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作り方は分かりませんが作れるんです。

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

楽しんでいただけると嬉しいです。

そんな複雑な婆様の表情の変化を見ていると、不意に真っ直ぐ射抜く様な婆様の目がこちらを見てきた。


「私たちの一族は、亜人だ」


亜人。人と似た姿でありながら、魔獣の様に魔石を持つ者たち。

その一言で、俺は拐われた人々がどの様な目にあったのか想像ができてしまった。


人とは、業の深い生き物だ。

高みを目指すことに貪欲で、その為に必要であればどの様な残酷なこともできてしまう。

その業は、ドイツのユダヤ人迫害の様に人を人とも思わない破壊の道へと人を導くこともあれば、医療技術の発展の為に動物実験を繰り返す様に利己的な繁栄の道へと導くこともある。

拐われた一族の人々も、そんな人の業の犠牲となったのだろう。


婆様の話を聞き、この指輪は公に知られると拙いものだというのが理解できた。

手持ちの鞄が魔法鞄に見える様に使っていたのは、正解だった様だ。改めて、指輪の存在を隠すことを決めた俺は、婆様の話の続きに耳を傾ける。


「多くの者が亡くなり、流れる時間の中で依代を作り出す技術が失われてしまった。精霊の力を借りれなければ、私たちは満足に魔獣も狩れぬ非力な存在でしかない。その指輪には、依代を作り出す技術を持つ者の手に渡る様にまじないをかけていたのさ」


婆様の話を聞いて、俺は自分のスキルについて考える。

『レシピ』から探す必要はあるが、恐らく彼らの求める依代は、材料さえ揃えば作れるだろう。たぶん。ただ、作る技術と言われると力になれるか分からない。

何しろ、俺のスキルは魔力を通す事で材料から一気に完成品へと至ってしまうので、途中過程が存在しないのだ。そもそも、作り方を他人に教えてどうにかなるなら、俺は最初の村でポーションの作り方を広めていただろう。

話を聞いて力になりたいとは思うが、彼らが求めるのは自分たちで作る技術であって、一時凌ぎの完成品ではないと分かるだけに、何と答えて良いかわからない。


婆様を見ると、俺のどんな表情も見逃すまいという真剣な目でこちらの様子を伺っていた。特に誤魔化す必要もないので、俺は正直に話をする。


「依代を作ることは、できると思う」


婆様の表情が希望を見出した様に明るくなるが、ぬか喜びをさせてはいけないので相手が口を開く前に告げるべきことを伝える。


「だが、それは作れるだけであって、作る技術そのものを伝えることはできない」

「どういうことだい?」


俺の言葉を聞いた婆様の視線が鋭くなる。どうやら俺が技術を独占しようとしている様に聞こえた様だ。


「誤解するなよ。俺は作れるだけであって、作る技術は知らないんだ」

「作れるということは、作り方を知っているということではないのかい?」


何だか言葉遊びの様になってしまった。確かに、普通は作り方を知らなければ作れない。なら、作れるということは作り方を知っているのと同義だというのが普通だろう。これは、実際に見てもらった方が早いかな。

俺は指輪からキュア草の根と空の瓶を出して、左右の手でそれぞれを持つ。婆様は、俺が何をしようとしているのか分からず、ただ俺のすることを黙って見ている。


「まぁ、見ててくれ。作成」


キュア草の根に魔力を通し、空の瓶を近づける。魔力を調節しながら、仕上がったポーションが瓶の中に入る様にイメージをする。

俺が魔力を使ったことで婆様が少し警戒するが、少しして俺の手元で起こった現象を見て、驚きに目を見開いた。

魔力を通されたキュア草の根は光に包まれて形を変え、空の瓶の中に吸い込まれていく。全てが瓶の中に収まり、光が消えた時には瓶の中に透き通る様な青色の液体があった。


「こんな感じで、材料さえあれば依代は作れるだろうが、他の人間に教えられる様な作り方なんかはさっぱり分からないんだ。悪いな」


俺の話を聞いているのかいないのか、婆様は目の前で起こったことが理解できずにぽかんとしている。

反応のない婆様の目の前でポーションの瓶を振ってみる。それでも反応がない。どうしよう。

目の前の放心している婆様をどうしたらいいかと思って周りを見ると、何人かの住人が不自然な体制で婆様と同じ様に固まっているのに気づいた。他の住人も異変に気付いた様で集まってくる。

様子のおかしい仲間の姿を見た一部の住人からの視線に不穏な気配を感じた俺は、両手を上げて何もしていないことを伝えるがあまり効果はなさそうだった。どうしよう。


「おい。これはどういう状況だ?」


そう言って、集まってきた住人の奥から姿を見せたキルツの叔父の姿を見て、俺はほっと胸を撫で下ろした。


「魔力の気配を感じたが。あんた、何かしたのか?」

「いや、彼らには何もしていない。俺の呼ばれた理由を聞いて、俺のできることを説明するのにスキルを使ったんだが、それを見た後からこんな感じで反応がないんだ」

「お婆様たちの反応がないのは、そのスキルの効果ではないのか?」

「いや、それはない。これを作って見せただけだし」


そう言って、先ほど作ったポーションを見せる。


「ほぉ。今の時代の人間が、これほど濃度の高いポーションを作れるとは。ふむ。ポーション自体は問題なさそうだな。ならば、作り方に問題があるのか?すまないが、お婆様に見せた様に作って見せてもらえるか?」

「別に構わないぞ」


俺はさっきと同じ様にキュア草の根と空瓶を手に持ち、ポーションを作ってみせる。

すると、キルツの叔父はあんぐりと口を開け、婆様同様に固まってしまった。周りで見ていた住人たちも同様だ。それを見てため息を吐いてしまった俺は悪くないと思う。


「おい。しっかりしてくれ」

「はっ!あ、あぁ。すまない。問題ない。想定外のことに、少し驚いてしまっただけだ」


キルツの叔父はそういうと婆様に向き直り、声をかけた。


「お婆様。お婆様。お気を確かに」

「はっ!私は何を」

「お婆様。お婆様は、あの人がポーションを作る姿を見て、意識を飛ばしていらっしゃったんですよ」

「ポーション。あれは、夢ではないのか?」

「はい。私もこの目で見ましたから」

「そうかい」

「はい」


そんなやりとりの後、二人して何か考え込む様に黙ってしまった。

会話の意味はよく分からないが、とりあえず婆様の意識が戻ったことにほっと胸を撫で下ろす。


「それで、俺の言った意味は理解してくれたか?」

「あぁ。よくわかったよ」

「なら良い。すまないな、力になれなくて」


そう言って、俺は親指にはめていた指輪を外す。力になれない以上、この指輪をもらう訳にはいかない。

外した指輪を返そうと婆様に渡すが、婆様は首を振るだけで受け取ろうとしなかった。


「初めに言ったが、それはあんたが持っていると良い」

「いや、力になれない以上もらう訳にはいかないよ」

「良いんだよ。まじないで、依代を作る技術を持つ者ではなく、技術を伝えられる者の元へ届く様にしなかった私の落ち度だ。あんたが悪い訳じゃない。迷惑料だと思って受け取ってくれないかい?」


一歩も引く気のない婆様に、俺は掌に乗る指輪を見る。

貰えるなら嬉しい。取り扱いには注意が必要だが、その面倒を差し引いても便利さが勝つ。今後、旅を続けるのか何処かを拠点に生活をするのか決めていないが、何にしても、最小限の荷物だけで動ける身軽さは魅力的だ。

だが、何となく、何も力になれないまま指輪だけをもらうのは気が引けるのだ。


「精霊が宿る依代って、そもそも何なんだ?」

「依代は、特殊な力を持つ弓さ。だけど、人との戦いの中で全ての依代が失われてしまったせいで、依代がどんな形をした物だったのか、どうやって作る物だったのかが分からないんだ。古い書物の中に必要な素材の記述を見つけて作ってみたが、精霊の力は借りられなかった」

「あんたでも見たことがないのか?」


そんな見た目をしてるのに、と口に出そうになるがぐっと堪える。が、婆様にはお見通しみたいだ。


「私は元々、争い事には興味がなくてね。一族を離れて、自由気ままに薬草の研究をしていたんだ。あんたの作ったキュア草の根を使ったポーションも試したことがある。当時は上手くいかなかったから根っこなんて素材にならないと思ってたけど、あんたが作るのを見てたらキュア草の根でもやっぱりポーションは作れるんだね」


また時間があれば研究したいねと言って、婆様が笑う。その表情から、薬草の研究をライフワークとして心から楽しんでいたのが伝わってきた。


「それが、ある日、一族の子に見つかって、里に連れ戻されたときには後の祭りさ。年長者は私だけ、里にいるのは青二才ばっかりと来た。大勢いた一族も数を減らしてしまって、ただでさえ増えにくいっていうのどうするっていうんだかね」


自重気味にこぼす婆様に、ちょっと同情する。放浪していた自由人が、いきなり一族を束ねる立場に立たされたのだ。色んな苦労があるんだろう。


「森の古道があれば危険のない旅さ。そのせいで、私自身も、作るはずだった依代を手にしたことがなくてね。あの時、作っていたら作り方を知ることができたはずだと後悔ばかりさ」


後悔先に立たず、だな。


「作るはずだったってのは、どういう意味だ?」

「あぁ。一族の者は、一定の年齢になったら自分で自分の依代を作るんだよ。自分の依代を持って初めて、一族では一人前と認められる。そう言う意味じゃ、私もまだ半人前さ。それに、依代は滅多なことでは使わない。ここぞと言う戦いの時に持ち出される物なんだ」


婆様は、依代を作る年齢になる前に里を飛び出したらしい。かなりの御転婆だった様だ。それに、争いを好まないせいで、依代が使われているところを見たことがないらしい。実戦で使われるところを見たことがないから、どう言う特殊な能力のある弓なのかも分からないと言うことだ。

当時の依代を持つ一族の人々は戦死。今残っているのは、戦時に依代を作る年齢に達していなかった者ばかりなのだそうだ。


自分で自分の依代を作って一人前の風習と、ここぞと言う戦いの時に使う秘密兵器的な物か。

里の住人の多くが弓を持っているが、あれは普通の弓で依代とは何かが根本的に違うらしい。何が違うのかは、分からない様だが。


そう言えば、親友の話す物語の中に特殊な武器で戦う話がいくつかあったのを思い出す。

武器自身が人格を持っていて認めた者にだけ力を貸すと言うものもあれば、武器に魔力を通すことで特殊な能力を引き出すことができると言うものもあったはずだ。右から左に聞き流してたから、詳しいことは覚えてないけど。


「話に聞く限り、一族の人間じゃないと作れない可能性もあるな。正直、そんな森の一族の特殊な武器が俺に作れるのか分からないが、もし精霊の力が借りられる依代を作れたとして、俺の作った物と以前に試作したものを比べれば、精霊の力が借りれなかった原因を調べることはできるのか?」

「失敗作と成功例を見比べれば、何が精霊の力を引き出しているのかを調べることはできるだろう。わかったからと言って、作れるという保証はないけどね」

「なら、一度やってみよう。ここで考えてても、どうしようもないからな。材料は揃ってるのか?」

「いや、試作するのに使ってしまった物もあるから取りに行かなきゃいけない」


材料を聞くと、里で用意できるものもあるが、里の外に取りにいかないといけないものがほとんどの様だった。

話し合いの結果、時間短縮のために里の男手を使って手分けをして採取に行くことになった。

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[気になる点] 人とは業の深い~の文はナチスのホロコーストなどを「高みを求める為の仕方のない行為」だと肯定している様にも見えます。そういった意図が無いのでしたら手を入れるべきかと思います。作者の意図は…
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