守護神になるよ
ブクブク・・・・
ブクブク・・・・
ブクブク・・・・
ピタッピタッ
さっきからずっとこんな調子である。
鍾乳石から雫が落ちる音、そしてレイとユナの息継ぎの音のみが、洞窟の中に木霊している。
「・・・プハッ!!ユナ!いったい何処まで行くんだよ!?」
「・・・プハッ!!もうすぐだ!」
息継ぎの間の短い会話を終えたユナは、再び潜った。
「・・・洞窟なんて、いつ見つけたんだよ・・・!」
内心あきれ果てながらレイも続けて潜った。
「・・・プハッ!!レイ、見ろ!着いたぞ・・・!!!」
「プハッ!え!?ココって・・・」
そこは、レイが本で読んだ風景だった。
透明に近いスカイブルーが、深く広がっていた。
いつの間にか、レイとユナは海へと出ていたのだった。
広がる空、爽やかな潮の香りが、洞窟に飽き飽きしていたレイの体中を刺激した。
「なんて、景色・・・こんなのあったんだ」
感嘆するレイに、ユナはフフンと鼻を鳴らした。
「凄いだろう、そして、寒いだろ?さあ、岸へ上がろう」
「う・・・そう言われると確かに寒い」
レイは体を震わせながらユナの後を泳いだ。
ユナとレイは浜辺へたどり着くと、すぐさま火をおこし体を暖めた。
「ふー・・・まさかこんな所に繋がってたなんて」
「すごいだろう?私はこういう抜け道をいーっぱい知ってるんだぞ」
「・・・でもここもう森じゃあないよね」
「・・・・・・・・・良いではないか、別に!」
開き直るユナに、レイはクスっと笑った。
「ユナは面白いね」
「む!?そうか!?」
「うん、そういうとことか」
目を真ん丸くするユナにレイはさらに笑った。
「僕、ユナがいるなら、守護神になっても良いかな」
ユナは目を光らせた。
「何!?本当か!!」
レイは、深い眼差しでユナを見つめた。
「・・・うん。やるよ、ユナ」
「ほんとに、ほんとか??」
厳しい表情のユナの手を、レイは握り締めた。
「ほんとだよ。」
ユナは一瞬屈みこんで顔を隠した。
そして、レイのほうをゆっくりと向くと、一筋の涙を流した。
ユナはゆっくり、本当にゆっくり、精一杯の笑顔を作った。
「・・・レイ・・・ありがとう。本当に・・・本当に、ありがとう・・・」
「私があの森に来たのは、やはり声が聞こえたからなんだ。」
「君も、声を聞いて来たの!?」
しばらくした後、ユナは自分の過去について話し始めた。
レイは、ユナと自分が余りにも似ていたため驚いた。
「ああ。私の場合は、森の声ではなく人だがな」
「人?人の声も聞けるの?」
「限られた者だけ―――守護神とか、守護神になる者だけだ」
「ふうん・・・ってことは、僕も?」
「勿論」
「それ、どうやってやるの!?教えて!!」
レイは期待して聞いた。
ユナはゴホンと咳をした。
世に言う上から目線―――である。
「えーまずは、声の発生方法だが、発声練習から始めよう。
口を大きく開けて、スーハーと呼吸するのだー!」
ユナは大きく開けて身振り手振りをした。
レイもユナを見て同じようにした。
「え、こう?」
頑張るレイ。ユナの身振り手振りは意外と難しかったのだ。
「ちがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーう!!!!!!!!!!!!!」
「え〜!?」
ユナには変なスイッチというものがあり、ある条件でそのスイッチがオンになるそうだ。
守護神になってからレイは度々そのスイッチにお世話になっていたという。
レイはユナに思いっきり叩かれた。なぜかハリセンで。
レイはあまりの痛さに身を捩った。
「いっっっっっったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!」
「ちがうぞレイ!もっとスーハーを意識するんだ!」
この際だからハッキリ言っておこう。
やっぱり守護神なんてやだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
本当はハリセン出てくる予定無かったんですけど、
いつの間にか・・・




