夜明けと共に
あれから、二ヶ月が飛ぶように過ぎていった。
「ユナ、仕事いくよ」
レイは秋用の厚い麻衣を羽織ながらユナに声を掛けた。
ユナは文机で何かゴソゴソやっていたが、レイに気づき慌てて棚に何かを仕舞いこんだ。
「う、うん。今日は肌寒いわね」
「そうなんだ・・・もう冬が近づいているんだね・・・」
「レイ、冬嫌い?」
「んー・・・寒いのは嫌いだけどね。冬は好きだよ。それよりさっ、ナントカ草の芽出たよ!見に行こう」
「わあ、きっとエージュ草ね!!やったわ。あれは収穫して乾燥させると、風邪の特効薬になるもの!」
「ふう、これだけ混ぜれば、いい堆肥ができるね。畑も森も、最近は穏やかですくすくだね」
レイは生ごみや抜いた雑草を棒で引っ掻き回し終わると、暖まった首筋に冷たい手をあてた。
ユナも畑に咲く秋桜に群がる雑草を抜き取りながら、笑顔を零した。
「・・・・・・・・・・・・・・ええ、そうね。いつまでも・・・いつまでもそうだと良いわね。」
「・・・ユナ・・・・僕たちの森は、空が雲ひとつなくて、木は生い茂り、草花が咲き乱れる、そんな森だね。これからも。」
レイはユナを、そして辺りをぐるっと見渡した。
ユナは、一瞬悲しげにレイを見た。
「・・・レイ、私は・・・・・・・・・・・」
なんでだろう・・・?私、頭がぐるぐる・・する・・・
ユナの様子に気づかないレイは何気なく聞いてみた。
「何?お腹すいたとか」
「・・・・・・・・・・・・・・ううん、何でもない・・・・・なんでも・・・な・・・い・・・」
そういうと、ユナは気を失ってレイの足元に倒れこんだ。
「ユ、ユナ―――大丈夫!?ユナ!!!」
「・・・・・?此処は・・・」
ユナは霞む目を擦りながら起き上がった。
ユナはいつもの小屋のベッドに横たわっていた。きっとレイが運んだのだろう。
今はもうすぐ夜明けらしく、レイは腕組してユナのベッドに寄り掛かるようにして眠っていた。
「・・・・・・」
ユナはレイに声を掛けようと思って、止めた。
レイは、きっとずっと看病、してくれたんだよね。
「・・・ありがと」
ユナは小声で呟いた。そしてそっとベッドを後にした。
「ん・・・ユナ??・・・」
レイは小鳥が囀る音で目が覚めた。
そして―――
「ユナ!?」
何時間か前にユナが横たわっていたベッドには、美しい鶸萌黄の石が通された簡素なペンダントだけが残されていた。
空き行が多くてすみません・・・。
誤字・脱字ありましたらお構いなくお知らせください。