モーニングルーティーン
ピピッピピッ。
朝を知らせる合図。
新しい朝のルーティンを実行するためにアラームに起こされるが、いつもの癖で布団に潜る。
その数分後
『まーたやっちまった…』
そして罪責感を感じながら、身体を起こす。
「んーーーーーーーー!」
と、身体を伸ばして歯磨きや洗顔を済ませて小説の続きを書こうと机に付く。
前回の続きから書こうとするのだが、どうもしっくりこない。
初心者なのでスラスラ書けるわけもなく、手が止まる。
『どうしたら読む人にちゃんと伝わるんやろうか…』
そう思ったとき、部屋にある複数の小説を手に取って中を見る。
冒頭の書き出しからストーリーの進め方。数十冊の中からひときわ面白い一冊の本。まさしく今の僕が欲しいと思う内容が、用意されているようだった。
クスッと笑えるところから、見たこともないのに味や景色のイメージが頭の中をよぎる、言葉の表現達。
『面白い!』と自分が思っていることに気が付き、同時に悔しいと思う。
著者に相手にされないくらい初心者な僕が、その内容に心が、神経が、僕の世界が、全て飲み込まれた。
そして僕は時計を気にする間もなく読み続けた。
すると、「ピピピッ」とアラームの音が10時を知らせた。
「うぉっ、もうそんな時間か!」
掌に収まる別世界を閉じて現実に引き戻される。
『あぁ、面白いな…』
大好きなケーキが幾度と登場する一冊。
本棚に戻そうと本たちを片付けていると、自分の本棚に置いてある小説や漫画に、食べ物が登場することに気付く。
『おれ、どんだけ食べるの好きなんだよ…』
なんて自分にツッコミをいれる。
そんなことを思いながら小説の続きが気になる。
そして、おれもいつか、こんな物語を書きたい。
この感情は、なんだか悔しいけど嬉しかった。
『あんなにも活字が嫌いだった自分が、朝から小説を読むほど好きになるなんて…』
そんなことを思いながら外出の準備を終わらせて、自転車を漕ぎだす。
『今夜、続きを読もう。』
ひとつの楽しみができたことがちょっぴり嬉しくて、曇り空の下を爽快に進みながら、僕は穏やかな表情でペダルを漕いでいた。