11.第2話「メタルブレイザー と ヤミガタ」(4/5)
先程とは違う場所に移動していた。
そこにはヤミガタが五体もおり、少々厄介そうな雰囲気だった。
「どうしますか?」
唯織が剣勇にそう聞くと、剣勇はしばらく動かずに考えていた。
剣勇は喋りかけてきた唯織を見ながら、腰から刀を抜いた。
「唯織、頼みがある。」
剣勇のその言葉を聞いて、唯織は「はい?」と答えた。
そして剣勇は唯織と他四人に作戦を伝え始めた。
ヤミガタたちはなにをしているか分からないが、とりあえず街をウロウロしている。
すると、ヤミガタたちの上空を緑色のなにかが通った。
それは唯織だった。
唯織のメタルブレイザーは空を飛ぶことができる。
唯織はヤミガタたちの上を通り過ぎると、後ろを振り返ってヤミガタたちの方を向いた。
そして腰に装備しているガトリングで一体のヤミガタを撃った。
唯織はヤミガタを蜂の巣にし、ヤミガタ一体を倒すことに成功した。
その後唯織はヤミガタたちの上を通り、来た道を戻り始めた。
当然、残った四体のヤミガタは唯織を追いかけ始めた。
ヤミガタたちは唯織の姿を見ながら追いかけていたため、周りへの警戒を怠っていた。
建物の陰から剣勇と「第一小隊」が飛び出し、ちょうど正面にいるヤミガタたちに襲いかかった。
澪、愛海はそれぞれ一体のヤミガタを攻撃し、剣勇は二体のヤミガタを斬り裂いた。
合計で四体のヤミガタ全員を一気に殲滅した。
周囲の安全を確認すると、空から唯織が戻ってきた。
それと同時に飯田先生から連絡がきた。
<周辺にヤミガタの反応はなし。 次の目標を指示するわ。>
「よろしく頼む。」
剣勇は返事をすると、飯田先生の指示に従って「第一小隊」を連れて再び動き出した。
次の場所では、武装した警備隊の隊員とヤミガタが戦っていた。
ヤミガタの数は二体と少なかったが、警備隊はあまり善戦しているようには見えなかった。
警備隊が放つマシンガンの銃弾を受けても、ヤミガタは後退る程度であまり効いていなさそうであった。
しかし、ヤミガタは集団で行動する生物なので、何体かは倒したのだろう。
「俺が行くから、後から来い。」
剣勇はその一言だけを言い、ヤミガタのところへ向かった。
近い方のヤミガタに向かって刀を突き刺した。
警備隊の人々は剣勇の姿を見ると、攻撃を止めた。
剣勇が一体のヤミガタを倒すと、もう一方のヤミガタにも刀を突き刺した。
先に倒したヤミガタがすぐに弾け飛んだため、わざわざ抜く必要はなくそのまま次のヤミガタへ攻撃ができたのだ。
そして、もう一体のヤミガタも瞬殺した。
一連の動作を「第一小隊」は見守っていた。
二体のヤミガタが倒されると、警備隊の隊長らしき人が剣勇に近付いてきた。
それと同時に、澪たちも剣勇のもとへ急いだ。
「さすがね、剣勇。」
隊長らしき人は声からして女性だった。
「話している暇はない。 次の場所へ行く。」
「相変わらずつれないわね。」
警備隊の隊長はそう言うと、部下たちを連れて次のヤミガタを探し出した。
剣勇は飯田先生の通信を待っていた。
「先程の方は?」
唯織が剣勇の近くに来て聞いてきた。
剣勇は少しだけ黙って、やがて喋り出した。
「・・・ただの知人だ。」
どこか歯切れが悪い感じに剣勇は言った。
唯織は剣勇がなにか隠していそうなのを感じ取ったが、聞く前に飯田先生の通信が入った。
そして、次の目的地を目指して動き出した。
それから、剣勇たちはヤミガタ集団の殲滅を進めた。
特に剣勇、澪、愛海の三人がヤミガタを倒し続けていた。
クラリスは銃で援護をして、明日香は可能な限り敵の攻撃を受け止め、唯織はたまに囮になったりした。
そしてそれから数十分が経ち、飯田先生から連絡がきた。
<ヤミガタの反応が無くなったわ。 お疲れ様。>
今日出現したヤミガタはおそらく全滅した。
「もうヤミガタはいないの?」
澪が心配そうに剣勇に聞いてきた。
剣勇は刀を鞘に戻しながら澪の方を向いた。
「多分な。 あとは警備隊の方がやってくれるだろう。」
「警備隊の方が?」
剣勇が答えると、今度は唯織が聞いてきた。
「警備隊にはそれぞれ担当の部隊があり、その中にはヤミガタ殲滅後に生き残りがいるか見張る部隊があるんだ。」
「そうなのですか。」
国防警備隊には七つの部隊があり、その一つに「残党排除部隊」と呼ばれる部隊がある。
倒し忘れていたヤミガタを処理する役割を持ち、"後片付け部隊"とも呼ばれている。
彼らは午前8時まで徹夜をして見回りをするのである。
<じゃあ、回収地点へ誘導するわね。>
飯田先生の通信に導かれながら、剣勇たちは歩き出した。
街の中を歩き回り、広い場所へと出た。
剣勇は空を見つめる。
「またヘリ?」
「ああ。」
クラリスの質問に剣勇は答えた。
そしてそのまま「第一小隊」は黙ってヘリコプターを待ち始めた。
「チーフ。」
澪が剣勇を呼び、剣勇は視線を澪に向けた。
澪にやや元気がないことを剣勇は気付いていた。
声に元気がないのもそうだが、メタルブレイザーの透明なバイザーから澪の目も見えていたからである。
「あ、あの、アタシよかった・・・?」
どうやら最初の独断行動をかなり申し訳なく思っているようだ。
澪は意外と繊細な子のようだ。
「ああ、上出来だ。」
剣勇は優しい声で澪を評価した。
その言葉を聞いて、澪は笑顔を取り戻した。
いつもの天使のような笑顔を。
しばらくしてヘリコプターが到着し、剣勇たちは乗り込んだ。
ヘリコプターは上昇し、『鉄衣学園』目指して出発したのだった。
ヘリコプターの中では、皆は黙っていた。
おそらく仕事疲れみたいなものだろう。
学園の上空に着き、今度はちゃんと着陸した。
それを確認し、剣勇は扉を開けて皆を降ろした。
剣勇たちは真っ先に訓練場の方へ向かおうとする。
背後では、飯田先生がヘリコプターのパイロットとなにかを話していた。
剣勇たちは全員メタルブレイザーを脱ぎ終わった。
剣勇はいつもの地味な色の服を着た姿になり、「第一小隊」も『鉄衣学園』の制服姿になった。
「第一小隊」の皆は剣勇のもとへ集まった。
剣勇は全員の顔を見回しながら話し始めた。
「今日はよくやってくれた。 俺からも礼を言う。」
剣勇の言葉を聞いて、一人を除いて皆は笑みを浮かべていた。
そのまま剣勇は喋り続ける。
「"今日はゆっくり休め"と言いたいところだが、まだ授業は終わっていないんで、このまま授業に戻ってくれ。」
「ええー・・・。」
澪が肩を落としてガッカリしていた。
しかし剣勇は遠慮なく喋り続けた。
「また、今日受けられなかった授業は後日補習という形でさせる予定らしい。」
澪は言葉が出ず、さらに落ち込んだ。
ちなみに、他四人は真面目に話を聞いていた。
「じゃあ、そういうわけで、今日はこれで解散だ。」
剣勇の「解散」という言葉を聞いて、五人は一斉に「ありがとうございました。」と発した。
そのまま五人は、授業に戻るために移動を開始した。
そして訓練場の広場には、剣勇一人が残された。
時は経ち、時刻は夕方。
『鉄衣学園』での授業は終わり、生徒たちは自由となっている。
寮に帰るのも良し、門限まで出かけるのも良し。
そんな時に、学校内のとある場所に居座っている女生徒がいた。
「澪、なぜにここにいる。」
「えへへ。」
澪はまた剣勇の学園内での部屋である「指揮官室」で座っていた。
「今日は疲れているだろうから、早く帰って寝ろ。」
「大丈夫、アタシ眠くない。」
澪は相変わらずニコニコしている。
剣勇はそんな笑顔を見て、なにも言えなくなった。
澪から机に視線を変えて、今日のことをノートにメモしていた。
「チーフ。」
澪が剣勇を呼んだ。
剣勇はゆっくりと澪の方を向いて「なんだ?」と聞いた。
「アタシ、もっと強くなりたい。 強くなって、チーフに迷惑をかけないようになりたい。」
その言葉を聞いて剣勇は少し考え込み、やがて口を開いた。
「別に急ぐことはない。 ゆっくり確実に強くなっていけばいい。」
剣勇は机でメモを書きながら、澪にそう言った。
澪はややきょとんとしていたが、しばらくして笑顔を見せていた。
「ところで、なに書いてるの~。」
澪が畳の上で四つん這いになって剣勇に近付き、胡坐をかいている剣勇の右太ももに両腕を乗せてノートを覗いた。
「お、おい・・・。」
「へぇー、なになに・・・。」
澪は黙ってノートに書いてあるメモを読み始めた。
剣勇は澪をどけようとしようと考えていたが、楽しそうにノートを見る澪の姿を見て「しょうがない」という感情になり、そのままにした。
両腕を後ろに持っていき、両腕で体を支えるポーズをとった。
そしてノートを見ている澪を眺めた。
こんな普通のカワイイ女子高生が、ヤミガタと戦っている。
剣勇が、その事実を受け入れるにはまだ時間がかかりそうだった。
澪が呑気にノートを見ているのに対し、剣勇は今後のことが心配になってきていた。
「はぁ~あ・・・。」
剣勇は思わず天井を見ながら溜息を吐いてしまった。
澪は「ん?」と反応して剣勇の方を向いた。
剣勇は微笑みながら、思わず澪の頭を撫でた。
すると澪は笑顔を見せながら、されるがままとなっていた。
その姿はまるで子犬か子猫のようだった。




