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初期動作の確認をしよう。

初めまして、こんにちは。

お目に留めていただいて、ありがとうございます。

読みにくいところなどもあるかと思いますが、楽しんでいただけると幸いです。

さらさらと水の流れる音に目を覚すと、小川の河川敷にある小岩にもたれ掛かっていたのだが、ここはどこだろう。


覚えていることは、何だろう。名前は、わかる。年齢も、わかる。状況は、分からん。が、こうなる前のことは、覚えてる。

確か、通学途中だったはず。辛うじて受かった第一志望の大学で、作業に明け暮れていた工業高校時代に遅れた青春を取り戻すんだと、意気揚々と入学式に向かっていたはずだ。

証拠に、現在の服装は謂わゆるリクルートっぽい感じになってる。そこ、自然豊かな状況の中、浮いてるとか言わない。

浮かれすぎていた自覚はある。普段から、不意に思いついて行動を起こすたびに、不本意ながら、周りからは残念な奴認定を受けて来た実績からも、大人しく人の流れに沿って会場に向かうべきだったんだろう。そんなことも忘れて、校舎の間に目的地が見えたからと言って流れから外れるべきではなかった。少し遠回りに見えたって、物事には必ず理由があるんだから、そのルートをみんなが歩く理由もあったのだ。

脇道に外れて数歩後に、俺は落ちた。たぶん、下水工事か何かの理由で開いてたマンホールの穴に落ちたんだと思う。そこ、今時そんな奴いないとか笑わない。俺も、そう思う。ただ、言い訳をするなら、作業員さんも居なければ、看板も何も無かったんだから、俺は悪く無いと思う。


そんな事からのこの状況。信じたくは無いが、謂わゆる異世界転移だろうか。

どうして異世界かっていうと、川の向こう側の木になってる実が、明らかに地球産では無い色をしてるからだよ。ははは、紫の地に黄色の水玉模様の実なんて、ジャングルとかの秘境ならまだしも、こんな陽気な小川の側にあるわけないじゃ無いか。俺は、認めない。

まぁ、こうなってしまったからと言って、今更どうにも出来ない。戻る方法もあるかもしれないが、今すぐには無理だろう。幸いというか、こう言った状況の話に免疫がないわけでもない。俺自身はMMORPG派だが、書籍や電子を問わないラノベ派だった親友が、こういう状況になったらどうするかというのを語るのを聞かされていた。その中に色々とヒントになりそうなことがあるのだから、耳にタコができるほど聞いてて良かった、と初めて親友に感謝してやっても良いと思えた瞬間だな。ゲームの邪魔とか思ってて、すまん。


そんな親友の格言、その1。まずは『ステータス』を唱えるべし。


「ステータス。お、本当に出た!ゲームみたいだな。えっと、名前と年齢とレベルと、職業?って、この世界、レベルがあるのか。まんま、ゲームだな。職業、生産?生産職ってことか?」


ステータスボードは、オーソドックスな透明な青い板で、名前と年齢、レベルと職業が表示されている。ゲームだと、スキルや攻撃力などの能力値が色々書いてあるが、この世界では主にこの4項目ということだろう。違うかもしれないが、今分かるのはこれくらいだった。

現在のレベルは、勿論というか、0である。これも、定番と言えば定番だが、このレベルで近くの人里まで辿り着くというミッションをクリアしてきた物語の主人公には、ゲーマーとして賞賛を贈りたい。無理ゲじゃん。

しかも、戦闘職じゃない生産職ときた。とりあえず、現在地が危険地帯じゃ無さそうな事を喜ぶべきだろうか。


「ステータスの確認をしてはみたけど、どうしようか。とりあえず、レベル上げは必須として、この世界の生産職って、やっぱり専用アイテムとか要るのかな?一時期、生産職に嵌ってた時期があったけど、専用アイテムに素材代にって、かなりの金食い虫だったんだよなぁ。となると、金策もしないとだよな。はぁ、マジ無理ゲじゃん」


幸いにも、まだ早朝に近い時間っぽいので、余裕がある。夜になるまでには、現状を何とかしたい。出来ることは限られているけれども、動かなければ進まない。


と言うことで、親友の格言、その2。とりあえず、スキルボードを弄るか、色々と関連のありそうな事を唱えてみるべし。


スキルボードは、触ってもうんともすんとも言わないので、ちょっと恥ずかしいが唱えるを実行すべきだろう。関連事項に関しては、以前の経験が活きる事を期待しよう。


「まず、生産といえば作成とか精製、精錬あたりだよな。でも、素材も無いのに作成はできないから、何か素材になる物が要るんだけど、何が素材かが分からんときた。ほんと無理ゲ」


素材になるのもの代表としては、植物系、生物系、鉱物系がメインで、たまにスピリチュアル系なんてのもある。物語とかだと、その世界独自の不思議系もあるらしいが、現状は除外としよう。レベル0の俺の現状で手に入るとすると、周りの草木から採取する植物系か、足元に落ちてる鉱物系だろう。見るからに、石ころだが。草なんて、工業特化の俺には、余計に分からん。


「こうなると、やっぱ素材一覧みたいなの欲しいよな。一覧、図鑑、メニュー。駄目か。となると、ゲームでもあったし、これかな。レシピ。よし、なんか出た!」


『レシピ』というと、スキルボードの上に、新しいボードが出てきた。こちらのボードは、タッチパネル式みたいだ。選択できるのは、素材一覧と完成品一覧。素材一覧は、予想通りの3項目。完成品一覧は、なんかいっぱいある。一応、系統分けはされてるみたいだが、とりあえず、一番上にあるものを開いてみる。


「これも、定番といえば定番だけど、ポーション。効果は、怪我の状態や体力が回復する。普通だな。材料は、キュア草の根。キュア草ってなんだ?分量も書いてないんだが」


素材一覧でキュア草を調べてみると、森の中に生えているらしい。探せば見つかるだろう。あとは、どれだけの分量が必要で、どう加工するかだが、取ってきてから考えよう。

サバイバルにおいて、水の確保は何にも増して優先されると聞いたことがある。幸い、小川には生き物がいるようなので、飲めるだろう。たぶん。となると、川から離れすぎるのは良く無い。あとは、歴史的に見ても、水のある側には人里があることが多いらしいから、とりあえず川を降る方向に歩きながら、少し入った森の中を調べてみようか。

ジャケットとネクタイを鞄にしまう。財布と携帯と飲み物くらいしか入ってないから十分入る。靴は、歩き難いが怪我をしても嫌なので履いたまま。鞄も邪魔だが、失くすのはなんか嫌なので、持って行こう。

森に入る前に、手頃な木の棒を拾う。足元の草をどけて歩くのにも、杖代わりにも使えそうな感じのやつだ。なんか、小学生の時に田舎の爺さんとこで、山菜採りしに行った時のこと思い出すな。山の歩き方とか、食べれる野草の見分け方とか、色々教えてもらった気がする。爺さん、元気かな。去年、会いに行った時は、80歳とは思えんほど、元気潑剌っぽかったから大丈夫だろうけど。


さて、どれくらい歩いたか分からんが、キュア草っぽいのを見つけた。たぶん、これだろう。勘だが。違ったら、探し直せば良いことだ。必要なのは根っこらしいので、手頃な枝と石を使って、傷つけないように掘り返す。たけのこ狩りで、根元を傷つけて拳骨を喰らったことがあるので、傷つけない大切さは知っている。

綺麗に掘り返した根っこから土を払ってみる。流石に、このままでは使えないと思うので、後で川で洗おう。根っこのサイズは、大きくは無い。量がどれくらい要るのか分からないので、もうちょっと集めてから川に行こう。何回も出たり入ったりが面倒なわけでは無い。


いくつか集めて川に戻って、根っこを洗う。うん、ただの根っこだね。ほんとにキュア草だろうか。不安になってきた。とりあえず、これをどうすればポーションになるのかが分からないが、必要なのは根っことのことなので、慎重に根と葉を分ける。葉は横に置いておいて、根っこだけを集める。

ここからが問題だ。

まず、ポーションというからには、勝手なイメージだが液体だろう。入れ物がいる。鞄の中のペットボトルで良いか。とりあえず、残りを飲んで、川の水で洗って、念のため乾かす。

次に、どうやって出来たポーションを入れるか。漏斗のようなものはない。流石に、ペットボトルの口に根っこは入らない。

まぁ、そもそも道具がなくてできるのかってことからして問題なので、試行錯誤するしかない。試行錯誤は、高校時代に嫌という程してきたので慣れてる。


「一発で出来たら、儲けものってことで。現状でできることからして行こうか。あくまで根っこは材料。このままとか、潰すだけでは出来ないと思うんだよな。潰して絞るのも有りだけど、何かの処理が必要だろうしな。あんまり現実的じゃないけど、ここは異世界。異世界っぽいとこからやってみるか」


根っこを両手に乗るだけ乗せて、乾いたペットボトルの上に持ってくる。これで、万が一、液体になっても少しは入るだろう。


「お次に、物質を変質させるんだから、定番で言うと、錬成、錬金、精製、精錬、調合、生産。違うか。あとは、簡単だけど、作成。ん?なんか、動いた?」


『作成』の言葉に反応したのか、何か動いた気がした。主に、俺の体内で。

これは、あれだろうか。ステータスに表記はなかったが、謂わゆるMPや魔力のようなものがあるのだろうか。となると、ゲームでありがちなMP切れなどもあるかもしれない。自然回復なのか、アイテム消費なのかは分からないが、回復手段はあると思う。たぶん。問題は、ポーションを作るのに、どれだけのMPが必要なのか。


「とりあえず、作成。んで、この動いてるっぽいのを、手の根っこの方へ。お、動いた。よしよし。あとは、どんなけ要るかだが、んー、もうちょいかな。もうちょい、もうちょい。やっべ、超むずいんですけど。んー、こんなもんか。って、え?」


人生初の魔力操作らしき行為は、不慣れゆえか、微調整にかなり神経を使う。目を瞑りながら、根っこ全体に魔力らしきものが行き渡るのを感じていると、不意に手元の根っこの感触が消えた。

びっくりして目を開けると、掌から根っこが消えていた。辺りを見回しても、根っこはない。もしやと、ペットボトルをみると、なんか液体が入ってた。これは、ポーションが出来たのだろうか。


「透明度は高い。が、かき氷のブルーハワイみたいな青だな。飲めるのか?傷にも効果があるみたいだから、かけても良いのか。まぁ、あんまりどっちも使いたくないけど。とりあえず、材料があってたら、これはポーションだろう」


とりあえず、作り方はわかった。『作成』と唱えて、材料に魔力を満たす。量は、数字が見えないから、感覚だけど。

とりあえず、さっきので250mlのペットボトル半分くらいできた。もう二山の根っこがあるので、一つはさっきの感じで作ってみよう。今度は、目を開けたままやってみると、感覚でこんなもんかなって魔力量になって供給を止めた時、根っこが光ってペットボトルに入っていった。ファンタジーだ。

次に、残った一つを更に半分に分けて、片方は魔力を少なめに、もう片方は魔力を多めに供給してみる。すると、さっきと同じように光ったあと、少ない方は変色し、多い方は消えた。え、消えたよ。マジか。

変色した方は、見るからに再利用は不可能っぽい。そのまま捨てるのも心配なので、魔力過剰にして消してしまう。うん、出来た。


「さて、作り方はこれであってるとして、まだ、日が高いから人里を探してみようか。真面な武器がないのが心許ないけど、このまま此処にいる方が無用心だよな。問題は、この格好で怪しまれないかだけど、その時の他人の服見てから考えよう。とりあえず、ステータス。んで、レシピ。んー、この辺の材料で防犯用に作れるとしたら、この辺りか。よし、現地調達しながらだな」


必要な情報を頭に入れて、再出発。鞄と木の棒をお供に、道無き道を歩いていく。もちろん、川を見失うようなヘマはしない。

足元だけでなく、樹上も気にしながら歩いていると、時々、食べられそうな物を見つけられた。『レシピ』の素材一覧で調べると、似た特徴の木の実の説明文に食用とあるので、大丈夫だろう。匂い、問題なし。ちょびっと齧って、味の確認。とくに苦味も痺れる感じもないので、大丈夫だろう。遠慮なく頂戴する。誰かの領土とかで問題になったら、その時に考えよう。

怪しげなキノコも散見されるが、必要なものだけ採取して進んでいく。あんなの取るバカは居まい。

更新は、不定期です。

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