ寄ってきた。


「お前ら、怪我はないか?」


 剣勇は四人の生徒を順番に見ながら聞く。

 声の感じから、少々焦っているようだ。


 剣勇の質問に対して唯織が「大丈夫です・・・。」とやや元気がない声で答える。

 それに賛同するかのように他の三人も頷いた。

 そしてそれを聞いた剣勇は「そうか。」と一言述べた。


 すると、澪は剣勇に近付いた。


「チーフ、ごめんなさい。 アタシたち、油断しちゃってた・・・。」


 澪は頭を下げながら剣勇に言う。

 他の三人も項垂(うなだ)れていた。

 そんな生徒たちを見て剣勇は喋る。


「後は俺たちに任せて、お前らはゆっくり休んでくれ。」


 剣勇は澪の頭を ポンッ と叩くと、その場から去って行った。

 緊急でここに来ただけで、彼にはまだ仕事が残っているからだ。

 剣勇と入れ替わるように凡人が澪に近付く。


「そろそろヘリが来るから、もう少し待っててね。」


 そう言うと真後ろに振り返って周囲を警戒する。

 澪はゆっくりと頭を戻した。

 愛海は去っていく剣勇を眺める。

 クラリスは天を仰ぐ。

 唯織は(うつむ)いていた。



 ふと、遠くで先程の光景を見守っていた者たちがいた。

 凡人の部下で「第五部隊」の隊員である友人の美穂と大和と一八だ。

 その中で大和は不思議そうな顔をしていた。


「珍しいですね。 剣勇さんなら『お前らは悪くない。 俺の責任だ』的なことを言いそうなのに。」


 大和は美穂と一八を交互に見ながら発言した。

 すると奥の方から一人のガーディアンが歩いてきた。

 副隊長の慎二だ。


「いや、剣勇の性格を考えるとそれはないだろうな。 あそこで庇ってしまったら『第一小隊を信じた自分のせい』ということになってしまうからだよ。」


 慎二は仲間たちに並ぶように真横に立った。


「剣勇は彼女たちを信じたことをミスだとは思いたくないんだよ。」


 慎二は去っていく剣勇の背中を眺めながら語る。

 その話を聞いていた三人の仲間も同じく剣勇を見送った。




 数分後にヘリコプターが到着し、「第一小隊」は素直に学園へと帰って行った。

 学園に着くと飯田先生が出迎えてくれていた。


「おつかれさま。」


 飯田先生は優しい口調で皆に言う。

 そんな飯田先生を見て、兜を外した澪は思わず涙目になっていた。


「す、すみません・・・、アタシたち・・・。」


 澪は泣きそうになりながら飯田先生に謝ろうとしていた。

 しかし言葉を言い終える前に飯田先生は澪の頭を抱きしめた。


「なにも言わなくていいわ。 今日はもう(りょう)に戻って休んでちょうだい。」


 飯田先生はまるでお母さんのように優しい口調で大切な生徒たちにそう述べた。

 生徒たちは元気のない「はい・・・。」という返事をして、メタルブレイザーを脱ぐために訓練場へ歩いて行った。




 寮に戻ってから澪は制服のまま部屋のベッドにうつ伏せの状態で乗り、枕に顔を埋めた。


「澪、先にシャワーを浴びて服を着替えてから横になりなよ。」

「・・・。」


 ルームメイトの(めぐみ)の忠告を無視する澪。

 彼女は体を全く動かそうとしない。

 いつもの元気っぽさを全く感じさせなかった。


 愛はうつ伏せで寝る澪を黙って見つめるだけだった。


 明日香が病院に運ばれたことはまだ知らされていないが、澪が元気じゃない時は「ナニカあった」時だけなので愛はそれを察してあまり叱ろうとはしなかった。




 元気じゃないのは澪だけではなかった。

 愛海、唯織、クラリスはシャワーを浴びていた。


「ミオッチ、大丈夫かな・・・。」


 クラリスは体を洗いながら他の二人に聞こえるように呟く。

 実は澪だけはシャワーを浴びずに真っ直ぐ寮へ戻ってしまったのだ。

 それほど他の仲間よりショックが大きいのだろう。


「明日香ちゃんと一番仲が良かったのは澪ちゃんだもんね・・・。」


 髪を洗い終わった唯織が今度は体を洗いながら喋る。

 真横は境目で見えないが、クラリスは静かに頷いた。

 二人は俯きながら体を洗っている。


「思えばワタシたち、明日香とは特訓や任務でしか会わないわよね。」


 すると今度は愛海が喋り出す。

 自慢の黒くて長い髪を丁寧に洗っているため、他の二人よりやや遅い。


 愛海の言葉を聞いてハッとする唯織とクラリス。

 チームメイトであるハズの彼女のことをあまり分かっていないことに改めて気付くのだった。


「チームメイト失格、ということかな・・・。」


 クラリスはらしくない程ネガティブな言葉を吐いた。

 しかしそれを訂正しようとするモノは誰もいなかった。




 場面は変わって学園の廊下。

 そこでは飯田先生、つまり聡美がどこかへ向かおうと歩いていた。


 すると前方から一人の女生徒が近付いてきた。


「飯田先生!」


 その女生徒は澪だった。

 澪は聡美に駆け寄る。


「先生、アタシを明日香ちゃんがいる病院に行かせてください!」


 澪はそう言い放つ。

 聡美は目を丸くするが、やがて微笑(ほほえ)んだ。


「よかった、ちょうど知らせに行こうと思ってたのよ。」


 聡美のその言葉を聞いて澪は「へ?」と間の抜けたような声を出した。






 それから数時間が経った。


 明日香がいる病院へとやってきた者が二人。

 剣勇と澪だ。


「ありがとね、チーフ。 連れてきてくれて。」


 澪が剣勇に笑顔を見せながら感謝の言葉を送る。


「いや、こちらこそ助かった。 こういうお見舞いには学校関係者よりも友達が行く方が明日香は喜ぶだろうからな。」


 剣勇はお見舞い用の果物が入った(かご)を持ちながら澪と話す。

 ヤミガタの駆除を一通り終わらせた後で疲労を感じながらも、明日香のことを想って動いていた。


「でも良かった。 明日香ちゃんが無事で。」


 澪はニコニコと笑みを浮かべながら嬉しそうに歩む。

 それを見て剣勇も微笑んだ。


 先程聡美から澪に知らせが届いた。

 それは明日香が目を覚ましたというニュースだった。

 そして剣勇がお見舞いに行こうとしていたため、澪もついてきたということである。



 病院に入って明日香がいる病室に行こうとする二人。

 しかしそこへ一人の女性が現れた。


「あっ、明日香ちゃんママ!」

「えっ?」


 剣勇と澪の前に現れたのは明日香の母親だった。






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