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メタルブレイザー -鋼鉄の戦乙女たち-  作者: サムライドラゴン
愛海 編
29/33

27.第5話「嘉堂 と 日鷹」(4/5)


 時刻はすっかり夜中。

 剣勇が入院している病院から歩いて「鉄衣学園」へと帰って来た愛海と聡美。

 聡美は愛海を学生寮へ送り、自分も帰宅するために一度職員室へ向かった。



 寮に戻った愛海は寮長さんに挨拶をして、自分の寝室へ向かうために廊下を歩いていた。

 すると、向こうから歩いてくる女子生徒がいた。


「ま〜なみ!」


 その女子生徒は愛海に手のひらを見せながら名前を呼ぶ。

 片目を(つぶ)ってウィンクをしていた。


彩春(いろは)。」


 愛海は若干驚いていた。


 彼女は愛海の親友である"仙石(せんごく)彩春(いろは)"。

 彼女も当然メタルブレイザーの装着者だが、まだ実戦投入可能なレベルには到達していない。


「実は澪ちゃんに今日のことを教えられてね。 でも、その顔を見た感じ、特に問題は無かったようね。


 彩春は「ニヒヒヒ」と笑う。


「澪が?」

「本当なら内密の話だったみたいだけど、『愛海の親友である私には知る権利がある』って言って澪ちゃんが教えてくれてね。」


 彩春は説明をする。

 それを聞いた愛海は一度軽くため息を吐き、微笑んだ。


「どうせまた、あの自分勝手なお祖父(じい)さんに『ナニカ』言われたことが原因で暴走したんでしょ?」


 彩春は愛海に聞く。

 「お祖父さん」とは拳士郎のことである。


 愛海は今更嘘をつくのもアレだと思ったので、正直に無言で(うなず)いた。


 そんな愛海の姿を見た後、彩春は腕を組んで考え出す。

 そして、やがて言葉を発した。


「やっぱ一発ぶっ飛ばしておくか?」

「冗談でもやらないでよね・・・。」


 彩春の冗談に返答する愛海。

 そんな愛海を見て彩春は「ニヒヒヒ」と笑った。



 だが、少し間を置いて愛海は真剣な顔で話し出した。


「ワタシ、今度の休日に実家に帰るわ。 今日のことで色々決心がついたわ。」


 愛海は彩春を見ながらそう真剣な表情で宣言した。

 さすがに彩春もニヤけ顔をやめていた。






 それから数日が経った。

 学校は休日で、愛海は宣言通り実家に帰っていた。


 サイラスとの剣の特訓を終え、愛海は顔をタオルで拭いていた。


 するとそこへ拳士郎がやってきた。


「終わったようだな。」


 拳士郎は特訓が終わったことを確認し、道場へ入って来た。

 愛海はそれを確認するとタオルを一度置いて、道場の中央辺りに正座で座る。

 それを見た拳士郎も道場の中央を目指す。


 するとそこへ・・・。


「あ、あの、お義父(とう)さん・・・。」


 一人の男性が姿を現した。

 愛海の父である"日鷹剣三(けんぞう)"である。

 剣三は婿養子のため、苗字が日鷹となっている。


「お父様・・・。」

「剣三くん、今は取り込んでいる。 後にしてはくれないか?」


 拳士郎は威圧感がある優しい声色で剣三に言う。

 しかし剣三は喋る。


「い、いえ・・・、私も同行させてください。」


 剣三は額に汗をかきながらも、拳士郎に意見する。

 すると拳士郎はしばらく黙って剣三を見つめると、やがて「いいだろう。」と一言述べて、愛海に胡座(あぐら)で座る。

 それを聞いて剣三は愛海の隣へ移動し、床に正座で座った。



 少しだけ静かな時間が訪れ、そして去っていく。


「さて愛海よ、わざわざ短期間で戻って来たからには『ナニカ』良い知らせでも持って来たのだろうな?」


 拳士郎はあえて愛海を挑発するように言う。

 言葉一つ一つに重みを感じ、常人ならそれだけで参ってしまいそうである。


 しかし愛海は一切恐怖感などを抱かずに、真っ直ぐ拳士郎を見つめた。


「ワタシ、日鷹愛海は、再び学園最強のメタルブレイザー装着者の座に君臨するまで、この日鷹家の門をくぐることを固く禁じることをここに宣言します!」


 愛海は拳士郎に向かって大声で言い放った。


 隣で見ていた剣三は驚きを隠せない表情で愛海を見ており、そして拳士郎は興味深そうな顔で愛海を見る。


「ほう、これは予想外だな。」


 拳士郎は笑みを浮かべながら愛海を見ている。

 しかし剣三は慌てていた。


「愛海、一体なにを言っているのだ!?」


 剣三は思わず愛海に触れてしまいそうなくらい慌てている。

 すると今度は剣三の方を見る愛海。


「申し訳ございません、お父様。 しかし、ここ最近で学んだのです。 生半可な覚悟では、いつまで経っても強くなれないことを。」


 話を一度止めて、今度は拳士郎の方を向く愛海。


「ですから、これはワタシの覚悟だと受け取ってください。」


 愛海は真剣な顔で拳士郎を見つめる。

 拳士郎は表情を一切変えてはいないが、愛海の言葉を一言一句聞き漏らさなかった。


「フッ、そうか、どうやら本気で強くなろうとしていることは伝わった。」


 拳士郎はそう言うと立ち上がり、愛海を見下ろす。

 同時に愛海も拳士郎の顔を見上げた。


「だが、果たして帰ってこられるのは"いつ"になるのだろうな。」


 拳士郎は笑いながら話を続ける。


「あんな血縁関係のみで成り上がった軟弱男すらも超えられないお前が・・・。」


「隊長を、隊長をバカにするなぁ!!!」


 拳士郎の話が終わる前に、愛海は突如立ち上がって拳士郎に対して怒鳴った。


 拳士郎は剣勇の名こそ言わなかったが、愛海には分かっていた。

 拳士郎が剣勇の悪口を言っていることを。


 怒鳴られた拳士郎は愛海を(にら)む。

 その光景を見ていた剣三は恐ろしいモノを目の当たりにしているかの如く、怯えていた。


「な、なんということを・・・。」


 剣三は思わず呟く。


 拳士郎に怒鳴るという行為は、彼の恐ろしさを知っている人物なら絶対にやらないであろうことだ。

 しかし愛海はやってしまった。

 しかもタメ口で。


 拳士郎は表情を一切変えずに愛海を睨んでいる。


「愛海、誰に向かって怒鳴ったのか分かっているのか?」


 意味深に静かな声で愛海に言う。

 しかし愛海はすぐに答えた。


「あなたにですよ、日鷹拳士郎お祖父様。」


 愛海はハッキリと言った。

 彼女には拳士郎の恐ろしさよりも、尊敬する剣勇を(けな)された怒りの方が(まさ)った。


 愛海は剣勇が貶され続けるのを黙って見ているくらいなら死んだ方がマシだと考え、この行動に出てしまった。

 その証拠に身体は全く震えておらず、純粋な怒りを拳士郎に向けていることが分かる。



 拳士郎は愛海の返答を聞いて表情を変えた。


「くっ、ハッハッハッハッハッ!!」


 拳士郎は天井に向かって笑い声を飛ばしている。

 声は道場全体に響き渡るくらいに大きかった。


 剣三は愛海と拳士郎を交互に見ている。


「そうか、お前如きが我に対して怒鳴るか。」


 そう言うと、愛海のそばに近寄った。


 それを見て止めに入ろうとする剣三だったが、それより前に拳士郎が次の行動に移った。


「気に入った。 人間で我に立ち向かうことができるモノはもう既にいないと思っていたが、意外なところから現れやがったな。」


 拳士郎はそう言うと愛海の肩を一度軽く叩くと、そのまま背を向けた。


「良いだろう、お前の好きなようにするがいい。 何十年経とうが待っててやる。」


 拳士郎は背中で愛海に語った。

 愛海はその言葉を聞いた後、荷物を持って黙って道場を出て行った。



 残されたのは背中を見せる拳士郎と慌てている剣三だけだった。

 剣三はなにかしら拳士郎に声をかけようとするが、言葉が見つからないでいた。


 だが、先に拳士郎が言葉を発した。


「最後に怒鳴られたのは、亡くなった妻に串カツの二度漬けを注意された時だったな。」


 拳士郎は微笑みながら昔話を呟いていた。

 剣三はどう言えば良いのか分からず、「え、えっと・・・。」という言葉ばかりを言っていた。


 すると拳士郎は剣三の方を向く。


「楽しみが増えたわい。」


 拳士郎は笑みを浮かべながら一言そう述べた。

 そして道場を後にする。


 広い道場に剣三一人が取り残されてしまった。






 それから数時間後。

 荷物を持って、愛海は学校へ戻ろうとしていた。


「もっとゆっくりしていけばいいのに。」


 剣三は愛海の見送りをしていた。


「一分一秒でも良いから早く前に進みたいのです。 いつか目標に到達できるように。」


 愛海は微笑みながらそう言い放つ。


「突然でごめんなさい、お父様。 心配をかけてしまうかもしれませんが、ワタシは元気で戦い続けます。」


 愛海はそう言いながら剣三に抱きつく。

 剣三もそんな愛海を優しく抱きしめる。


「家の外ならいつでも会えるだろうし、そんな大袈裟(おおげさ)(とら)えなくていいよ。 でも、愛海のために私も会うのを我慢することにしたよ。」


 剣三はそう言いながら離れた愛海の両肩に手を置く。

 そして視線を合わせた。


「愛海が帰ってくるのを、心から楽しみに待っているね。」


 剣三は愛海に笑顔を見せて、愛海も「はい!」と笑顔で答えた。


 そして愛海は荷物を持って「鉄衣学園」を目指して歩み出した。

 次はいつ通ることができるか分からない日鷹家の門を通り、外へ出て行った。



 すると、壁に寄りかかって愛海を待っている女の子がいた。


「よう、愛海。」

「彩春!」


 愛海を待っていたのは親友の彩春だった。


「わざわざ来てくれたの?」

「親友が大きく成長する"記念すべき第一歩"を最初に見たくてね。」


 そう言いながら愛海に近づく彩春。


「そっちの荷物持つよ。 貸して。」

「ありがとう。」


 彩春は愛海が持っていたたくさんの荷物の内、何個か持った。

 そして愛海と彩春は共に「鉄衣学園」を目指して歩き出すのだった。






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