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【消えた作品】  作者: 風花
第2章【目覚めし能力】
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第6話【異変】

 スピカ達が暮らしていた森を抜けた涼太達は森の近くの町を訪れていた。


「スピカさん、ここは?」

「ここはハンデルと呼ばれている狩人の町だ。森で暮らしている間にもたまにここに来ていた。今回はここの一番で買い物をしようと思ってな」

「狩人の?」


 狩人の町、という言葉が気になった涼太はスピカに質問をする。スピカは快く答えてくれた。


「この町からならば草原、森、山、川に近い。ハンデルは様々な獲物を狩る為に作られたというわけだ」


 涼太が町を見渡すと、確かにこの町は宿屋や飲食店が多く普通の店や民家は少ない。すれ違う人間は武器を担いだ狩人や商人達が殆どだ。


「凄い……」


 大きな剣や弓を担いだ男女が商人と会話し、何かを売っている光景も、加治屋らしき店で明らかに使いこなせないような大きなハンマーを見ている女性がいる光景も、狩人相手に商品を売り込む露店商が居る光景も、日本にいたら見ることができなかった光景だ。

 ……が、良太から見てどうも狩人達は厳つくて恐ろしい風貌の人間ばかりだと感じてしまい素直に感動することができない。


 そんな時、突然3人に声がかけられた。


「よう!魔女さん!今日は散歩かい?」


 ガハハと笑いながら武器工房から顔が濃くて体格のいい男が出てきた。頭にバンダナを巻き、服は作業用の分厚い服。男はいかにも加治屋といった服装だったが何よりも涼太が気になったのは男の耳だった。


「まあな。お前も何だか久しぶりに見た気がしたのだが……まぁ元気そうだな、ディンゴ。」


「ス、スピカさん……あの人耳が!」


 そう、ディンゴと呼ばれた男の本来人間の耳がある位置には人間の耳が生えるのと同じように、狼のような毛深く鋭い耳が生えていたのだ。


「ん?このボウズ何処のだ?」

「私の連れだ。近くの村で預かったのだが、まだ村から出たことがなくて何も知らなくてな」

「お、そうだったか!」


 そう言うとディンゴは涼太に目線を合わせた。


「俺の名前はディンゴってんだ。出はガルー族!生まれはギザ帝国の遠吠えの谷だ。よろしくな!ボウズ!」


 そう言うとディンゴはにぃと口角を上げ笑う。その笑う口からは人間のものとはまるで違う鋭い牙が見え隠れしていた。


「はじめまして、風祭涼太です」

「リョウタか、いい名前じゃないか」


 ディンゴは涼太の頭をくしゃくしゃと撫でた。力は強いものの、その撫で方は優しさを感じるものだった。


「親方ー!早く戻ってくださいよー!」


 工房の奥から悲鳴じみた若い声が聞こえる、その声を聞いたディンゴはそうだった!と叫んだ。


「悪い!まだ仕事が残ってんだ、リョウタ!もし武器が欲しくなったら俺のとこへ来い!サービスしてやるからな!」


 ディンゴは言いたいことだけ言うと、そのまま工房へと姿を消した。


 まるで嵐が過ぎ去ったかのようだ。涼太も緊張が解けてはぁ、と息を吐いた。


「疲れたか? 工房の男とはあんな生き物だ」


 災難だったな、とスピカから労われてしまった。涼太はそんな酷い顔をして居るだろうかと思い、頭を振って緊張を払い、気合いを入れ直した。


「私あの人苦手。だってすっごく鉄臭いもん!」


 気がつくと先ほどまで恐ろしいほどに黙り、喋っていなかったナナがふんっと怒りの表情を見せていた。最もディンゴは工房の人間なのだから鉄の臭いは仕方ないものがあるのだが。


「そんなに臭いしたかな?……多分ナナは嗅覚が良いんだよね。」

「うん……あの臭い嫌い……」


 確かに多少臭いがあった。それは涼太には気にならない程度だがナナからすれば鉄の異臭に感じる程なのかもしれない。


「さてと……道草しまったが当初の目的通り露店商の市場へ行くとしよう」

「あっちは行ったこと無いから楽しみ!」


 スピカの案内で市場の方へと向かう。ぽつぽつだった人の数が、市場に近づくにつれてどんどん増えていく。



 スピカとナナを見失わないように涼太は必死についていこうとして……その時、一瞬体が熱くなりズキンと頭が痛んだ気がした。


「へ?」


 よろめきそうになるも倒れまいと何とか踏ん張る。

 あまりにも一瞬の出来事だったので何が起こったのか涼太にはよく理解できなかった。なれない場所で疲れているのだろうか、そう思いながら涼太はスピカ達の後を追った。




「すまない、ノバナ村の癒の魔女の薬は無いか?」


 スピカが市場の一角にいた露店商に話しかける。どうやら薬がほしいらしいのだがスピカに薬は無縁だと思っていたので何に使うのだろうか?と涼太はつい考えてしまう。


「すみません、その薬は売り切れでして……」

「そうか……邪魔したな」


 せっかくの商売なのに売り切れだと言うのが辛いのだろうか、商人の歯切れはよくない。スピカはそのまま露店を離れた。


「スピカちゃん、他の場所には無いの?」

「無論、他の場所を探す。薬商人を総当たりすれば1つは見つかるだろう」

「……その薬ってどうしても必要なの?」


 涼太がそう聞くとスピカは当たり前だ、と返した。


「お前が怪我をした時に備えておく必要がある。私は回復魔法なぞ使えんし、ナナの魔法は一度使うと再使用までに時間がかかりすぎるからな」


 どうやら自分のためだったらしい。スピカなナナに必要なのかと思っていたのだが、確かにこの中では自分が一番貧弱だと涼太は感じた。


 結局、4つの露店を回ったが4箇所共売り切れであった。今から目指す5つ目の薬商人の露天が最後の露天となる。


「無くても構わないのだが不便だな。最近は狩人も多いし仕方ないのかも知れんが」


 スピカはそう呟いた。よくわからないが様々な事情が複雑に絡んでいるらしい。



 次の店へと移動するべく歩いていると、ゴンッとスピカが誰かにぶつかった。


「あぁ、すまないな」


そう言い、そのまま通りすぎようとした時。


「待つっすよ」


そのまま呼び止められてしまった。涼太がふとスピカを呼び止めた男を見た時、生きた心地がしなかった。

 その男は赤い鎧を着込み、体と同じぐらいの大きさの大剣を持っていた。射抜くような鋭い緑色の目に太陽の光を受けてギラギラと輝く金色の短い髪。

 間違いない、危険な男だ。男とスピカと涼太とナナ、それぞれに緊張が走ったその時。


 男の手が、スピカに向かって伸び



 そのままスピカの手を取った。


「は?」

「へ?」


 スピカが男を怪しみ、見る。男の目は憧れの人に会えたと言わんばかりにキラキラと感動に溢れていた。


「お姉さん、昨日ドレイクを売りに来てた人っすよね!?わー!感激っすよ!こんなところで会えるなんて!」


 そのまま腕を振ろうとしてきたのでスピカの方から手を払い除けた。


「お前は誰だ」


 スピカから見れば全く見ず知らずの他人。明らかに怪しい態度にスピカは警戒を募らせていく。


「あ、名前をいい忘れてたっすね。俺の名前はリエットっす。チュラ公国の新米の狩人っす!まさかドレイクを狩れるような人に会えるなんて!」

「リエット、お前はいきなり人に話しかけるのか?」


礼儀がなってないな、と言うスピカにリエットは申し訳なさそうにしている。


 そんな光景を横目に涼太はナナの方を見る、ナナも何か言いたげだがやたら煩い上に何も知らないリエットが居る以上、ナナが言葉を話すと大変なことになるかもしれない。涼太がスピカの方を再び見れば、スピカはまだリエットを振り切れては居なかった。


(スピカさんも大変だな……)


 スピカはこの町には親しみのある存在のようだ。それはディンゴや露店商達との会話を見ればスピカが長い間この町と関わってきたのだと言うことが染々と伝わってきた。



(しかし……疲れたな)


 森を抜けて、町を歩いただけなのだが涼太は妙な疲れを感じていた。体に内側から熱が出るような気だるい感覚……スピカはリエットと言い合ったままだがもう2人の言葉も上手く聞き取れなくなってきた。頭も痛い気がする、熱もある……のだろうか? 涼太は徐々に何も考えられなくなり、立っているのも苦しく……そして……


「涼太君!?」

「涼太!?」


 2人の悲鳴もそのままに、涼太はその場に倒れ込んでしまった。

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