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メタルブレイザー -鋼鉄の戦乙女たち-  作者: サムライドラゴン
愛海 編
28/33

26.第5話「嘉堂 と 日鷹」(3/5)


 剣勇の病室に、剣勇の姉である現在最強のメタルブレイザー装着者"嘉堂(かどう)姫花(ひめか)"が入って来た。


「姉ちゃん、どうしてここに・・・!?」


 剣勇は驚いていた。

 すると姫花は腰に手を当てながらニヤッと笑う。


「どうしてもなにも、可愛い弟が怪我をして入院したと聞いたら()けつけるに決まってるでしょ。」


 姫花はニヤニヤしながら答えた。

 だが剣勇は片手で頭を押さえながら首を振って、全く信用してない。


「どうせ俺の入院を口実に日本へ戻ってきただけだろ…?」


 剣勇は呆れたような様子だった。


 現在姫花が所属している「精鋭部隊」は海外でヤミガタを駆除し周っている。

 海外にもメタルブレイザー装着者はいるが、やはり「精鋭部隊」は桁違いの実力者集団なので引っ張り(だこ)なのである。


「四分の一は本当で、半分はそれで正解。」


 姫花はケラケラ笑いながら答える。

 そんな姉の姿を見てため息を吐く剣勇。


 残りはなんなのかは不明だが、とくになにも聞こうとはしない剣勇だった。


「まあ機嫌を直してよ。 お土産のアメリカの漫画をあげるからさ。」


 姫花はそう言いながら剣勇が座っているベッドの上に数冊のアメリカン・コミックスを置いた。


 すると、姫花は近くにいた愛海に視線を向ける。


「ところで剣勇、この子は?」


 姫花に興味を持たれて緊張している愛海。

 分かりやすく慌てていた。


「俺が教育してる『第一小隊』の愛海だ。」


 剣勇は姫花から貰ったアメリカン・コミックスを机の上に置きながら紹介した。

 それを聞いた姫花は「あー!」と発する。


「なるほど、噂の『第一小隊』ね。」


 当然ながら「精鋭部隊」にも情報は入っている。

 海外にいた姫花も「第一小隊」のことは知っていた。


「あ、あの・・・、は、初めまして、日鷹愛海と申します・・・!!」


 愛海は緊張しながら自己紹介をする。

 目の前には憧れの嘉堂姫花がいるので、無理もない。


「よろしく、私は・・・って自己紹介しなくても知ってるか。」


 姫花は笑いながらそう言うと、手を前に差し出した。

 愛海は若干戸惑いながらも、無事に姫花と握手をすることができた。


「で、優。 アンタもしなよ。」


 姫花は、先程から剣勇の怪我をしている脚を撫でている"優"と呼ばれた女性に命令する。


「おっと、そうだね。」


 優は脚を撫でるのをやめて立ち上がり、愛海に近付くと手を差し出す。


「私は"次藤(じとう)(ゆう)"。 知ってるかな?」

「はい、"最速のメタルブレイザー"である次藤優さんですよね。」


 愛海は確認しながら優とも握手をする。

 優はその言葉を肯定するように微笑んだ。



 握手を終えるのを確認し、剣勇は喋り出す。


「愛海はいずれ姉ちゃんを超えるメタルブレイザー装着者となる存在だ。 覚えていてくれ。」


 剣勇は愛海と姫花を交互に見ながら言う。

 それを聞いた姫花は「ほう。」と言葉を漏らす。


「えっ!? あ、えっと、その・・・。」


 愛海はとても慌てていた。

 しかしそんな愛海を見て姫花は笑う。


「実に楽しみだ。 思う存分超えて、世界を救ってくれ!」


 姫花は愛海の肩を二回ほど叩きながら発言する。

 愛海は思わず顔を赤くしながら「は、はい・・・。」と答えた。




「じゃあ剣勇が無事だったことも確認したし、ちょっと寄り道しながら戻りますか。」


 姫花は腰に手を当てながらそう言う。


「よし、じゃあ帰るぞ優。」


 さりげなく剣勇の隣に座っている優に言う姫花。

 すると優は横から剣勇の首に手を回す。


「やだ、まだ剣勇くんといる・・・。」


 しかし優は不満そうだった。

 密着されている剣勇はさりげなく照れていた。

 顔には出てないが、仕草から分かる。


「27にもなって子供みたいなことを言うんじゃないよ。」


 姫花は軽くコツンと優の頭を叩くと、その反動で優は剣勇の首から手を離す。

 その隙に姫花は優の服の(えり)を掴んで引っ張った。


 引き離された優は「シュン…」という感じで落ち込み、仕方なく指示に従うことにした。


「またね剣勇、あんま無理はしないでよね。」


 姫花はそう言いながら病室を出て行こうとする。


「そういえば、その格好で出歩いてて大丈夫なのか?」


 剣勇は気になっていたことを聞く。


 「精鋭部隊」は有名人なので、注目されやすい。

 間違いなくファンなどが()くだろう。


 しかも今の姫花と優の格好は、仕事中に普段着ている制服姿である。


「コートやサングラスを身につけて来たから大丈夫。 今は聡美に持っててもらってる。」


 姫花はそう言うと、手を振りながら病室を出て行った。


「またすぐ会いに来るから、待ってて・・・!」


 そう言いながら優は名残惜しそうに病室を出て行った。



 二人が病室を出て行くと、すっかり病室は静かになった。


「すまなかったな愛海、色々騒がしくなってしまってさ。」

「いえ、全然・・・。 むしろ、とても嬉しかったです。」


 愛海は微笑む。

 それを見て剣勇は「そうか。」と言った。






 姫花たちが帰って、再び二人だけになる剣勇と愛海。


「そういや姉ちゃんが来て思い出したが、俺にも愛海みたいな時期があったんだ。」

「え?」


 突然剣勇が自分のことを愛海に話し始めた。


「昔な、姉ちゃんに生身で戦闘訓練を教えられていた時期があってな。 いつも俺は姉ちゃんに勝てなくて、ボロ負けして泣いていたんだ。」


 剣勇は照れくさそうに昔話を話す。

 それに対し愛海は黙って真剣に聞いていた。


「そんなある日、俺は姉ちゃんにどうしても勝ちたくてあることを思いついたんだ。 それは作動させると上から丸太が落ちてくる仕掛けを作り、それで姉ちゃんを倒すという作戦さ。」


 一度間を置いて、再び語り始める剣勇。


「作戦は成功して見事姉ちゃんを倒すことができたが、知っての通り姉ちゃんは大怪我を負ってしまって病院に運ばれたさ。 それを見て、俺は初めて自分のしたことの重大さに気付いたんだ。」


 そう言うと剣勇は頬を指す。


「姉ちゃんを寵愛(ちょうあい)していた親父に、(あざ)ができるほど本気で殴られたよ。 今でもあの痛みは忘れない。 だがそれ以上に姉ちゃんの安否が心配で泣いたさ。」


 再び間を置く剣勇。


「数日後、姉ちゃんは無事意識を取り戻して俺はギャンギャン泣きながら何度も謝ったさよ。 だがそんな俺を姉ちゃんは撫でて慰めてくれたんだ。」


 剣勇は天井を見上げた。


「しかもよ、姉ちゃんは俺に注意するどころか『なかなか良い攻撃だった。』と作戦を評価してくれたんだ。 その時からだよ、俺が『姉ちゃんには一生(かな)わないな。』と思ったのはさ。」


 剣勇は苦笑しながら語る。


「これが俺の失敗談さ。」


 今度は愛海の目を見る剣勇。


「こんな失敗をした俺だが、今こうしてお前たちの教官をやれている。 だから愛海も、一度の失敗で将来を諦めたりしないでくれよ。」


 微笑みながら剣勇はそう愛海に言葉を送った。

 話を真面目に聞いていた愛海は少しだけ反応に遅れたが、剣勇の目を見ながら『はい!」と一言返事をした。



 すると突然、愛海はあくびをした。

 一瞬口を大きく開けたが、あくびを止めようと必死に口を閉じる愛海。


 そんな愛海を見て「フッ」と笑う剣勇だった。


「すまない、夜遅くなのに長く話し込んでしまったな。」

「す、すみません・・・。」


 思わず顔を赤くする愛海を見て笑う剣勇。


「まあ言いたいとこは全て言ったし、もう今日はこの辺りにしよう。」


 そう言うと剣勇は近くにあった松葉杖を使って立ち上がろうとする。


「これからも頑張ろうな、愛海。」


 剣勇はそう言いながら病室の扉に近づく。

 そんな剣勇の背中を見て「はい!」と元気よく返事をしながらついていく愛海。


 剣勇に追いついた愛海は代わりに扉を開く。

 すると目の前には聡美が立っていた。


「あとは私が日鷹さんを送るから、剣勇は無理せず寝てて。」


 聡美は剣勇に気を(つか)った。


「よろしくお願いします。


 剣勇は素直に従った。

 愛海と聡美を見送り、剣勇は病室に戻って行った。




 病院を後にして、学校へ戻ろうとする二人。


「そういえば、先に来ていた人が誰か思い出したわ。」


 「先に来ていた人」とは、自分たちより先に見舞いに来ていた人たちのことだ。


「『国防警備隊』の第二部隊の人たちだわ。 日鷹さんたちも今日デパートの戦いで会ったでしょ?」

「え、えーと、あっ! あの人たちでしたか。」


 「第一小隊」と共にデパートでのヤミガタ駆除を行なっていた警備隊こそが、聡美が言った「『国防警備隊』の第二部隊」なのであった。


「あそこの隊長さん、確かやけに剣勇を気に入ってた覚えがあったわね。 だからお見舞いに来てたのかしら。」


 聡美はそう語る。

 すると愛海は先程の姫花たちとのことを思い出しながら、とあることを聡美に聞く。


「剣勇隊長って、モテてるのですね。」


 ふと、そう聞く愛海。

 先程の優の態度を見て察したのだろう。


「昔から日本を守り続けているから、むしろモテない方がおかしいからね。」


 聡美はそう返答した。

 どうやら剣勇は実際モテているようだ。


 愛海は先程剣勇にかけてもらった言葉などを思い返していた。

 すると自然と頬が緩み始めた。


「ワタシは、隊長がモテている理由はそれだけではないと思います。」


 愛海はそう聡美に話す。

 聡美が愛海を見ると、どことなく顔が赤い気がした。


「あなた、まさか・・・。」


 聡美はとある考えが浮かび、思わず口に出そうになった。

 しかし聡美の言葉を聞いた愛海は「なんですか?」と聞く。


 そんな愛海を見て、聡美は続く言葉を飲み込んだ。


「いえ、なんでもないわ。」


 聡美を見ながら不思議がる愛海。

 そんな二人は月が輝く夜空を眺めながら帰路を歩んで行った。






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