恋路は果てしなく遠く
「あ、ユナごめん遅くなってー」
そういってレイは馬から降りた。馬からだ。
「・・・へ!?レイ、その馬、どしたの」
ユナは紐と糸が入った紙袋を手提げにしまいこみながらレイに目を向けた。
レイは馬から下りてユナに向き合った。
「牧場行ったら馬と牛と羊がいてね、僕日ごろの村アルバイト貯金を使って買ったんだよ!
毛並みが綺麗で素敵だろう?」
「うん、凄く可愛いけど。森で飼うんだよね」
「まあそういうことになるね。ユナも馬飼う?」
レイは手綱を引き、牛、羊、馬を二頭ずつつれてきた。
ユナも飼う事前提であるのは丸分かり。
ユナは嬉しそうに馬に乗ると、牛と羊を連れながらレイと森へ帰った。
「私、この子はジーミーにするわ」
ユナは前まで薪が積み上げてあった古い動物小屋で藁の上に座りながら雌馬をなでた。
「それから、羊はリーアム。牛は・・・クーにしましょ」
「面白いね、その名前。僕は・・・馬から順にロイス、クラウド、エンボスにしよう」
「まあまあ。可愛い男の子ね、レイとそっくり」
「え、僕!?可愛い!?」
「昔のことよ。今は・・・」
「今は・・・?」
ユナはうっかり口を滑らせそうになった。
危ない危ない。この気持ちがレイになんかに知られたらこの世が終わる。
レイの方はレイの方でユナの口からどんな言葉がこぼれてくるのか気になって仕方なかった。
僕、やっぱりまだヘッピリ腰なのかなあ・・・
いや、やっぱり臆病者?
両方ー!?
「うー・・・ゴホン。なんでもな・・・いわ。レイ気にす・・・しないで」
「いやいやいやー!めっちゃ気になりまっせ旦那ー」
「ふっ、旦那の言うことがきけねーのか情けねえ。とっとと寝るぞ」
ユナは昔の暴言口調に戻った。いつもはレイの反応を気にして直すのだが。
レイはどうしてユナを旦那に例えてしまったんだろうと内心後悔した。
ユナ乗りがやけにいいとこ変わってないんだよなー・・・
「はーい。じゃあ着替えて歯磨きね。動物は明日の朝散歩させよう」
「うむ。いくぞよレイ。私の服はどこじゃ」
なんか貴族っぽくなった、口調が。
「おやすみ、ユナ」
レイは欠伸をしながらベッドに潜り込んだ。
蝋燭の火を吹き消そうとすると、ふいにユナがフラフラとやってきて、レイのベッドに入った。
レイはいきなりでビクッとした。こんなこと一度も―――
「・・・レイ今日は寒い。ココで寝る」
「ぼ、僕の立場は?」
「ここで一緒に寝るの。」
「・・・・・・。」
「何よ」
「別に。じゃあ、おやすみ!」
「おやすみ」
レイはお休みといいながらユナの観察を始めた。
ユナは目鼻立ちが整ったきれいな顔立ちをしていた。
幼い頃と比べて、綺麗になり、そして優しい心を抱いた。
しかし、森にたいしての揺ぎ無い眼差しは変わらず。
綺麗な瞳・・・レイは思わず見とれた、昔も。
「・・・・レイ・・・・」
「へ・・?」
レイはハッとしてユナの寝言に耳を澄ました。
なんかもう寝れる状況ではなかった。
「・・・レイ、・・・き」
「?(なんていってるのユナ?)」
レイはやがてうとうとし始め、ついには眠りについた。
なんか恋心が物語を左右している・・・・気がする!