表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/61

格好良いは正義です。

ブックマーク、評価、ありがとうございます。

楽しんでいただけると幸いです。


特訓開始!(細かいところは気にせず読んでいただけると嬉しいです)

あれから、数日経った。

肉屋の奥さんからは、無事に友人の結婚の祝いができたとお礼に干し肉を大量に貰った。初めて大鼠を食べたが、意外と悪くなかった。干し肉は、狩りの最中のお供なので嬉しい。

マルクは、変わらず狩りについて来ている。剥ぎ取りも慣れて来たのか、気分が悪くなって離れることもなくなって来た。内臓の取り出しらへんは、まだ気分が悪そうだが。


「あのね、お兄ちゃん。僕にも、狩りを教えて?」


毛皮を干してる休憩中に、マルクがそんなことを言い出した。


「お前は、薬師になるんだろ?」

「うん。でもね、お兄ちゃんは冒険者でしょう?寂しいけど、いつかは村を出てっちゃう」


まぁ、必要があればな。今のところ、予定はないけど。


「そしたら、また、角が手に入らなくなるよね?」


あぁ、なるほど。


「お兄ちゃん以外の冒険者は、あまり角兎を狩ってくれないから。そうしたら、また、薬が足りなくなっちゃう」

「だから、自分で狩れるようになりたいってことか?」

「うん。駄目かな?」


まぁ、元々、角兎くらいは狩れるようにしてやるつもりだったから構わないか。


「そういうことなら、ちょっと待ってろ」


マルクの見張りを仔鹿にお願いして、俺は森で必要なものを拾い集めてくる。俺の持って来たもの見て、マルクは不思議そうな顔をしている。


「その木の枝、どうするの?」

「まぁ、見てろ。作成」


拾って来た枝を持って『作成』を発動する。作るのは、木の槍だ。

漸く、木や植物の種類の見分けができるようになって来たので、色々と『作成』ができるようになって来た。種類がわかると色々作れて便利なのだ。

初めは、何をしてるのか不思議そうにしていたマルクだが、枝が光った後に槍になってるのを見て驚いていた。


「お兄ちゃん、すごい!今のは魔法?お兄ちゃん、魔法も使えるの?」

「魔法じゃないけどな」

「魔法じゃないの?」

「たぶんな。俺も魔法を見たことがないからわからんけど。これは、俺の職業スキルで作ったんだよ」

「職業って、お兄ちゃん、弓師じゃないの?」

「俺の職業は生産。いろんなものを作るのが仕事だよ」


そういうと、マルクは驚いていた。


「弓師じゃないのに、弓があんなに上手なの?物づくりの職業の人は戦えないって、みんな言ってるのに?」

「そうなのか?」


武器屋の爺さん。あれ、結構やれると思うけど。まぁ、あの爺さんも規格外っぽい感じの人ではあるか。


「職業に関係ないことは、身に付けるのが難しいんだって」

「難しいだけで、無理ではないんだろ?なら、問題ない」


そういうと、マルクは目を丸くしていた。変なこと言ったかな。


「僕も、お兄ちゃんみたいに狩りができるようになるかな?」

「練習すればな。でも、簡単じゃないぞ?辛いことも多いが、それでもやるか?」


俺がそう聞くと、マルクは体の前で拳を握ると、ふんすと鼻鳴らして頷いた。可愛い。


「うん!僕、頑張るよ!お兄ちゃんみたいに狩りができるようになるんだ!」

「よし!なら、まずはこれを持ってみろ」

「さっき作ってた槍?お兄ちゃんと同じ弓じゃないの?」

「弓が良ければ教えてやるけど、今は槍だ。これは、森でも取り回しのしやすい短いやつだ。まずは、それを使えるようになれ」


槍は、安全な距離から攻撃しやすいし、手から離すわけでもないから狙いもつけやすい。昔の軍なんかでは、初心者向けの装備に使われてたらしいし、ちょうど良いだろう。

まずは、基本的な握り方や突き、払いの動きを教える。この世界のやり方とは違うかもしれないが、俺が教えられるのは薙刀とか杖術をベースにした動きだ。これさえできれば、他はなんとでもなるだろう。


「突いたり、払ったりするときは、当てたいところから目を離すな。最終的には、見なくても狙ったところに当てられるようになった方がいいが、初めは見ながら狙ったところに当てられるように練習しろ」

「うん。わかったよ、お兄ちゃん!」


そう言って、教えた動きを繰り返す。こればっかりは、体で覚えるしかない。

時々、変なところを直してやりながら、只管、突きと払いの動きだけをさせる。道場のちび達は、100回もやらせれば飽きて違うことをしようとするから苦労した。同じくらいの年齢でありながら、マルクは俺が止めるまで同じ動きを飽きることなく続けている。


「今、どこの筋肉を使って動いているのかを意識しろ。適当にやって形が崩れるくらいなら、1回を丁寧にするんだ」


道場なら鏡があるから自分の姿勢を見ながら修正できる。ここでは、感覚で覚えるしかない。注意深くマルクの動きを見て、細かく修正してやらなければ変な癖がつく。癖っていうのは、一度ついてしまうと治すのが難しい。だからこそ、丁寧に正しい動きを覚えさせる。

次第にマルクの息が上がってくる。そろそろ良い時間だ。毛皮も乾いたし、成長期前に無理はしない方がいい。


「マルク。そろそろ終わろう」

「ぼく、まだ、だいじょぶ、だよ?」

「毛皮も乾いたから、今日はおしまいだ」


肩で息をしているマルクに水を飲ませる。水を飲みながらも、不服そうな顔をしている。口がへの字になってるぞ。仕方ない奴め。


「マルク。強くなりたいなら、2つの約束を守れ。1つは、練習するのは毛皮を洗って乾かす間だけ。もう1つは、俺の見ていないところで練習しないこと。守れるか?」

「僕、もっと練習したい。そしたら、早く狩りもできるようになるでしょ?」


マルクの言葉に苦笑するしかない。俺も、昔は同じことを言っていた。でも、それは間違いだ。


「いいか、マルク。お前はまだまだ大きくなってる途中だ。急に負荷をかけすぎると、どこかに歪みが出てくる。それは、怪我につながる。一晩の無理が、10日の怪我になり、10日の遅れを取り戻すのに1ヶ月かかることもある。それを忘れないで欲しい。休息もまた、強くなるためには必要なことだ。わかるか?」

「わかんない」


んー、ちょっと難しいか。


「なら、俺を信じろ」

「お兄ちゃんを、信じる?」

「そうだ。絶対に角兎が狩れるようにしてやる。だから、俺を信じて、約束を守れ。できるか?」


マルクの目を真っ直ぐに見る。俺を写すマルクの目は、色んな感情で揺らめいていた。やがて、心が決まったのか、マルクはしっかりと俺の目を見て頷いてくれる。


「わかった。僕、お兄ちゃんを信じるよ」

「良い子だ」


わしゃわしゃと頭を撫でてやると、マルクは嬉しそうに笑う。仔鹿もよって来たので、撫でてやる。よしよし。


次の日からは、午前中に薬草積みと狩りをして、午後は河原でマルクの稽古を見ることになった。

初めのうちは筋肉痛で動きが鈍くなることもあったが、数日も経てば体が慣れたのかそう言うこともなくなっていた。若さの為せる技だな。

剥ぎ取りも見慣れて来たようなので、最近では、角の剥ぎ取りはマルクの仕事だ。コツを教えて繰り返しさせていると、すぐに覚えた。マルクが自分で剥ぎ取った角に関しては、俺は婆さんから代金をもらっていない。婆さんからお金をもらわなくても、お金には今のところ困ってないしな。


「マルク。一旦休憩だ」

「はぁい」


槍の稽古をしているマルクに声をかけると、素直に戻ってくる。木陰に座らせ、水と干し肉を渡して休憩させる。干し肉は、軽食兼塩分補給だ。

最近、日中の気温が高くなって来たので、休憩を多く取らせている。一度、無理をして倒れてから、俺が声をかけると素直に従うようになった。これも、体で覚えるっていうのかな。


「お兄ちゃん、何してるの?」

「これか?縄を作る前の下拵えだよ」


森の中には蔓科の植物も多く生えている。今は、その蔓の表面の硬い部分をナイフの背で扱きながら削いでる途中だ。


「お兄ちゃんのスキルなら、その作業、要らないんじゃないの?」

「たぶん、要らん。けど、気分の問題かな」


何となく、柔らかくしてからの方がしなやかな縄になりそうな気がする。正直、下処理はしなくても普通に物は『作成』で作れる。ただ、こうして下処理をした方が良いものができる気がするからしてるだけ。まぁ、自己満足だ。ポーション作るのに、根っこを洗うぐらいの感覚だ。


「それは何に使うの?」

「これか?色んなことに使えるが、今日のはマルクの訓練用かな」

「僕の?」


どう使うのか想像がつかないのだろう。まぁ、俺にとっても、使えるかどうかはやってみなきゃわかんないくらいのお試しだ。

集中力の高いマルクは、数日の練習で動きを覚えて来てる。少し早いが、次の段階に移っても良いだろう。

『作成』と『強化』をして作った縄に目印になる瘤を作る。木の棒を通しても良いが、的は小さくても良いだろう。手頃な木の枝に別の縄を張り、その縄に先程の瘤付きの縄を通して高さを調整する。


「マルク。こっちにおいで」

「これ、なぁに?」

「これは、マルク用の的だよ」

「的?」


的と言われて首を傾げるマルクは、俺と縄を何度か見比べた後、何かに気づいたようだ。


「そう。これは的だ。上から頭、首、胸、腰、膝。一番下は角兎の首のある位置くらいかな」


俺の話を聞きながら、マルクはじっと的を見ている。賢いマルクには、今、俺が挙げた部位が何を示すのか理解できただろう。


「マルク。今、お前に教えているのは角兎を狩るための力だ。だが、人を傷つけることもできる力だということを忘れるな」


どんな武術も、行き着くところは生き物を殺す殺傷術だ。如何に効率よく的確に相手の急所をつくかという技術。その技術があれば、マルクより幼い子供の力でも、大人を殺すことができる。そういう技だ。

マルクの目が戸惑いに揺れている。マルクは、純粋に角兎を狩りたいだけなのだろうが、力を持つということを正しく理解しなければならない。


「だが、その力は、お前やお前が守りたいと思うものを守る力にもなる。使い方を間違えるな」


手に持つ槍を見て、マルクは頷いた。ぽんぽんと頭を撫でてやる。今は分からなくても、いつか分かってくれれば良い。


それからは、それぞれの瘤に向かって、突きと払いの動きを練習させる。


「お兄ちゃん。これ、難しい」

「練習だ。姿勢を崩すな」


枝と枝の間に渡した縄に吊ってある的。もちろん、揺れる。打ち込むたびに、あっちに、こっちに。揺れる小さい的に当てるのは、なかなか難しい。


「無理だよ。こんなの当たらないよ」


流石のマルクも、集中力が維持できないみたいだ。仕方ないな。


「貸してみ」


マルクから槍を受け取り、構える。ちょっと短いな。まぁ、なんとかなるだろ。

狙いを定めて、腰を下げる。一つ呼吸をしてから踏み込む。上から順に突いて払って、払っては突く。俺にとっては慣らし程度のゆっくりとした動きだが、マルクにとっては少し早い動き。少しパフォーマンスも含めて、全ての瘤を打ち払う。


「お兄ちゃん、すごい!」


丸くして驚いていたマルクの目が、次第にきらきらしてくる。ふふふ。かっこいいは男の子にとって正義だよな。


「まずは、ゆっくりで良い。姿勢を崩さないで当てられるようになれ」

「うん!」


これで、しばらくは集中して練習するだろう。真剣な表情で丁寧に的に当てているマルクを見て、俺は自然と笑っていた。

子供っぽい主人公は、子供の扱いが上手です(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ