まえがき
まず、前置きとして、これからする話の多くは、実話がもとになっている。
もっとも、これは小説である以上、当然ながらいくつかの脚色も混ざっている。
どこからが真実で、どこからが虚構かは、敢えて告げない。
だから、この話には、オチも解決も無い。
ただ、なんとなく終わる……日常の中の非日常なんて、概ねそんなものだ。
例えるならば、一瞬のラジオノイズ、一時のまどろみの合間に垣間見た夢幻の類……それと同じく、日常に潜む、ささやかな暗がりの物語と言ったところだ。
さて、これらの話の時代としては、今から30年近く前の1990年代の話が中心になる。
ネットも携帯もなくて、夜の闇が今よりほんの少し濃かった時代。
登場人物たちは、当時の私の友人達だけど。
彼らをそのまま、登場させるほど、私も鬼ではないので、彼らの名前や性格や性別は、勝手に改変している。
それと、話としてまとまりを作るために、いくらか情報を追加していたり、実際とは少し違った展開になっていたりもする。
この辺が脚色された要素だと思って欲しい。
話の舞台は、その当時私の住んでいた町田、相模原を中心としたエリア。
西関東と呼ばれる都会のようで都会でない、微妙な地域が当時の私の行動範囲であり、主な話の舞台となる。
地名や当時の施設やらは、ほとんど実名で出しているけど、今はなくなっているのも多い。
30年も経てば、町並みも地名すらも変わってしまう……全ては過ぎゆくもの。
人も町並みも、時の流れの中では皆、移り変わるものなのだから。
未成年の飲酒や喫煙の描写もあったりするけれど。
80-90年代って、概ねそんな調子だったんで、それも時代故にだと思って欲しい。
では、今より少し闇が濃かったあの頃へ、ご一緒に……。