表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

起床

作者: 鈴蘭

あらすじを読んでから本編を読むことを推奨します

「これでいい」

 ”私”は今、高校の授業を抜け出して、近くにあったビルの屋上にいる。

 生きることに疲れた。

 何があったなんて、もう思い出したくもない。


 躊躇いもなく、私は屋上の柵を乗り越え、一歩を踏み出した。

 感じる浮遊感。

 ゆっくりと流れる時間。

 流れる走馬灯。

 何故だか心は穏やかだ。


 私は目を閉じた。

 これで静寂が手に入る。

 やっとゆっくり眠れるんだ。

 落ちていきながら、堕ちていった。


・・・・・・・・・・・


 何だろう、何か騒がしい。

 定期的に鳴る高い機械音。

 涙をすするような音。

 誰かを呼ぶような声。


 そんな中目を覚ますと、数人が駆け寄ってきた。

「よかった、目が覚めたのね」

「心配したのよ」

「一時はどうなることかと……」

 見上げると、白い天井。

 顔には酸素マスク。

 腕はチューブで繋がれている。

 周りの人たちは顔を真っ赤にしていた。


「ええ、と……」

 困惑していると、女性が声をかけてきた。

「目が覚めたばかりで混乱しているんでしょう。急がなくてもいいのよ。今は体を休めて」


 ああ、そうか、思い出した。

 ”俺”はあの時、確かに……


「もう、車の前に飛び出すなんて何考えてんの!」

「お姉ちゃんやめなよ、お父さんだって思いつめてたのみんな知ってたじゃん」

「でも、助かって本当によかったわ、あなた」


 みんなの顔を見る。

 見慣れたはずのみんなの顔。

 でも、どこか初めて見るような顔。


「心配かけてすまなかった。もうこれからはこんなことしないから。そうだ、転職でもしようかな」

「そうよ、飲食業なんて向いていなかったんだわ。ガラッと業種変えてみましょうよ」

「資格でも取るかなあ」


 はは、と笑うと、俺はまたベッドに横になった。

「すまない。まだ疲れているみたいでな。少し休むよ」

「ええ、また来るわ」

「しっかりしてよね?」

「こら、またお姉ちゃんったら。またね、お父さん」


 俺は”まるで自分自身を思い出したかのような安心感を持って”眠りについた。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ