すれ違う互いの心
その朝は大変だった。
何しろ朝ユナが目を覚ました途端にレイのベッドから飛び起き、レイはユナが立ち上がる瞬間に肘鉄を食らう羽目になったのだ。
「ごめんレイ!私、わざとじゃないんだけど・・吃驚して」
「――――――!!」
レイは気絶した。なんと肘鉄は顔面直撃だった。
「レイ、レイ、・・・レイ!!!」
レイはユナの揺さぶりながらの叫びにようやく目を覚ました。
「ん・・・ユナ―――?」
「大丈夫??御免なさいね、許してねレイ。」
「―――・・・」
ユナのあまりの申し訳なささにレイももう笑うしかなかった。
「―――いいよ。ところで・・・家事とかってやった?」
「うん。普段レイがやってそうなことやっといた。私、レイが心配でいてもたってもいられなかったから彼是やっておいたの」
「うんうん。わかったよ、ありがとうユナ」
「と、当然よ!守護神なんだから!仲間の一人も守れないようじゃあいけないもの」
ユナは赤くなる顔を隠しながらレイの頭にちょこんとのせてあるお絞りをまた冷水に浸し、絞った。
レイはポツリと呟いた。
「もう僕たちが出会ってかれこれ三年か」
「・・・それが、どうしたの?」
ユナのあどけない表情にレイは思わずお茶を噴出しそうになった。
「プッ・・・!ゴホッ!いや・・・えっと」
レイは咽ながら途方にくれた。
「え、だから、もう出会って三年もたつじゃん!?ユナはどう思う?」
「んー・・・どうして?」
「どうしてって―――」
なんでユナは分からないんだ?僕は、ずっと―――
いや、ユナは何も思ってないのかも。
「・・・べっつにー!何にーもないデース!!!」
「どうしたのレイ?ヤッパリ頭打たれてオカシクなっちゃった?」
「・・・もういいよ!僕・・・馬たちの世話してくる!」
「え!?まだ怪我が―――」
レイは上着を引っ掛けて勢いよく小屋を飛び出していった。
ユナはその後姿をずっと眺めていた。
「・・・レイ・・・?」
「どーしてユナはなーんにも分かってくれないんでしょーか!ねえ馬さんー」
レイは馬小屋で愚痴っていた。
馬はキラキラした目をいっそう輝かせてレイを見据えた。
とっても嬉しそう・・・僕愚痴ってるのに。
レイは耐え切れず叫んで馬に抱きついた。
「ありがとう!馬さん!!僕、僕、馬さんのことだーいすき!」
牡馬は嬉しそうにぺろぺろとレイを舐めまわした。
「うわっちょっと馬さん!もう、くすぐったいよ〜」
あれ? 確か、馬にも名前あった気がする・・・
「えっと―――ありがとう、ロイス!」
「ヒヒーン!」
名前で呼ぶとより嬉しくなったらしい。やっぱり可愛い・・!
「よし、何はともあれ・・・ユナと仲直り大作戦を決行しよう!行こ、ロイス」
「ブルルッ」
レイは牛と羊達の餌と水を補充すると、ユナの馬、ジーミーとロイスを引き連れて小屋の前にやってきた。
いやーしかし、馬って賢くて、なんて可愛いんだ!レイは幸せな気分で小屋の扉を開いた。
「・・・ユーナ?居るの」
「・・・・レイ」
ユナは机に突っ伏していた。
ユナにしてみれば、さっきの出来事は自分が嫌われたのかと思った。
「あのー・・・ごめんね、さっきは。だから、気晴らしといってもなんだけど・・・馬に乗って遠乗りに行かないかい?」
レイはすまなそうに手を差し伸べた。
ユナは嫌われてなかったんだ!の一言を心の中で叫んだ。
「ええ、行く。今すぐ準備するわ。何処に行くの?」
「フフフ・・・それは秘密」
「・・・・・準備してくるわ」
レイのニタニタした表情に思わずのろけてしまうユナ・・・レイがなんか恐い。
「よーし、馬と一緒に嵐の森絶景スポット探検ツアー!ただいま出ー発!!」
レイは馬に乗って叫んだ。
探検みたいなのは前にもありました。が!
今回は少し違います。いや、同じの方がおかしいですが・・・
次話でお話がグッと進む予定です。
誤字、脱字など何か意見がございましたら教えて欲しいです。よろしく御願いします。