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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第41話【森を駆けて】

「はぁ……はぁ……」

「グルルル……」


 コルヌが地に付した事で、涼太はようやくテレキネシスを解除することが出来た。一方のナナは興奮が収まらないのか、血塗れのままコルヌの首に噛みついたまま唸り声を上げ、離れようとしない。


「……お主ら」

「あ……えっと……コルヌは倒したから、一緒に水場を探しに行こう」


 少年は警戒するようにこちらを見つめ……何かを言いかけたが、すっと言葉を引っ込め、はぁ、とため息をついた。


「水ならわしの鞄の中にある、探しにいく必要は無いぞ」


 少年はそう言うと鞄を漁り、中から筒の様なものを取り出し、涼太はそれを受けとる。筒は竹のようなもの植物で出来ているようだ。


「ありがとう……足を出してくれる?」

「お主に言われんでも解っとるわい。……先程の薬、癒の魔女の物じゃな? 相当な高級品じゃぞ」


 その言葉は、本当に自分なんかに使って良いのかというう意味が込められていたのだが、一方の涼太にはその意味は全く届かない。


 少年の言葉に返事を返すこと無く涼太はしゃがみ、水で少年の血塗れになった足を洗えば出血のわりには傷の範囲が広くないことが解る。彼が大怪我をする前に助けることが出来て良かったと、涼太は内心安堵した。


「よかった、これならきっとよくなるよ」

「……先程と言い、本当に変わった奴じゃな」

「そ、そう?」


 こちらを疑うような目を向ける少年に、涼太は超能力の事を追及されるのではとドキドキしつつも治療を行おうと鞄から薬を取り出したが、薬を見た少年は首を横に振った。


「それは要らんぞ、これぐらいの傷大したこと無い」

「え、でも……」


 少年はそう言うと痛みでよろけつつも薬が不要であることを涼太に見せつける様に立ち上がる。それを見た涼太も立ち上がった。


「そうじゃな……代わりと言っては何だが質問には答えてもらおうかのう。……お主ら、何者じゃ?」

「へ?何者って……」

「先程の変な魔法に喋る狼……そしてお主ら、あの魔女と一緒に店に来たじゃろ? 助けてくれたことは感謝しておるが……正直、怪しさの塊でしかないぞ」


 少年はそう言うとふん、とこちらを横目で見つめる。


 正直、涼太はこの少年に超能力の事を話すつもりは全く無かった。もう既にルルには話してしまったが、誰が月の魔女の手下なのかわからない今、不用意に話すなとスピカにも言われている。……が、ナナはそうでも無いようで、鹿を噛む事に飽きたのか、血に濡れた体のままこちらへと歩いてきた。その目はまだ興奮しきっている様に血走っている。


「私はナナだよ。こっちは涼太君!」

「それはお主らの名前じゃろ、そうじゃなくて……」

「涼太君は人間だよ!」

「……」


 ナナの回答は、会話が繋がっている様で繋がっていない様なそんな不思議なもので、少年が欲しい情報を外してしまっている。そんなナナの様子がおかしいのは涼太から見ても明らかだ。血が彼女を狂わせたのか、今のナナは酷く興奮して会話すらまともに出来ないらしい。


 少年はそんな様子のナナを見てはぁ、と再びため息をつくと「調子が狂うのう……」と小声で呟いた。


「……変なことを聞いてすまんかった。助けてくれてありがとうなのじゃ」

「あ、待って!」


 少年はそう言うと森の入り口の方に向かって歩き出したので、涼太は慌てて引き留めた。


「何じゃ、まだ何か用か?」

「あの、金髪で赤い鎧の騎士と、緑色の肌の変わった女の子の2人組を見てない?」


 もし2人がこの森に来ているなら、この少年が2人の姿を見て居る可能性がある。そんな望みに賭けた。


「赤い鎧の騎士と、変わった女の子?」


 少年は悩むようなしぐさをし……やがて、何かを思い出したかのようにはっとした表情になった。


「そうじゃな、確かに見たぞ。この森の奥の方へと入っていったな……じゃが、もう今頃手遅れじゃろ」

「手遅れって……それ、どういう意味!?」

「何じゃ、知らんのか? この森は最近この辺りを騒がせとる(ホルン)のテリトリーになっておる。あの2人が狩人として訪れたのだとしても、(ホルン)もまた狩人殺しでは有名な奴じゃから……って、何をしとるんじゃ!?」


まだ少年の言葉は途中だったが、涼太は急いで薬を鞄にしまうとナナと共に森の奥へと入ろうとして……少年に肩を捕まれ引き留められてしまった。


「お主は馬鹿か!? さっきここは(ホルン)のテリトリーだと話したじゃろ!若いコルヌ相手にすら苦戦したお前らじゃ(ホルン)には勝てんぞ!」


その声は引き留めようと必死で、その思いは涼太にも痛いほど伝わってくる……正直、涼太も(ホルン)と呼ばれる鹿については不安な気持ちでいっぱいだったが、でも、どうしてもリエットとルルの事が心配だった。


「……無理かどうか、やってみないとわからないよ。それに、2人が怪我をしてたら、誰かの助けが必要なはずだよ」

「お主……わしの時と言い、その2人の事と言い……本当にお人好しの大馬鹿者じゃな」


 そう言うと少年はくるりと背を向け、ふと言葉を呟いた。


「……わしの名前はログじゃ」

「へ?」

「今日でも、明日でも良い。生きて戻って来たらわしの店に来い。助けてくれたお礼をしてやるから……必ず……」

「……ありがとう、行ってくるよ。……行こう、ナナ。」


 涼太は後ろにいる少年……ログの方へは振り返らずにそう答えると、ナナと共に森の奥へ続く道を走った。






「2人共、何処に居るんだろう?」


 ログと別れてからかなりの距離を走ったが、人の影は見えてこない。ナナに匂いをたどってもらおうかとも悩んだが、ナナの様子がおかしい今、頼むのはナナの負担も考えて良くないと判断した。


「涼太君、匂い!匂いがする!」

「へ? あ、ナナ!」


 突然、ナナは妙なことを口走ると、そのまま涼太を置いて猛スピードで走り出した。涼太も慌てて追いかけたが、人間の足でナナの足に勝てるはずがない。


 結局ナナともはぐれてしまった。


(もう……ナナ、本当にどうしちゃったんだろう)


 ナナはまっすぐこの先を走っていったので先へいけば合流出来るだろう、涼太はそう考え、森の道を急ぐ。


 しばらく走ると、やがて誰かの話声が聞こえてきた。





「……よ。……子は、噛まな……」

「……」

「うん!」




 間違いなくナナの声は聞き取れた。どうやら誰かと会話しているらしい、急いで声がする方へと涼太は足を走らせる。


 やがて、木に休むように体を預けている赤と緑と……その近くに寄り添う白い影が見えてきた。涼太はその3つの色の正体を知っている。


「ナナ!リエットさん!ルル!」


 近くまで走ってきた涼太が名前を叫べば、3人はすぐに気がつき、こちらを向いた。


「涼太君、やっぱり来てたんすか」

「……ここまで来たのね」

「涼太君!」


 ナナはこちらを見ると、そのまま足元へと巻き付くようにすり寄って来るので、涼太はその背中をなだめるように撫でつつリエット達の方を見た。


 2人は幸い大きな傷こそ負っていないものの、角にそうとうやられたのか、身体中傷だらけになっている。


「リエットさん、ルル、無事でよかった……」

「俺達は無事なんすけど……」


 リエットはふと、後ろめたそうに呟く。どうしたのだろうと涼太が見つめていると……やがてリエットは観念したような表情になった。


「実は、(ホルン)から逃げてる最中に姐さん(スピカさん)とすれ違ったんすよ。(ホルン)は私が倒すってそのまま森の奥に……」


 リエットがそう言った次の瞬間、大きな爆発音が森に響いてきた。


「今のって……」

「戦ってるんすね、姐さん(スピカさん)。……実は俺たち(ホルン)相手に10分持たなかったんすよ。姉さんはもう15分は戦ってるっすから……本当、流石っす……」

「負けた」


 リエットがそう言えば、ルルも悔しそうにそう呟く。だが涼太はそれよりもスピカの事が気になった。


「僕、スピカさんの所に行ってくる」

「さ、流石にそれは……」

「貴方の実力じゃ、危険」


 でも、と涼太は呟く。スピカの強さは自分を含め、誰もが認めているが何故か悪い予感が拭えず、スピカの事が心配で仕方なかった。


 不安そうな涼太の顔を見て気の毒に思ったリエットはふと、ある助言をした。


「涼太君、何も一緒に戦う必要は無いんすよ。自分に出来ることを……」

「……ごめんなさい、リエットさん。ナナ、行こう!」

「はーい!」

「あ、ちょっと!涼太君!」


 涼太はリエット達が怪我をして動けないことを良いことに、そのまま2人を振り切ってナナと共に先へと進むため、森の中を駆けて行った。

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