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メタルブレイザー -鋼鉄の戦乙女たち-  作者: サムライドラゴン
澪 編
20/33

18.第3話「剣勇 と 澪」(6/6)


 とある日。

 「鉄衣学園」にて、剣勇が「第一小隊」を特訓していた。


 剣勇はメタルブレイザーを装着しており、同じくメタルブレイザーを装着している澪を相手にしている。

 遠くではメタルブレイザーの兜部分だけを外して休憩している他四人のメンバーが座って見守っていた。


 特訓内容は「捕まらないように横を抜ける」というモノだった。

 剣勇に捕まらないように、剣勇の横を走り抜ければ成功だ。


 ここまで三回ほど澪は捕まっていた。

 その姿は飼い主に持ち上げられる子犬のような姿だった。


 そして今は四度目のチャレンジの直前だった。



 剣勇は少しも動こうとはせず、澪の出方を見ている。

 メタルブレイザーを着た状態でのその姿はまるで特撮ヒーローの等身大の置物のようであった。

 澪はそんな剣勇の周囲を目だけを動かして観察していた。


 そして数十秒後、澪は動き出した。

 運動神経がいい澪の走りは速く、すぐに剣勇に接近した。


 澪は剣勇の横を通り過ぎようとする。

 当然剣勇は澪を捕まえようと動く。


 その時だった。

 澪は剣勇の腕から逃れるように体を倒そうとする。

 そしてそのまま地面を滑って行った。

 「スライディング」だ。



 澪はスライディングで滑って行き、止まりそうになる前に腕などを使ってすぐに立ち上がる。

 そして剣勇から離れるために走り出した︎。


 剣勇は走り去って行く澪を眺めており、追いかけようとはしなかった。

 澪は剣勇が追いかけてないことに気付かず、数十メートル離れた場所まで走って行った。

 そんな澪の姿を見て、剣勇や愛海たちは微笑んでいた。




 数十メートル先から戻ってきた澪は、兜を取って剣勇に近づく。


「チーフ、チーフ! どうだった?」


 澪は早く評価を聞きたそうにしている。

 それもそのハズ。

 明らかに合格していたからだ。


「ああ、知っての通り『合格』だ。 よくやった。」


 剣勇はメタルブレイザーの鋭い爪で傷付けないように注意しながら、澪の頭に手を乗せた。

 そしてゆっくりと()で始める。

 撫でられた澪は満足そうな笑顔を見せた。



「澪ちゃん、すっかり隊長さんに懐いちゃったわね。」


 やや遠くで唯織が微笑みながら眺めていた。


「ジブンもツルギのこと好きですよ。」


 同じくやや遠くで眺めていたクラリスもそう発言した。

 それを聞いた唯織は「ワタクシも。」と言う。


 すると唯織とクラリスは愛海と明日香の方を向いた。

 彼女たちの意見も聞くつもりだ。


 明日香はしばらく考え込み、やがて口を開いた。


「ア、アスカは・・・、まだ分からない・・・。」


 明日香なりに頑張って答えた。

 その答えに対しては誰もなにも言わずに納得した。


 そして残りは愛海だけとなった。


「マナミーは・・・?」


 クラリスが愛海に聞く。

 「マナミー」とはクラリスが付けた愛海へのあだ名だ。


 愛海は顔色一つ変えずに黙り続けていた。

 彼女の凛々しい横顔を三人はしばらく眺める。

 だが、愛海はやがて喋り出した。


「まあ、良い人だとは思うわね。」


 愛海は素っ気ない態度でそう一言で答えた。


「えっと、それって・・・。」


 明日香が恐る恐る聞く。

 するとそれを聞いた愛海はゆっくりと話し出した。


「ここ数週間で、隊長は自分が嘉堂家の人間であることを鼻にかけてるような人ではないことは理解したわ。」


 愛海は表情を崩さず、真面目な口調だった。


 初期の頃に比べれば、剣勇に対しての態度がかなり柔らかくなっていた。

 これも共に戦ってきたことで得た信頼関係なのだろう。


 しかし、愛海はまだ剣勇に対して心を許しているような感じではなかった。






 訓練が終わり、放課後となった。

 女生徒たちは皆、各々が好きなことをしていた。


 自習する生徒もいれば、ベンチで話している生徒、購買部で食べ物を買う生徒。

 だが特に多いのは、身体を鍛えている生徒や、戦闘訓練を行っている生徒だった。


 これは本校が「鉄衣学園」、つまり"ヤミガタと戦うこと"を望んだ生徒たちだからだ。



 もちろん「鉄衣学園」に入学した全生徒の中には違う理由を持つ生徒も沢山いる。

 というか、むしろそちらの方が多かったりする。


 その理由については、また別の機会で話そう。




 今日も仕事を終えて帰宅しようとする剣勇。

 この後の予定は特になく、そのまま家で過ごすつもりだった。


 荷物を持って帰ろうと「指揮官室」から出る。


「チーフ!」


 すると、部屋の外では澪が待っていた。

 満面の笑みで手を上げながら剣勇を迎える。


 剣勇は少しビックリしており、若干呆然(ぼうぜん)としていた。



 澪は帰ろうとしている剣勇の隣で並びながら歩く。

 かなり身長差があり、澪は顔を上げて剣勇の横顔を眺めていた。


「そういえばあのスライディングって、もしかして『サッカー』からヒントを得たのか?」

「え? うん、そうだよ。」


 突然の剣勇の質問に少し反応が遅れていたが、質問内容を理解するとすぐに答えた澪だった。


「『サッカー』とかを公園でやっているのは、メタルブレイザーでの特訓の一部としてなのか?」

「ううん、普通に楽しいからやってるだけ。」


 次の質問にも素早く答える澪。

 腕を後ろで組みながら軽やかに歩いている。


「『色んなことが経験となって、"ナニカ"の役に立つハズだから』って、昔お父さんに言われてね。 アタシは少しでも興味があることはやる性格なんだ。」


 澪は楽しそうに話す。

 そんな澪を見て、剣勇は微笑む。


「良い親父さんだな。」

「うん。 もう亡くなっちゃってるけどね。」


 澪は軽くそう言ったため、思わず「え!?」という言葉を漏らす剣勇。

 突然の話に剣勇は衝撃を受けた。


「お父さんは警察官だったんだ。 昔ヤミガタから人々を守って殉職しちゃったんだって。」


 明るくもどこか寂しさを感じさせる声色で話す澪を、剣勇は眺めていた。


「もしかして、それでヤミガタへ復讐するために『鉄衣学園』へ・・・?」

「違うよ。」


 澪は微笑みながら剣勇を見る。

 そして再び話を続けた。


「アタシが『鉄衣学園』に入学したのは、お父さんのような"立派な人間"になりたかったから。 困っている人々を助け続けたお父さんを、アタシは誇りに思ってる。」


 一度喋り終えると、澪は満面の笑みを剣勇に見せる。

 そして再び喋り出す。


「ヤミガタの脅威から人々を救いたいから、アタシはこの『鉄衣学園』に入ったんだよ。」


 澪は終始剣勇の顔を見続けて話した。


 剣勇は澪の話を最初から最後までしっかりと聞いていた。

 だからこそ、なにも言えなかった。

 なぜなら、普段の澪からは想像もできないほど立派な考えを持っていたからだ。


 剣勇の中で、澪の印象が大きく変わった気がした。




 しばらくして、正門近くまでやってきた。

 当然澪もついて来ていた。


「じゃあ澪、また明日な。」

「うん、チーフ。 またね。」


 剣勇がそう言うと、澪は片手を上げようとする。

 しかしその前に剣勇の口が動いた。


「なあ澪。 正直に答えて欲しいんだが・・・。」

「ん?」


 突然の話に澪は首を(かし)げる。

 一方剣勇は少しだけ言うのを躊躇(ためら)っていたが、やがて口を開く。


「澪が俺に懐いてるのって、もしかして親父が関係してたり・・・?」

「違うよ。」


 即答だった。


「チーフはチーフで、お父さんじゃないでしょ?」


 澪はそう言うと、剣勇に笑顔を見せた。

 無邪気な笑みだった。


 剣勇はその笑顔を見て、自然と微笑み出す。

 そして澪の頭を撫でた。


 撫でられている澪はとても嬉しそうだった。






 剣勇はふと自室で寝転がりながら考え事をしていた。

 今日は飲みに誘われたりしてはいない。


 座布団を枕がわりにして、畳の上で寝ている。

 仰向けの状態で、目線は天井に向いていた。


「・・・。」


 剣勇は帰ろうとしていたときの澪との会話を思い出していた。

 澪が「鉄衣学園」に入学した理由のことを。


 剣勇は今まで澪を能天気(のうてんき)な女の子として見ていた。

 しかし事実は違った。

 澪はしっかりと自分の目標を決めており、人々を守る責任感を持っていた。

 普段の単純そうな彼女からはとても想像できないように。


 今後の澪を見る目が変わる気がする剣勇だった。


「ふぅ・・・。」


 剣勇はため息を吐くと、そのまま体を起こした。

 そして地に足をつけて立ち上がり、押し入れを開けるために近づく。

 押し入れに入れておいた衣服の中からテキトーに服とズボンを選び、それを取り出す。

 今まで着ていた緑色の地味な服は脱いだ後に洗面所にあるカゴに投げ入れた。

 そして押し入れから出した洋服に着替え始めた。




 剣勇は夜中に出かけ始めた。

 と言っても、夜食を用意し忘れたので近くのコンビニで買って済ませようとしているだけだが。



 コンビニに着くまでの時間、剣勇は今後のことを少し考えていた。

 「第一小隊」の教官でもあるので、今までは戦闘訓練などを行っているだけだった。

 しかし剣勇は「第一小隊」のことをもっと知りたいと思っている。

 そのためには戦闘訓練だけじゃ無理だと考えていた。


 だが、同時に彼女たちのプライベートに土足で踏み込むこともしたくはなかった。

 まさに難問だった。



 そんなことを考えている内に、コンビニへ着いてしまった。


 コンビニに入ると店員さんが「いらっしゃいませ!」と言って迎えてくれて、剣勇も軽く頭を下げて移動し始める。

 向かった先はコンビニ弁当などが置いてある場所であった。


 剣勇は中腰になって「なににしようか?」という感じで一つ一つ目で選んでいた。

 すると・・・。


「あら、剣勇くん?」


 剣勇は名前を呼ばれて、声の方を見た。

 そこにいたのはアパートの隣の部屋に住んでいる理奈だった。


「奇遇ね、こんなところで会うなんて。」


 理奈は微笑みながら話していた。

 しかし剣勇は若干慌てた様子を見せていた。


「御影さん、外ではあまり俺の名前を言わないでください。」


 剣勇は口止めのジェスチャーをしながら小声で理奈に言う。

 すると理奈も「あ。」と言いながら口を押さえた。


「ご、ごめんなさい。 つい、ウッカリ・・・。」

「まあ、わざとじゃないのですからいいですよ。」


 理奈は手を合わせながら謝罪をしていた。



 剣勇は有名人だが、実は素顔は一部の人たちにしか明かされておらず、世界中のほとんどの一般人は剣勇の顔を知らない。

 詳しい理由はいつか話すとして、とりあえず公共の場などで名前などを言うのは「NG」なのだ。




 剣勇はコンビニで弁当を買うと、理奈と共にコンビニを後にする。

 そして剣勇は「ある事」を理奈に相談していた。


「というわけで、生徒たちをもっと知るにはどうしたら良いかと思いましてね・・・。」


 「第一小隊」との仲を深めることを剣勇は理奈に相談した。

 理奈はしばらく黙り込むと、空を眺めながら考えだした。

 すると、やがて口を開いた。


「一緒にごはんを食べたりするのはどうでしょう?」


 理奈は人差し指を立てながら提案した。

 しばらく剣勇は黙っていたが、やがて口を開く。


「それはもう少し仲良くなってからにしたいですね。」


 剣勇は提案を否定はしなかったが、不採用の烙印(らくいん)は押した。

 理奈もそれは分かっており、すぐに別の案を考え出す。

 すると、意外と早く次の案が出たようだ。


「では、ここは王道なヤツから始めましょうか。」


 理奈は剣勇にそう言うと、その「提案」を説明し出すのだった。






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