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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第42話【vs鹿の長①】

 魔法が何かにぶつかり弾ける音と、何かが勢いよく大地を蹴る音が響く。魔法を打つのはスピカ、そのスピカと対峙しているのは、とても巨大な体格を持つコルヌ……(ホルン)


 (ホルン)によって殺され、持ち込まれた人間の死体が辺りの木々に飾りのように吊り下げられたこの異様な光景の森の奥地で、2人は対峙していた。


 スピカの見立てでは、(ホルン)は通常の雄のコルヌと比べて倍ほどの大きさを持つ特殊な個体であると見れた。


 角も他のコルヌと比べて鋭く、またその毛皮はまるで鋼鉄の鎧の様に固く、生半可な攻撃は受け付けないにも関わらず、(ホルン)は他のコルヌよりずっと素早く走り、跳躍力もあるのだ。


「決める……!エルナト!」


最大まで溜めてはいないものの、そこそこの威力があるエルナトを(ホルン)は軽くかわす。対象を失い地に激突したエルナトで地面がえぐれ、その光景を見たスピカは舌打ちしつつも素早く次の魔法の準備を開始した


「ちっ……なら、これはどうだ?アンタレス・ショット!」


 エルナトでは回避されてしまうなら、素早く打てる魔法をとスピカは炎の力を宿した魔弾を撃つが、これも素早さが足りないのか、角に回避されてしまう。


(ちっ……やはり、何か動きを止める方法を見つけるのが先か)


 (ホルン)の正面に立たぬよう、慎重に立ち回りながら機会を伺う。しかしこれでは流石の魔女でも体力が持たないだろう、現にスピカの呼吸は乱れ始めており、(ホルン)はその隙を見逃すまいとスピカに突撃して来る。


「そうか、休ませても、考えさせてもくれないか」


 (ホルン)はコルヌと比べて足が早いものの、スピカにとっては、決してかわせない速度ではない。回避した先に対応されて回られぬよう、ギリギリまで引き付けて回避を行う……が、(ホルン)はそこまでを見据えて行動していた。


「キュオオオオオン!」


 (ホルン)は突然スピカの近くで立ち止まり、狂ったような激しい雄叫びを上げると、そのまま後ろ足でスピカを蹴りあげようとする。それはあまりにも急な行動で、スピカは回避出来ない。


「なっ……ぐっ!」


 とっさに杖を横に持って盾のように扱い、蹄の直撃を防ぐがその衝撃でスピカは後方に吹き飛ばされる。幸いにもしっかりも受け身はとれたが先程の衝撃で強く不可が掛かった右手が痺れ、杖を握る腕が震えていた。


(……(ホルン)と言えどただのコルヌ。なぜここまで賢い? まるで人間と戦っているかの様で気味が悪い)


 震える腕を見つめながら、スピカは舌打ちする。このままでは不味いことぐらいわかっているのだが、(ホルン)相手にどうすることも出来ずに、ただ、(ホルン)から繰り出される攻撃を回避する。


「フーッ……」


 こんな様子になった獲物を相手に何度も勝負を決めてきたのだろうか。(ホルン)は勝ち誇ったように鳴きながら、抵抗が出来ないスピカへとゆっくり近づいていった。






「ど、どうしよう……」


 一方その頃、涼太とナナはようやくスピカと(ホルン)が戦う森の奥地へとたどり着き、スピカと(ホルン)の決闘の様子を見るために茂みに隠れていた。


 と言っても、涼太がたどり着いたのはついさっきであり一部しか見れていない。それでも、スピカが追い込まれているのは明白だ。


「……助けなきゃ」


 自分でも(ホルン)に太刀打ち出来ないことはわかっていたが、このまま黙ってみていることは出来ない。覚悟を決め、槍を強く握り草むらを飛び出そうとした次の瞬間、事件は起こった。


「キュオオオオオ!!」

「な、ナナ!?」


 草むらの向こうから聞こえてくるのは興奮しきった(ホルン)の声と、困惑するスピカの声。はっとして隣を見ればナナの姿が無かった。


(まさか……)


 慌てて草むらをかき分け、向こう側の様子を見ればそこには(ホルン)と睨み合い、唸るナナの姿があった。


「ナナ!下がれ!!」

「グルルル……」


 スピカの声も、興奮しきったナナの頭には何一つ入ってこない。一方の(ホルン)もスピカよりナナの方を強く警戒しており、このままでは本当に不味いと涼太は直感した。


(行くなら、今しかない!)


 心の中で改めて決心をつけると、ナナとスピカを救うために涼太は草むらを飛び出した。

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