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嵐の森  作者: 暁 瑚都羅
12/15

泉に集う者たち

レイは、ベッドに無造作に置かれたペンダントを手ですくい上げた。


「・・・ユナ・・・君が、作ったんだね」


レイは苦笑した。


ペンダントをよく見ると、モチーフの石の裏には彫刻刀で彫られた文字が連なっていた。




『ユナ・クシュナ・クラスペディアの祈り    最後の愛をこめて―――ユナ』




「・・・クシュナ・・・クラスペディア?この名前、聞いたことがないけど―――誰??」



レイは顔をしかめながら、ユナの最後・・の言葉を見つめ、そして口をきゅっと結んだ。



「―――ユナ」



やがて駆け出すと、勢いよく小屋を飛び出した。


レイは決心したのだった。



ユナを、また見つけるということを。












ユナは、獣道を駆けていた。


「はあ、はあ、はあ・・・、もうすぐ・・・」



もうすぐ、森を抜ける。


そして、ユナはもうすぐ、守護神の力を失う。




実は、ユナは前守護神との契約を結んでいた。


前守護神は、『守護神の力は森にのみ伝わるものなり』の言葉と共にユナを守護神に任命するとき、契約を結ばせたのだ―――ユナと、森とに。




「レイにも、会えなくなるのね・・・」


ユナは、泣きたくなる気持ちを抑えて大きく息を吸った。


「・・・行かなきゃ、堅苦しくて暗い王都に。・・・行かなくちゃ、レイまで巻き込むことになるもの」


それに、ぺディとも、約束したもの。



これから訪れるであろう、現実を受け止めることを。




ユナは、喉を潤すために奥に見えた泉へと向かった。











「ユナーーーーーーーー!!!ユナーーーーーー・・・」


レイは声の出る限り叫び続けた。



しかし、レイの木霊した声しか返っては来ない。



「ユナーーー!ユナ・・・何処にいったんだよユナ―――」




あの洞窟にも、透き通ったあの海も、社も、手当たり次第にいろいろまわってみた。でも、ユナの気配さえない。



「・・・・・もしかして、もう森には居ないのかな」


レイはポツンと呟いた。―――ユナを探している最中、ずっと思っていた事。



「いざ口に出してみると、何だか本当みたいじゃないか。ユナはまだ、絶対ここに居るはずなんだからっ!」


レイは、また意気込んでユナの捜索にはいった。




レイは、やがてあの思い出の泉へとやってきた。


泉は、森の中でも町はずれに近いので、レイはまだ来ていなかった。


ざっと泉を見渡すと、遠くに、人影が見えた。




「・・・ユナ?」



レイは目を凝らした。



「・・・・・ユナじゃない。・・・訪れ人だ。なんで嵐の森に来てるんだ?」


訪れ人―――それは、森に訪れる守護神以外の人間。


レイはユナの話でしか聞いたことがなかった。




その訪れ人は、二人組みの武官のようで、なにやらヒソヒソと話し込んでいた。


(・・・何で姫さんはいないんだ?女王様はココに居るっていったけどよう・・・)


(知らねえよンなもん!ってか、こんなトコあったっぺなあ)


(ホントだ・・・)


(で、どうするっぺ?またぐるっと一回りしてみっか?)


(そうだな。そうすっか)



レイは木の陰に回りこんでその会話を聞いていた。


姫さん?誰のこと?


レイはずっと耳を凝らしていた。







ユナは、泉を遠回りして行き着いた。


「・・・・・・」


無言のまま泉の水をすくって口に流し込んだ。泉の水はひんやりと冷たくて、ユナの喉を潤した。


ふと、泉の端の方で声を聞き取った。




何かしら、あの訪れ人・・・もしかして、もう来てしまったの?使いが―――



ユナは背筋がゾクッとするのを感じ取った。




今、来てしまってはレイが危険になる。そんな事、出来ない。




ユナは岩陰に隠れて二人の様子を伺いながら、ジリジリ迫った。


手には、短刀を握り締め、額には緊張の汗がはしる。




木の陰まで来たとき、ユナは何かに体ごと突っ込んだ。


(・・・ん!?何―――)


なんと、それはずっと聞き耳をたてていたレイだった。


お互い緊張しすぎていたせいか、お互いの存在に気づかなかった。



(え―――ユナ!?)


レイは目を擦って確かめた。


ユナのほうも慌てた。


(あ!!レイ、あー・・・あのね、レイ。私・・・えっと・・・)


ユナは、言葉を捜すのに苦労した。何しろ、一回レイから離れているからだ。


レイはユナの慌て様を察すると、ユナを突いてあの訪れ人を指差した。


(あいつ等、さっきからずっと居るんだよ。姫さんとか、女王様とか言ってさ)


(!!・・・)


ユナは思わず口を抑えた。急に吐き気と目眩がした。


レイは咄嗟にユナの背中を摩り、急に動きを見せた訪れ人を見ながらユナに薬方を飲ませる。




(じゃ、行くか。俺はコッチ行くだな)


(んじゃ、おらはアッチだべ)



訪れ人は、立ち上がって別れると、見回りを始めたのた。これではレイとユナが見つかるのも時間の問題だ。




(ユナ、とりあえずあの二人から離れよう。見つかったら何かと面倒だと思う。)


(私・・・あの人達に捕まったら・・・行かなくちゃならないわ。

 でも、行きたくない・・・ぺディとの約束もあるのに・・・・)


(分かった。・・・じゃあ、とりあえず事情を聞かせてもらうよ。僕にはその権利がある)


ユナは、レイの真直ぐな眼差しに思わず目を背けた。


(でも、貴方まで巻き込むことになるのよ?・・・・)


(そんな事いい。さあ、立てるかい?)


レイは、辺りを見回しながら、緊急用の岩穴の隠された入り口を探した。



















遅くなってすみません。

何回書き直しても暗くなってしまい・・・結論が出るまで時間がかかったんです!


〜結論〜

この回はどうしても暗くなるー!!!




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