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捨てられた令嬢は、いつの間にかに拾われる  作者: 吉高 花 (Hana)
第三部

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19.勉強2

 言葉とマナーと歴史の勉強。そしてなぜか護身術。

 護身術以外はデジャヴですね。ええ。内容は違いますが。


 なんで私、隣国のマナーに詳しくなっているんでしょうね?

 そしてなぜ自分の身を守る練習をしているのでしょう?

 どうして私はまたこんな異国に来てまで勉強漬けなのでしょうか?


 はい、どうやら私は王族の通訳として呼ばれたらしいですよ。

 しかもどうやら内緒らしく、会える人が制限されている気配を感じます。


 一体なにが起こっているのでしょうか?

 私は何に巻き込まれているの?


 ええもちろんマナーが悪い通訳なんて王族に近付けてはいけません。下手をすると王家の品格が疑われて通訳を手配した人の首が飛びます。国が違えばマナーも多少変わるようで、私が知らないマナーがいくつもありました。知らなかったら恥をかいていたでしょう。

 通訳をするなら、国や人の歴史も知らなかったら誤訳の危険もありますね。そうなったら下手をすると国際問題です。もちろん私はこの国の歴史なんて簡単にしか知りませんでした。王族におかしな事を言わせるわけにはいきません。

 もちろんわかりますよ?


 でもね?


 それなら何故もっと適任の人に任せないのかと。

 なんでこんな小娘を連れてきて、手間暇かけて教え込んでいるのかと。

 そんなの国内で探せと。


 護身術だって、どうせその王族になにかあった時には自分で自分の身を守れということでしょう? 巻き添えをくらったら自己責任で対処して逃げろと。何故そんな物騒な事態が想定されているのでしょうか。教えて?



「通訳を探していてね。ぜひ君にお願いしたいのだけれど」

「まあ、私にできることでしたら喜んで」


 フリード様のお言葉に、半ば社交辞令のようにお答えしたあの日から早数か月、あの迂闊な一言のお陰でまさかこんな苦労を背負うことになるなんて……なぜこんなことになったのでしょう。


 てっきり母国のパーティーで、ちょっと簡単な会話の仲介でもするだけだと思ったのに、なぜこんな大国の王族と関わるようなことになってしまったのかしら。おかげで猛勉強させられていますよ。読めるだけで話せないって、言ったではないですか。もう少し人選は慎重にしましょうよ、フリード様。あ、まさか読める人さえもいなかったの? わが国には。えぇ……。


 最初はそんな感じで大変憤って、そして戸惑っていた私。

 こんなひよっこには大役過ぎると怖いどころではありません。


 だからそんなふうに訳もわからずに振り回されていた私のところに、ある日あの仮装パーティーの時にお世話になった侍女のアンナが来てくれたのは、本当に嬉しかったです。異国での知った顔というのは本当にほっとしますね。


 そしてアンナといえばディックと知り合いのはず。

 もちろん思わず根掘り葉掘り聞きましたよ。

 どうしてこんなことになっているの? なぜ私なの? ディックは知っているの?


 アンナも最初は口止めをされていたらしくあまり教えてはくれませんでしたが、私のあまりのしつこさとその不安さに同情してくれたのか、いつしか少しずつ教えてくれるようになりました。


 その結果わかったこと。

 どうやらディックは王宮にお勤めしているらしいです。しかも王太子の補佐官だそうです。あの幼馴染がすごい出世をしていました。

 そしてどうやらこれからイストとセルトリアの和平を進める上で王太子に通訳をつける必要が出て、ディックが私を推薦したらしいです。


 何をしてくれているのでしょうか、ディック。

 しかもそれならそれで、本来なら私に会いに来て、直接説明してくれるべきではないかしら?


「……実は今はアーニャ様の存在は極秘ということになっていまして、ここには表向きはリンデン伯爵夫人だけが滞在していることになっているんです。そして王太子殿下の命令で、この館には男性の立ち入りが一切禁止になっております。女性も許可のある一部の人しか入れないんですよ」


 ええ? だからこの館、使用人がみんな女性なの?

 でもなんでそこまで厳重に隠されているのかしら私……。

 どうして?


 えっと……大丈夫よね……?

 …………本当に?


 でもさすがにアンナもそこまで詳しくは知らないらしく。


 だけど一緒に住んでいるリンデンのおば様が、


「よっぽど繊細なお仕事になりそうねえ。でも大丈夫よ、アーニャちゃんなら! 王族が関わってくるとどうしても秘密が多くなっちゃうから、もう諦めなさいな。どうせ私たちにはわからないんだから、悩んでも仕方がないのよ~。まあ、お茶でも飲みながらちょっと休憩しましょう。ね?」

 なんてお気楽なので、なんとなく流されてしまっている私。


 結局なんだかんだと周りになだめられて、なんだか腑に落ちないままに勉強に追われる日々。ま、まあ知識は無いよりは有った方がいいわよね? 本で読むより習う方が効率的だし……。


 おかげさまでアンナや家政婦のマチルダに褒められるくらい言葉も上手になりました。もちろん他のお勉強も頑張りましたよ? でも一番苦労したのは言葉だったので、ええ、褒められて嬉しかったです。


 なにしろもとは同じ国の言葉なので文法などは似てはいるのですが、どうやら国が分かれてからはお互い独自に発展したらしく、なんというか、この国からしてみれば、私の母国イストの言葉は訛りの強い方言のように聞こえるようです。

 なので私は凄い田舎から出てきたばかりの訛りのきついお上りさん状態から、きれいな標準語を話せるように矯正する教育を受けたようなものですね。はあやれやれ。


 母国では美しいと褒められた発音や滑舌を細かく注意されるのは、なかなか悲しい気分になるものです。

 とっさに出てくる言葉まで変えるのは大変なのよ。


 だからもう言葉の先生から合格をいただいた時の嬉しさったら!

 これでやっと私、通訳としてのスタートラインに立てたのかしら?


 おばさまが私の努力を褒めてくださって、お祝いをしてくださるくらいには私は大喜びしたのでした。ちなみにおばさまは毎日なにかと自由にお出かけされて、なんだか楽しそうでしたよ、私と違って。ええ、羨ましいですね。


 それに対して私は結局外出出来ず。せいぜいが中庭のお散歩程度で止められています。もうこれほど隠されているということは、まさか国家機密に関わるのではと最近は疑い始めました。


 私、通訳よね? ただの。通訳ってそんなに危ない橋を渡るもの?


 それでも一旦は引き受けてしまったことだし、周りに母国イストとこのセルトリアとの友好の助けになるからと言われてしまうと、お役に立てるなら出来るだけ頑張りたいという気持ちもあって。


 今、イストとセルトリアは、今までの険悪な関係を改善しようと動き出したばかりだと新聞を読んで知ってしまったから。

 その動きが上手くいけば、きっとこれからは国同士が仲良くなって交流も増えるだろう。それはとてもいいことだと思う。


 それにもし将来何かがあって生活に困ったら、私は本格的に通訳をして生きていけるのではないかと最近は思い始めました。うん、手に職万歳……。


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このお話がフレックスコミックスさんから

コミカライズされました!

捨てられた令嬢は、いつの間にかに拾われる 表紙
構成は 兎原シイタ先生、作画は 采池たく也先生です!
とっても素敵に描いてくださっているので、ぜひこちらも見てみてくださいね!
どうぞよろしくお願いします!
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