レールの失敗
まるで、星が降っているような光景だった。
あまたの光は、地上に落ちると狂気と硝煙を撒き散らし、最後には、抉られ飛び散った大地が残る。
「砲兵隊!もっと威力をあげれんのか!」
彼の怒号は、味方に向けるには、さぞ殺気の篭もったものであった。
威圧だけで萎縮してしまう兵士もここでは、生きるか死ぬかの瀬戸際である。それ故に、敵か味方かの違いだけだった。ならばと生存率の高い方の声を聞かんとする。
「ウェイン隊長!恐れながら、これらの魔法陣では、威力の限界であります!」
甲高い声が泥やら煤やらが着いた兜の下から威勢よく吠える。
「黙れよ!レール班長!貴様の泣き言は、もう聞きあきた!アッチローテでの貴様の言い分を聞いてやったツケがこれだ!どうにかしろ、お前の命ひとつでこの状況を打開できるなら喜んで私がお前を殺してやるぞ!」
そう迄言うには、事実をなぞる方が早いだろう。
過去、アッチローデと呼ばれる辺境で、行われた小規模な戦争。
それは、先にレール班長に呼ばれたウェイン隊長が率いるキック師団をもつオレンジ王国が北へと領土を拡大しようとした為に起こったものだ。
斯くして、そんな戦争もそう珍しいものでもなかったのだが、レール班長の持つ魔法大隊が問題だった。
てこを利用した投石機や、弓兵隊による一斉射撃それらを上回るという期待を持って作られた試験隊。それが無残にも最弱の戦力だとは、誰も思わなかったのだ。淡い期待を抱かせるのは、南の魔女と呼ばれるたった一人の最強が戦略魔法と呼ばれるまでの大爆発を起こし、地形を変えるほどの威力を世界に知らしめたことが事の発端。各国では、同じような試験隊が作られては、解体されを繰り返している。
アッチローデの戦争で敵の数2000を小指の程にも削れなかったのである。
現在、ウェイン隊長が怒鳴るのも納得が行こうというものだ。
「命を媒介にした魔法は、ついぞ聞いたこともございません!」
レール班長は、魔力枯渇により疲弊した頭を使おうにも、知識がないのでは、運用もない。
「レール!貴様どうやら死にたいらしいな…だがその前に盾になる事ぐらいできようぞ。この戦争で大盾も予備で大量に持ってきておる魔法大隊は、それを持って突貫だ!」
「我々の筋力では、2人でひとつを持つのがせいぜいで……」
「二度と私の前に現れるなよ。うっかり殺してしまう。分かったらさっさと突貫だ」
「黙っていれば…調子に乗ってー!!」
レール班長こと、レール・ヌーピーは、今年で17だ。いくら試験隊とは、いえ班長に上り詰めるには確かな実績がないとそうそうなれるものでは無い。確かに、彼には才能がある常人の数倍は、ある魔法力。それを使えるだけの知識だが、軍に必要な破壊力という意味での力が彼には、無かったのだ。せいぜい使えて初級魔法の全属性発動率の高さくらいだ。
だから、戦場では、大規模魔法陣による中級以上の広範囲魔法に参加できずにいた。そのせいで、部下からは、陰口を叩かれタダでさえ肩身の狭い隊の虐められっ子のようなポジションだ
ストレスは、半端じゃなあなかった。
ただ、魔法力と精神力は、比例してしまうので心が病んでも本当にどうかしてしまうことが出来ないでいた。
それが今、あんまりな命令が引き金となり爆発したのだ。
「死ね」
ウェイン隊長の軍刀が抜刀する際のタメも見せずに、ふり抜かれ横這いに迫る。
「「お前が死んでしまえー!!!」」
瞬間ウェイン隊長を初めとする周りの人の動きが止まる。
「「「イェッサー!!」」」
動きを止めたもの全員だった軍の原則として所持を義務付けられたナイフで喉を掻っ切ったのだ。
ウェインは、そのまま自らの首を綺麗に落とした。
「ハァハァハァハァ……やってしまった…」
偽神命令
レールの力は、攻撃魔法に置いては、初級魔法がめちゃめちゃ強い位のものだった。
中級以上の魔法の発動は、上手くいかない。
だが、軍の試験では、目標の破壊が魔法で出来れば良しとなる
そのため、目標を多く削ったレールが認められたのだ。
だが、真の力は、そうでは、ない。
精神汚染魔法
それは、普通の魔道士、魔法使いと呼ばれる者達が1日、2日に1度成功するかしないかの魔法である。
それをレールは、生まれ持った才能により九割九分九厘発動させることが出来るのだった。
「はは、ははは、これで、俺も終わりか〜」
レールは、自らの声による絶対的支配が成就した事で、起こった惨状を理解し未来を考え絶望し、多分に減った魔法力と一緒に意識も手放したのだった。