9.第2話「メタルブレイザー と ヤミガタ」(2/5)
次の日の朝・・・。
剣勇はアパートで目覚めた。
昨日アパートに帰った後、数時間後にそのまま布団で寝た。
剣勇が住んでいるのはアパート「ミッドナイトゲイツ」。
名前以外はごく普通の2階建てのアパートだ。
剣勇は203号室に住んでいる。
剣勇の部屋はあまり綺麗ではなく、いわゆる一人暮らしの男性の部屋という感じだった。
しかしそこまで汚いというわけでもない。
比較的に整っている方であろう。
起床すると、カーテンを開けて窓を半分だけ開ける。
網戸があるため、虫が入ってくる心配はない。
洗面所で顔を軽く洗ったら、台所へ。
剣勇はそこそこ料理ができるので、ごはんを作ることができる。
だが、朝はそこまでする必要はないので、食パンを焼く程度で済ませている。
焼いた食パンを食べながらテレビを点け、ニュースなどの番組を観る。
このように、毎日ごく普通の生活をしている。
数十分後・・・。
朝ごはんを食べ終わった剣勇は歯を磨いた後、学園に行く準備を開始した。
昨日と同じく自衛官のような地味な色の服を着て、帽子も用意した。
服は同じのを何枚も持っているだけで、昨日のは既に洗濯して干している。
着替え終わったその時、剣勇のスマートフォンが鳴った。
誰かから電話がかかってきたのだ。
剣勇は電話に出た。
「もしもし。」
<よう、剣勇。>
電話の声は男性だった。
「慎二か、一体何の用だ。」
電話の相手は『国防警備隊』に所属している "飯田慎二" 。
『国防警備隊』とは、対ヤミガタ専門の警備隊のことである。
メタルブレイザーとはまた違うパワードスーツを使用する特殊部隊なのだ。
剣勇も何度か共闘をしており、親しい関係にある。
特に慎二が所属している「第五部隊」とは、プライベートでも会うレベルである。
<聡美から聞いたぞ。 早くて今日から実戦に投入されるんだってな。>
「ああ、そうらしい。」
お気付きの方がいるかもしれないが、慎二の苗字は「飯田」である。
慎二は、飯田聡美先生の旦那さんなのである。
剣勇とも友人関係を築いており、関係も良好。
<初陣の際に俺だけでも援護に回ろうかと思ってな。>
ヤミガタ出現の際には当然『国防警備隊』も動く。
警備隊には全部で七つの部隊に分かれており、それぞれが違う役割をしている。
慎二にも「第五部隊」でやることがあるが、それを他の隊員たちに任せて剣勇たち「第一小隊」の援護に回ろうというわけだ。
剣勇は数秒間考え込んだ。
「いや、慎二は自分の仕事に集中してくれていい。 俺らは俺らでなんとかする。」
考えた末、そう返答した。
<そうか。 ならば仕方ないが、無茶だけはするなよ。>
「ああ、ありがとうよ。」
そう言って会話は終了した。
時間が経ち、剣勇は帽子とショルダーバッグを身につけて部屋から出た。
「おはよう。」
「おはようございます。」
外に出ると、女性が挨拶をしてきた。
彼女もこのアパート「ミッドナイトゲイツ」の住人であり、剣勇の部屋の隣に住んでいる。
どうやら彼女も今から出かけるようだ。
そのまま二人でアパートを出た。
「昨日から『鉄衣学園』でメタルブレイザーの訓練とかを教えているんだっけ?」
「はい、そうです。」
途中まで同じ道だったため、剣勇と女性は話していた。
女性は砕けた口調で剣勇と話をしている。
「あ、私こっちだから。 じゃあ今日も頑張ってね。」
「はい、御影さんも頑張ってください。」
女性は手を振りながら去っていった。
彼女が歩いている方向に体を向けたのを確認すると、剣勇も自分の進むべき道を歩み出した。
目指す場所はもちろん『鉄衣学園』だ。
剣勇のアパートから『鉄衣学園』までの距離は駅なら二つ先程度であり、徒歩でもそこまで時間は変わらない。
電車に乗っている間にヤミガタが現れたときのためにも、剣勇は徒歩での出勤を選んだ。
教師の出勤時間は大体8時くらいなので、剣勇も同様に8時くらいに出勤する。
数十分後・・・。
『鉄衣学園』の校門前に着いた。
校門には門衛がおり、剣勇は挨拶をして通り過ぎる。
学園内には既に女生徒たちが数名歩いていた。
学園内に学生寮があるため、校外では一人も見かけなかった。
剣勇はまだ慣れてはいなかった。
もしかしたら学園で自分だけが唯一の男かもしれないということに・・・。
会ってないだけで他に何人か男性がいるかもしれないが、少ないことは変わりないだろう。
剣勇は余計なことは考えずに、校舎内へ足早に入った。
職員室で挨拶をして、指揮官室の方へ入った。
すると、見たことのある二人に出会った。
「あ、おはようございます。」
「おはようございます。」
唯織と愛海だった。
二人は既に登校していた。
「早いな、お前ら。 他の三人は?」
「後で来ると思います。」
どうやら澪、明日香、クラリスはまだ来ていないようだ。
「今日もよろしくお願いします。」
唯織と愛海はそう言って、頭を下げた。
剣勇も「ああ。」と答えた。
「じゃあ、また後でな。」
剣勇はそう言って再び指揮官室へ向かった。
指揮官室へ着くと、ショルダーバッグを畳の上に置き、帽子を脱いで机の上に投げた。
靴を脱いで畳の上に乗り、机の前に座った。
剣勇はそのまま黙って止まっていた。
だが、脳裏では昨日の特訓のことを考えていた。
それぞれの動きなどを思い出し、今後の改善点などを見つけるために。
そんなことを考えていると、突然剣勇のズボンのポケットに入れているマナーモードのハズのスマートフォンがうるさい音を出しながら振動し出した。
剣勇はスマートフォン慌てて取り出した。
スマートフォンを見ると、画面に「緊急速報:ヤミガタ出現」の文字があった。
これは地震速報の通知のときとほぼ同じようなものだ。
また、出現位置も載っている。
速報を確認すると、剣勇は帽子を被らず机に置いたまま移動し出した。
校内では「ヤミガタ出現」のアナウンスもされており、学校内はザワついていた。
そんな中を剣勇は早歩きをしていた。
校舎の外に出て、外にいる女生徒たちを避けながら剣勇は走って訓練場の方へ向かっていた。
学校内では訓練場にしか装置がないのだ。
訓練場の中にも少なからず女生徒が何人かいた。
だが、そこには「第一小隊」のメンバーはいなかった。
広場の方に移動したら、そちらには誰もいなかった。
剣勇は大急ぎで壁の機械を操作して装置を地面から出した。
そして近場の装置を使って、自分のメタルブレイザーが入っている箱を取り出した。
剣勇はとりあえずメタルブレイザーを着る前に少しだけ彼女たちを待っていた。
すると、広場に誰かが入ってきた。
唯織だった。
唯織は走って剣勇に近付いた。
「お前一人か?」
「愛海に他三人を迎えに行って貰っています。 彼女の方が足が速いので。」
唯織は装置にパスワードを入力しながらそう話した。
メタルブレイザーを取り出すと、すぐに装着した。
それを見た剣勇もメタルブレイザーを装着した。
灰色と緑色のメタルブレイザーが現れた。
「先に向かいますか?」
「いや、10分だけ待つ。 来なかったら先に行く。」
剣勇はそう言った。
唯織はそのままなにも言わず、剣勇と同じく四人を待った。
6分後・・・。
愛海が先導して四人全員が来た。
四人とも大慌てで走ってきていた。
「すみません、お待たせしました。」
愛海は一言剣勇に言って、速やかに装置に近付いてメタルブレイザーを取り出そうとしていた。
他の三人も同様にメタルブレイザーを取り出そうとしている。
数十秒が経った後、全員がメタルブレイザーを装着し終えた。
「場所は通知で分かっているな。」
「はい。 ですが、あそこへは電車で15分くらいかかりますよ?」
愛海が走りながら剣勇に聞いた。
今回ヤミガタが出現したのは徒歩でなら遠い。
着いた頃には町は大変なことになっているだろう。
「大丈夫だ。 俺についてこい。」
だが、剣勇は落ち着いた様子でそう言った。
「第一小隊」の皆は黙って剣勇についていった。
着いた場所は正門の近くだった。
そこには飯田先生が立っていた。
「そろそろ到着すると思うわ。」
なにかを察して飯田先生が先に答えた。
剣勇は無言で頷いたが、当然「第一小隊」の皆はこれからなにが起こるかは分かっていない。
周りには野次馬のように女生徒たちが集まっていた。
飯田先生意外にも教員の方々が2、3人程いた。
しばらくすると、上空に一機のヘリコプターが飛んできた。
やや大きめの "UH-1" に似ているヘリコプターだった。
ヘリコプターは剣勇たちの真上辺りで止まって、そのまま垂直に着陸しようとしていた。
剣勇は念のため「第一小隊」の皆を少し下がらせた。
飯田先生たちも野次馬となっている女生徒たちを下がらせた。
そしてヘリコプターは無事に着陸した。
「このヘリコプターで目的地まで行ってもらう。 早く乗れ。」
剣勇はヘリコプターの大きな扉を横に開きながら「第一小隊」に指示した。
「第一小隊」は若干戸惑いながらも、剣勇の言う通りにヘリコプターの中へ入った。
全員が入って席に座り、剣勇が最後に乗り込んで扉を閉めた。
数秒後にヘリコプターは離陸し、目的の場所を目指して飛び去った。




