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メタルブレイザー -鋼鉄の戦乙女たち-  作者: サムライドラゴン
澪 編
15/33

13.第3話「剣勇 と 澪」(1/6)


 次の日。


 剣勇は目を覚ました。

 若干ダルそうな体を起こし、布団から出た。


 カーテンを開け、外を見る。

 外は明るく、空は青い。

 普通の朝だ。


 剣勇はあくびをしながら洗面所の方へ向かった。

 洗面所で顔を洗い、軽くうがいもした。

 玄関へ向かいドアにある郵便受けから新聞を取り、再びリビングへ向かう。

 リビングにあるちゃぶ台に新聞紙を投げた。


 そのままキッチンへ向かい、朝食を作ることにした。

 と言っても、オーブントースターでパンを焼くだけだが。

 念のため言っておくと、剣勇は料理ができるのでご安心を。




 朝食を食べながらテレビを点けて新聞を読んでいると、あることに気が付いた。


(あ、今日は土曜だったな・・・。)


 剣勇はうっかりしていた。

 土曜日は学校が休みなのだ。


 『鉄衣学園』は普通の高校と同じで、土日が休みなのである。

 学校へ行ってもほとんど教員はいない。

 いるのは寮で暮らしている教員と生徒、入口にいる門衛くらいである。




 数時間後、剣勇は普段着で外を歩いていた。

 散歩ついでに自主的に見回りをしているのである。


 街は昨日のことが嘘のように、人々は普通に暮らしていた。

 数十年前から起こっていることなので、もはや慣れてしまっているのだ。

 ヤミガタがいなければ、いつもこのようになっている。


 午前8時を過ぎているため、街中に警備隊の隊員はいない。






 時刻は進み、午後3時。

 この時刻になるまで剣勇は、色々な場所に行って過ごしていた。

 本屋、ゲーム屋、レストランなどである。



 ふと、歩き続けていると公園に着いた。

 公園では子供たちが元気にサッカーをしていた。

 もちろん本格的なものではないが、彼らなりに一生懸命プレイをしていた。

 立ち止まって見ていた剣勇は、微笑ましく感じていた。


「ヘイヘイ、パース!!」


 しかし今の声を聞いた瞬間、剣勇の表情がガラリと変わった。

 なにか変な予感を感じ取ったのだ。


 公園の方を見ると、その予感は的中していることを理解した剣勇だった。

 公園でサッカーをしている男の子たち。

 その中で一人だけ背の高い人間がいた。

 小学生くらいの男の子たちに混ざってサッカーをしている女子高生・澪がそこにいた。


 ちょうど子供たちはサッカーを一旦やめて休憩しだした。

 すると澪は公園の外にいる剣勇と目が合った。

 澪は口を開けた笑顔を見せながら剣勇のもとへ近付いてきた。


「チーフ!」


 まるで子犬のようだった。


 澪の格好は当然制服ではなく、普通の服だった。

 ただ、白いTシャツとデニムの短パンというスポーティーな格好だった。


「お前、一体なにを・・・。」


 剣勇は戸惑っていた。

 突然のことで言葉に詰まっていた。


「近所の男の子とサッカーをしてるの。」

「いや、それは見て分かる。」


 剣勇と澪が話していると、後ろから男の子たちがやってきた。


「澪姉ちゃん、なにしてるの。」


 男の子たちは三人。

 皆おそらく小学生だろう。


「大丈夫、ちょっと待ってて。」


 澪がそう言うと、男子小学生たちは素直に公園へ戻って行った。

 小学生たちが公園へ戻ったことを確認すると、澪は再び剣勇の方を向いた。


「休みの日には、たまにこうして小学生たちと公園でサッカーをしてるの。」


 澪はニコニコと笑顔で答えた。

 剣勇は澪の顔を見ると、それ以上は特になにも聞こうとはせず、ただ納得した。


 澪は男子小学生たちのもとへ戻ろうと剣勇に背を向けたが、動く前に考え出した。

 そして約5秒後。

 澪は再び剣勇の方へ向いた。


「ねえ、よかったらチーフも見てく?」

「なんだと。」


 澪が笑顔で剣勇に聞いてきた。

 剣勇はしばらく澪の笑顔を眺めながら黙り込んだ。




 数十分後。


「たぁー!」


 澪のシュートが相手ゴールに決まった。

 他の男子小学生たちも中々に強く、女子高生である澪が相手でも同じくらい運動能力があった。

 そのおかげで澪も本気でボールを蹴飛ばして、シュートをしていた。


「やったー!!」


 澪が味方の小学生たちとハイタッチをしていた。

 ただ、澪と小学生では身長差があるため、澪は斜め下に向けてだったが。


 こうして見ると澪も年上のお姉さんっぽく見える、と公園のベンチに座っている剣勇は思った。

 もしくは澪が子供っぽいだけなのかもしれない、とも思っていた。

 いずれにせよ、澪は小学生などの幼い子に好かれるタイプであろう。



「あ、もう5時になる。」


 澪が公園の時計を指して皆に向かって言った。

 小学生たちも時計を見て「マジだ。」や「ホントだ。」などと言っていた。


 澪は地面に落ちているサッカーボールを拾って、一人の小学生にパスをした。

 そして小学生たちはそれぞれ「バイバイ。」と言って次々に公園を出て行った。

 公園に残っているのは、澪と剣勇のみとなった。

 澪はベンチに座っている剣勇のもとに近付いた。


「お前、意外とサッカーできるんだな。」

「うん、そうだよ。」


 澪は腰に手を当てて「えっへん。」とでも言いそうなポーズをして、その後剣勇の隣に座った。


「サッカーをやることでね、体力とかをあげてるの。」


 ニコニコしながら澪は話していた。


「つまり、サッカーを筋トレ代わりにして特訓しているということか?」

「うん、そう。」


 サッカーは体力は勿論、脚力や頭の回転、警戒心などもその気になれば鍛えられる。

 澪はそれに目をつけてサッカーをやるようになったということだ。

 剣勇の中で、澪への評価が変わった瞬間だった。


「・・・だが、どうして男子小学生を相手にしてるんだ?」


 剣勇がそう聞くと、澪は剣勇から視線を外して顔を逸らした。


「だって、中学生以上だとついて行けなさそうだもん。」


 澪はそう言って、勢いよくベンチから跳び立った。

 そして腕を後ろで組みながら、剣勇の方に体を向けた。


「チーフ、アタシたちもそろそろ帰ろ。」


 澪は再び笑顔を見せた。

 今度は立ち姿も相まって、とても可愛く見えた。


 剣勇は軽く笑いながらベンチから立ち上がり、澪に近付き頭を撫でた。




 剣勇は澪と並んで帰っていた。

 二人の身長差はかなりあり、遠目から見れば親子にも見える。


「チーフは明日はなにするの?」

「今日と同じ、散歩だ。」


 剣勇と澪は話しながら帰っていた。

 剣勇の歩幅は澪より大きいので、澪に歩幅を合わせて剣勇は歩いている。


「チーフ、やることないの?」

「散歩はパトロールも()ねている。 大切なことだ。」


 前方を見ていた剣勇は、目線だけ澪に向けた。


「それより、いつでも出撃できるようにしておけよ。 明日も休めるとは限らないのだから。」

「はーい・・・。」


 澪は顔を(ふく)らしながら返事をした。


 ヤミガタは休日関係なく現れる。

 メタルブレイザー装着者は常に気を抜けないのだ。



 数十分が経ち、『鉄衣学園』まであと少しとなった。


「チーフも学校に通ってたの?」

「・・・いや、男だから『鉄衣学園』には通えず、普通の学校に行くわけにもいかないから、姉貴に自宅学習をさせられていた。」


 少年時代の剣勇は、姉の姫花によって徹底的にメタルブレイザーの訓練をさせられていた。

 そして勉強も姫花から教わっていた。


 今の剣勇があるのは、姫花のおかげでもあるのだ。


「じゃあ、チーフって子供の頃に友達とかできなかったの?」

「いや、聡美ね・・・飯田先生がいた。」


 うっかりいつものクセで「聡美姉」と言いそうになった。

 いつもは「聡美姉」と言っているが、生徒の前では「飯田先生」と言うことにしている。

 まあ、近くに生徒がいても「聡美姉」と言ってしまうけど。


「他には?」

「次にできたのは大人になってからだった。」


 剣勇は静かにそう答えた。

 特に悲しそうではなく、普通にそう言い放った。


 剣勇の言葉が終わってから、澪はなにも言わなくなった。

 ふと剣勇が澪を見ると、澪は静かに笑っていた。


「なんだ?」


 剣勇がそう聞くと、澪は剣勇の服の袖を()まんだ。


「チーフが昔の話をしてくれたぁ~。」


 澪はルンルンしながら言った。

 その言葉を聞いて、剣勇はハッとした。


 この前、澪に過去のことを聞かれて断った剣勇だった。

 しかしたった今、過去のことを話してしまった剣勇だった。

 剣勇は完全に「しまった。」という感じで、右手で顔を(おお)った。



 それからさらに数分が経ち、ついに『鉄衣学園』に着いた。

 澪は門の前まで移動すると、振り返って剣勇を見た。


「チーフ、またねぇ~。」


 無邪気に大きく手を振る澪に、剣勇は小さく手を振った。

 そして剣勇も自分の帰る場所を目指して歩き出した。






 そして、次の日。


 アパートの自分の部屋に帰った剣勇は当然アパートの自分の部屋で目覚めた。

 昨日が終わり、今日が始まる。



 朝食や歯磨き、着替えなどを終わらして、剣勇はゆっくりと(くつろ)いでいた。

 録画した昨日の番組を観ていた。

 番組の名は「ギガントマンレイド」。

 巨大ヒーロー「ギガントマン」が怪獣と戦う特撮ドラマ。

 その最新作である。


 剣勇は27歳だが、ヒーロー番組は好きである。

 当然「ギガントマン」以外のヒーローも観ている。



 番組では「ギガントマンレイド」の主人公である特殊部隊の隊員が、子供たちと一緒に遊んでいる場面となった。

 すると、主人公が子供たちとサッカーをしだした。


「ん?」


 剣勇は既視感を感じた。

 それもそのハズ。

 なぜなら昨日似たような光景を見たからだ。


 剣勇は理解して、思わず鼻で笑った。



 すると、突然剣勇のスマートフォンが鳴り出した。

 音からわかるように、「ヤミガタ出現」の通知だ。

 本当に休日にヤミガタが現れたのだ。


 剣勇は慌ててスマートフォンの画面を見て、思わず肩を落とした。

 仕方なくテレビを消して、急いで外に出て、ある場所へと向かった。



 非常事態のときのために街中にメタルブレイザーを輸送するための装置がそこかしこに設置してある。

 この装置は『鉄衣学園』にある装置とほぼ一緒だ。

 違うところは、外では装着者証明のためのカードキーを使わないといけないことだ。

 このカードキーは一人前となった装着者にしか配られない。

 なので「第一小隊」はもちろん、聡美なども持ってはいないのだ。


 剣勇は周りに誰もいないことを確認して、装置にカードキーを使う。

 すると、剣勇の周りに透明な壁のようなモノが地面から出てきた。

 これは、装着者のプライバシーを守るためのマジックミラーでできた壁なのだ。

 ただし真上にはなにもない。


 メタルブレイザーの箱が地面から現れ、剣勇は急いでメタルブレイザーを装着した。

 いつもと違って私服での装着だがほとんど問題はなく、いつも通りに動くことができる。


 機械による装着作業が終わり、箱の扉を閉める剣勇。

 それとほぼ同時にマジックミラーの壁も引っ込んだ。

 そこに現れたのは灰色の体を持つメタルブレイザーだけだった。



 剣勇は『鉄衣学園』の方へ走り出した。

 『鉄衣学園』で「第一小隊」の皆と合流するために。






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