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メタルブレイザー -鋼鉄の戦乙女たち-  作者: サムライドラゴン
初陣 編
10/33

8.第2話「メタルブレイザー と ヤミガタ」(1/5)


 剣勇は指揮官室で胡坐(あぐら)をかきながら、机に(ひじ)をついて頭を抱えていた。

 被っていた帽子は脱いで机の上に置いていた。


 ちなみに指揮官室に置いてあったメタルブレイザーが入っている鉄の箱は、「第一小隊」との手合わせ前に学校の地下に設置したため、部屋から無くなっている。



「・・・。」


 剣勇がどうしてこうなったかは、先程のことが原因であった。






 五分前・・・。


「剣勇、大変なことになったわ・・・!」


 飯田先生は剣勇の二の腕辺りを掴んで、深刻(しんこく)そうな顔で言った。

 剣勇は一体なにがあったか全く予想はできなかった。


「い、一体どうした・・・。」


 剣勇が恐る恐る聞くと、飯田先生は黙りだした。

 しかし数秒後、口を開いた。


「「第一小隊」を、明日から実戦投入させるらしい・・・。」


 飯田先生は辛そうに、そう言った。

 その言葉を聞いて、剣勇までが動揺(どうよう)しだした。


「なんだと!?」

「さっき、政府からそういう命令が来たらしいのよ・・・。」


 『鉄衣学園』はメタルブレイザー装着者の養成学校のため、当然政府からの連絡などもある。

 主にヤミガタ出現の連絡などを寄越(よこ)してくれたりする。

 だが、時には今回のようなこともある。


「なにを考えてやがるんだ。 俺は今日初めて彼女たちに会ったというのに・・・!」


 剣勇は怒りと焦りに混じった感情を抱いていた。

 だが、一旦落ち着いて冷静さを取り戻した。


「電話を貸してくれ、説得してみる。」


 そう行って剣勇は職員室へ向かおうとしたが、飯田先生に腕を掴まれて止められた。


「待って、望みは薄いけど私たちがやってみるわ。 剣勇は明日のために色々支度をしてちょうだい。」


 飯田先生が落ち着いた声でそう言うと、剣勇も「分かった」と返事をした。

 飯田先生は返事を受け取ると、そのまま職員室の方へ歩いて行った。


「チーフ、明日から出撃なの?」


 ついてきていた澪が声をかけてきた。


「分からん。 明日ヤミガタが現れたら、おそらく・・・。」


 明日ヤミガタが現れたら、間違いなく澪たちは実戦投入をさせられる。

 その事実を怖がった剣勇は、そのまま喋りを止めた。






 その後、剣勇は指揮官室に入り、現在の状況になっていた。

 帽子を脱ぎ、胡坐をかいて、机に肘をついて頭を抱えていた。


「チーフ、大丈夫だよ。 チーフには負けちゃったけど、アタシたち結構強いよ。」


 ついてきていた澪も指揮官室へ入っていた。

 畳の前の段差に座って、剣勇のいる左斜め後ろの方向に顔を向けていた。


「今回のはただの試合みたいなものだ。 全部が実戦で通用するかは分からん。」


 そう言うと、剣勇は溜息(ためいき)を吐いた。

 そして机の上でうつ伏せに上半身を倒すと、数秒後に体を起こした。


「こんなことをしてる場合じゃない・・・。」


 剣勇は机の上に置いていた帽子を拾いながら、その場で立ち上がった。

 そして澪に近付き、片膝をついてなるべく目線を合わせた。


「澪、「第一小隊」の皆を連れてさっきの広場があった建物の入口付近に連れてきてくれ。」

「わかった!」


 剣勇の頼みを聞いた澪はさっそく指揮官室を出て、皆を探しに行った。

 剣勇も帽子を被り直し、畳から降りて靴を履き、指揮官室を出て行った。

 そして集合場所に向かった。






 集合場所に到着して、数十分後。

 ついに全員が集まった。


「集まったな。」

「先程澪に聞いたのですが、明日からワタクシたちも実戦に投入されるというのは本当なのですか・・・?」


 唯織が真っ先に剣勇に向かって喋りかけた。

 どうやら澪のせいで既に全員に知れ渡っているようだ。


「やっぱり先に言っちまったか。」

「ごめんなさい。」


 澪はごまかし笑いをした。

 剣勇はなにか言いたそうだったが我慢して、話を進めた。


「ああ、澪の言った通り明日以降からヤミガタ出現の際に実戦投入される。」


 剣勇がそう言うと、女生徒たちは互いに見合ったりなどしてザワザワしていた。

 澪以外は。


「で、これからまた特訓でもするのです?」


 今度はクラリスが聞いてきた。

 剣勇はやや難しそうな顔をして、約3秒間黙った。

 そしてすぐに喋りだした。


「いや、今更特訓しても間に合わないから、今日はもう学校が終わったらゆっくり休め。 言っておくが、明日ヤミガタと戦うとは決まってないからな。 だから明日も普通にしてればいい。」


 そう皆の顔を見ながら伝えると、その後表情を変えて再び喋り出した。


「ただ、明日かもしれないということは覚えておけ。 いつ招集(しょうしゅう)がかかってもいいようにしておけよ。」

「分かった!」


 剣勇の指示に対して、澪は元気一杯に返事をした。


「よし、じゃあ解散だ。」


 そう言って剣勇は後ろを振り返って、皆と別れた。






「はぁ~・・・。」


 指揮官室に戻った剣勇は、先程と同じく胡坐をかきながら机の上でうつ伏せに上半身を倒していた。

 やはり皆のことが心配なのだ。


「チーフが来るずっと前から訓練はしてたし、チーフが思っている程のことじゃないと思うけど?」

「いや、お前たちは本物の戦いを知らないだろ。」


 指揮官室には、また畳の前の段差に座っている澪もいた。


「というか、どうしてここにいる。 他の四人と学生寮に帰ったんじゃなかったのか?」

「まだ時間があるし、いいじゃん。」


 澪がニコニコと笑って、脚をブラブラと揺らしている。

 すると、剣勇は溜息をつきながら喋りかけた。


「あのなぁ・・・、ここ指揮官室は遊びに来るようなところじゃないんだぞ。」

「チーフの家知らないから、代わりにこの部屋にお邪魔させてもらってるわけ。」


 脚をブラブラさせながら、無邪気に剣勇と会話する澪。

 剣勇はふと、今の会話でとあることに気付いた。


「ちょっと待て。 仮に俺の住所教えたら遊びに来るつもりなのか・・・?」

「うん!」


 即答だった。


「これから長い間ずっとお世話になるから、一刻も早くチーフと仲良くなりたいんだもん。」


 変なジェスチャーをしながら楽しそうに語る澪。

 それに対してやや困った様子の剣勇だった。


「俺はお前らの教育係であって、友達じゃ・・・。」

「ところでチーフ。」


 澪が話題を変えた。

 剣勇は一瞬フリーズしたが、澪の話を聞くことにした。


「さっき飯田先生のことを「聡美姉」と呼んでいたけど、チーフと飯田先生って知り合いだったの?」


 さっきというのは、実戦投入の話のときだ。

 剣勇は学校でも関係なく飯田先生を「聡美姉」と呼んでいる。


「・・・幼馴染だ。」

「へえ~、そうだったんだ。」


 澪が話に食いついた。

 剣勇は体を机の方に向けて、澪から視線を外した。

 すると、澪は靴を脱いで畳の上を()いながら剣勇に近付いた。


「チーフの昔の話を聞かせてよぉ!」


 澪は興味津々だった。

 尻尾が生えてたら勢いよく振っているところだろう。


「イヤだ。」


 だが、剣勇は拒否した。

 顔を澪の方には一切向けず。


「ぶぅー・・・。」


 澪はむくれた。




 それから数分が経った。

 相変わらず剣勇は澪の話をテキトーに流しながら聞いていた。

 すると、今度は剣勇の方から話しかけた。


「澪、明日ヤミガタと戦うかもしれないんだぞ。 早く帰って休んでおけ。」

「大丈夫、アタシは元気の塊だから。」


 剣勇の言葉に対して、澪はマッスルポーズをとりながら自信満々に答えた。

 すると、また剣勇は溜息をついた。


「俺が落ち着かないんだよ!」


 剣勇もさすがに少しだけ怒った。


「分かった分かった。 帰るからそう怒らないでよ。」


 さすがに澪も言うことを聞くことにした。

 畳から降りて靴を履き、扉の前に立った。


「じゃあチーフ、また明日ね!」


 そう言って澪は指揮官室を出て行った。


「疲れる・・・。」


 剣勇は三度(みたび)机の上でうつ伏せに上半身を倒した。






 時刻は午後6時。

 下校時間は既に過ぎている。


 高校教師ではない剣勇は残業などは基本は無く、帰るのも早い。

 ヤミガタ出現の連絡も剣勇の携帯電話(スマートフォン)に直接来るため、学校で待機していなくても大丈夫。


 「メタルブレイザーは学校にあるのでは?」という疑問もあるのだろうが、それも問題はない。

 実は日本の地下にはメタルブレイザーの箱を移動させることができる広大な地下通路がある。

 町中に設置してある装置を使って『鉄衣学園』の地下からメタルブレイザーを輸送することが可能なのだ。

 ただ、県外での輸送はさすがに時間がかかってしまうため、前々から準備をする必要がある。


 とにかく、剣勇がどこにいても大きな問題はないというわけだ。




 というわけで、剣勇は帰宅することにした。

 指揮官室に置いていたショルダーバッグも忘れずに背負った。


 一度職員室へ行き、挨拶をした。

 仕事中の女教師たちは優しく挨拶を返してくれた。

 その中には当然、飯田先生もいた。


 剣勇は職員室を後にして、校門へ近付いていた。

 すると、門の近くで待っていた女生徒がいた。


「チーフ!」


 その女生徒は澪だった。

 剣勇の姿を発見すると、走って近寄ってきた。


「澪、下校時間は既に過ぎているぞ。」

「校舎内じゃなければ20時までは大丈夫なんだよ?」


 『鉄衣学園』では下校時間が午後5時、門限が午後8時となっている。

 下校時間以降は非常時などではない限り、校舎内に生徒が入ってはいけないことになっている。

 ただ、訓練所のみは門限まで使用可能だ。


「で、なんか用か?」

「いや、お見送りをしようと思って。」


 澪は腕を後ろで組みながら、剣勇に笑顔を向けていた。

 予想外のことに剣勇はやや驚いていた。


「じゃあ、ずっとここで待ってたのか・・・?」

「三十分前程度だから安心して。」


 澪は笑顔で言った。

 剣勇はしばらくポカーンと口を開けた後、片手で顔を覆った。

 そして顔から手を離し、もう片方の手で澪の肩を掴んだ。


「頼むから寮で休んでくれよ・・・。」

「アタシは元気の塊だから。」


 先程と同じことを言っている澪だった。


 自分が帰るまでなにを言っても無駄だと理解した剣勇は、さっさと校門を出て帰ることにした。

 相変わらず澪はニコニコしている。

 剣勇は澪の肩を掴んでいた手を頭に置いた。


「また明日な、澪。」

「うんっ!」


 澪は再び天使のような笑顔を見せる。

 剣勇も静かに笑みを浮かべて、澪の頭から手を離し、校門へ向かった。


「ご苦労様です。」


 門衛の女性が挨拶をしてきた。

 剣勇も彼女に一礼をし、校門を出た。


 そして、剣勇が住んでいるアパート目指して歩き出した。






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