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【消えた作品】  作者: 風花
第5章【霧の中の妖魔城】
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第51話【導きの虹】

 飢えた獣のように輝く瞳で、強く睨み付ける少女は、ボサボサの茶髪を乱暴に紐でまとめ、普通の村人のような素朴な服装をしており、一見すると、田舎の方から出てきた無害な少女にしか見えない。


 しかし、その右手には血錆がついた大鉈を持ち、彼女が過去に何人もの人間を仕留めてきたのだと言うことがうかがえた。


「あの子が……妖魔?」

「ああ、間違いないだろう。この霧でもはっきりとこちらが見えているようだからな」


 正直、拍子抜けだった。確かに身体能力は高いがその見た目からなのかあんまり強そうには見えない。油断した涼太が思わず腕の力を抜いてしまうと、妖魔はそれを見逃さなかった。


「……!」


 ぴょんと、両足を使って妖魔は高く跳ねるとそのまま涼太に向かって鉈を振り下ろしてくる。突然の出来事で、涼太は反応出来ず、その場で固まってしまう。


「ショット!」


 響くようなその声に導かれるように前を見れば、今正に妖魔が魔弾で弾かれる姿が見えた。


 スピカが咄嗟に唱えた魔法が妖魔の着地点をずらしてくれたのだ。乾いた着地音から、少女は再び離れた場所へと着地したのだと判断できるが霧のせいで姿が上手く見えない。


「ありがとう、スピカさん!」

「集中しろ、涼太」


 こくんと涼太は頷き、今度こそしっかりと槍を構える。


「つーか……霧のせいで見えない上に、離れることすら出来ないこっちが不利すぎだろ」

「全くだな。見たところあの妖魔は霧の犯人ではない……対して強くもない妖魔のはずなのだが……」


 レーゲンの悪態に、スピカは珍しく同意する。 その間にもナナは必死に辺りの匂いを嗅いで妖魔の姿を探そうとしているのだろうと判断した涼太はそっとナナの隣に移動した。


「ナナ、どう?」

「うーん……匂いがよくわからないの」


 対した効果は得られなかったのか、ナナは首をかしげている。そんな様子を、スピカは何か考えるように見つめ……首を横に振った。


「考えても無駄だな、私が集中しないでどうする」


 スピカがそう呟く間にも、どこからか地を走る音が響くように聞こえる。必死に目を凝らしても敵がどこから来るのかがわからず、4人は背合わせになるようにして構えた。


 一瞬の静寂の後、再び風を切る音が聞こえる。霧を切り裂いて再び姿を表した妖魔が狙うのは






 ナナだ。


「ナナ!」

「!」


 風を切る音と、涼太の叫び声で、ナナもようやく敵の接近に気がついたのか、素早く回避する。回避された事に気がついた妖魔はすぐに大鉈を振り回して追撃としたが、それは隣にいた涼太の槍と、レーゲンが飛ばしたシルトの盾で弾かれた。


 邪魔されたことに怒りを覚えたのか。ギラリと怒りに塗れた瞳が、涼太の姿を捉え……妖魔は再び霧の中へと姿を消した。


「後何回続けるつもりだよ、あの妖魔」

「恐らく、私達が集中を切らすまでだろうな。余程食事に困っていると見える」


 どうりで獣のような瞳をしている、と涼太は思った。あの妖魔の目は、暴走したナナと同じ色を含んでいる。


 再び、物音が聞こえてくる……が、その音に違和感があることに、スピカは気がついた。


 仲間達の顔を見渡せば、涼太もレーゲンもナナも気がついていない。このままでは不味いと、スピカは息を吸い込んだ。



「気を付けろ!()()()()()()()()!」



 スピカの声に3人がはっとした次の瞬間、霧の中からそれぞれにめがけて妖魔が飛び出してきた。皆、先程の妖魔少女同様に子どもと思われる大きさしかないが、その体に不釣り合いな大鉈を振りかざしている。


「シルト!」


 真っ先に動いたのはレーゲンだ。命令をひとつするだけで、シルトはその手に持つ盾で自分の体と同じぐらいの大きさの鉈の一撃を何度も食い止める。


 ナナは妖魔の猛攻を回避しながら攻撃の機会を伺い、スピカは魔弾で再生する妖魔の体を、再生の隙すら与えぬように何度も撃ち抜く。


 だが、涼太は一人、槍を横に構えて一撃を防ぐ事だけで精一杯だった。


 ガン、ガン、と振り下ろされた鉈が槍の胴に当たる度に腕が痛む。一瞬の隙をついてカウンターが出来るのなら脱出ができる状態ではあるが、今の涼太の頭には、超能力を使うことすらすっかり抜け落ちてしまっており、それは難しい。






 皆がそれぞれ妖魔と応戦する中、涼太と妖魔の戦いが急展開を迎えた。






 妖魔が、ニヤリと笑う。


 その次の瞬間、妖魔は足で涼太の槍を蹴り落とした。


「あっ……!」


 もう槍を拾う余裕は無い。槍を落とした瞬間にはもう、妖魔は薄気味悪い笑みを浮かべながら、こちらに大鉈を振り下ろそうとしていたからだ。


 どうすることも出来ない涼太は、本能的にに腕で頭を庇うような姿勢を取り、目を閉じてしまう。






―目を閉じる瞬間、ひらりと()が見えた気がした―






 訪れるはずの痛みと、衝撃が振りかからない。


 疑問に思った涼太が目を明け、慌てて前を見ると、そこに居たのは、妖魔との間に割って入り、こちらを庇うように立つ、虹色の蝶の羽を持つメイド姿の女性だった。


「あ、貴方は……」

()()()()()()()、もう大丈夫ですよ」


 涼太の問いかけに、彼女はにこりと笑った。

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