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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第39話【涼太の修行、二日目……?】

「ん……あれ?」


 涼太が目を覚ますと、部屋には既にスピカの姿は無かった。昨日はしゃぎ疲れたのかナナはまだ寝ており、レーゲンは鞄を整理している。


 ふと、レーゲンは涼太が起きたことに気がついたのか鞄を整理するのをやめ、こちらを見つめてきた。


「おはよう、涼太。よく眠れたか?」

「うん……おはよう」


 何だか昨日と違い、レーゲンの手に違和感があるような気がしたが寝起きの頭では何も思い付かない。気のせいだろうと思いながら体を起こした。


「そうそう、スピカが朝御飯は机においてあるから適当に食えってよ」

「……ありがとう」


 寝ぼけ眼を擦りながらベッドを離れ、机の方に行けばパンと干し肉、干し果物が袋の中に入っていたのでその中からパンと干し果物だけを1つずつ取り出しかじった。


 最初は酸味が強く、美味しくないと感じた謎の果実で作られた干し果物も今では普通に食べれてしまう。


 そんな干し果実をパンと共に胃に詰め込むと、そのまま修行に行くための準備を始めた。


「もう行くのか?」

「ちょっと早いかもしれないけどね……よし、行ってきます」

「おう、行って来い」


 準備を終えた涼太は、勢いよく宿屋を飛び出した。






 何度か往復したので、今度は迷わずにルル達の居る宿屋にたどり着くことが出来た。そのまま客室のある2階へと移動し、ルル達が泊まっている部屋の前まで来た。


「ルル、来たよ」


 コンコンと、部屋の扉をノックするが反応がない。寝ているのだろうかと扉を鍵で開かない前提で開けようとすれば、なんと扉はあっさり開いてしまった。


「あれ?」


 そのまま扉を開け、部屋を見るとそこには荷物は置いてあるものの武器は持ち出されており、誰も居なかった。涼太が練習用に使っていた槍だけが他の荷物達と共にポツンと取り残されている。


「……どこ行っちゃったんだろう」


 何かヒントになるものはないかと部屋を探すと、テーブルの上に紙が乗っていることに気がついた。


 それは、ルルからの涼太に宛てた手紙だった。



『涼太君へ、修行に付き合えなくてごめんなさい。槍は勝手に使ってください』



 それは短く、字も汚く、何があったのかすら書かれていない手紙だったが何かルルにも事情があるのだろうと思い、涼太は槍を手にして宿屋を後にした。






 昨日ルルと共に修行した場所は昨日と全く変わらず、穏やかな風が吹いている。


 そんな中、涼太はテレキネシスを使うことを意識して持ち出した槍を浮かせると、それを手に取った。昨日散々練習した動きなのだが、昨日は頻繁に暴走させていた動きなので、今回予想以上にスムーズに行えたことに少し驚いた。


(……もしかして、使えば使うほど精度が上がるのかな?)


 そう思いながらも槍をすっと構え……そのまま木へと斬りかかる。残念ながら力が足りないので木には掠り傷がついた程度だったが、昨日と比べ確実に動きがよくなっているのを涼太は感じた。


 何度も、何度も、同じ動きで木に斬りかかる内にふと、槍を振り下ろす時に、自身のテレキネシスを使って槍が動く速度を上げることが出来たらもっと威力が出るのではという考えが脳裏をよぎった。


(今まで、こうやって何かを持ち上げて、投げつけて……そんな使い方しかしてこなかったけど、もしかして物を押すように動かすことも可能なんじゃ……)


 涼太はそう思えば、すぐに実行に移した。槍を軽く浮かせながら、槍を振るうタイミングで槍を押すようにイメージし、速度を与える。頭の中では簡単に思い描けた動きだが、何度やろうとしても素早く動かすタイミングが掴めず形にならない。


(テレキネシスを意識して同時に2つ働かせるのは無理なのかな……)


 もう諦めてしまおうか、そう思った矢先、ガキィンと激しい音が草原に響いた。


「……へ?」


 涼太が慌てて木を見つめると、新しい大きな傷が木についており……それは正しく涼太の槍筋によって与えられたものだった。持ち上げて、速度を加速させる。それだけの単純なものだったが、それが涼太によって纏め上げられたことにより木に確実な傷を与えたのだ。


「やった!出来……痛っ!」


 ドクン、と腕が引きちぎられる様に痛むのを感じ、涼太はその場に崩れた。槍に速度を与えたのはいいが、その槍を支える体が速度に耐えられなかった様だった。


(痛いけど……行ける……これなら!)


 これなら、自分の槍筋でも皆の隣に立って戦うことが出来る。そう思えば腕の痛みなど、涼太の枷にはならない。


 もう一度立ち上がって力を集め、同じように槍を動かそうとしたその時だった。






「涼太君!」


 遠くからこちらへと走ってくる小さな白い影の姿が見えた。涼太の名を呼びながら走ってくるそれは間違いなくナナだ。


「ナナ!?」


 ナナは涼太の近くまで走ってくると、ハァハァと舌を出して息を荒上げながらも尻尾を振った。


「ど、どうしてここに……?」

「えっとね……起きたら涼太君が居なかったから、何してるのかなって……匂いを追って来たんだよ!」

「そ、そうなんだ……」


 そんな会話をしていると、ふと、ナナが辺りを気にし始めた。鼻を動かし、首をかしげている。


「……ねぇ涼太君。何だか変な臭いがしない?」

「変な臭い?」

「うん、嗅いだこと無い血の臭い」


 血の臭い、それは涼太の記憶にもあった。いや、昨日ルルと共に見た人間の惨死体は辺りを血の海にするほど出血していたのだから……あんな光景、忘れたくても忘れることなんか出来ない。


「……昨日、誰か死んでたからその臭いじゃないかな?」


 ナナは涼太の言葉を聞いても首をかしげている。


「ううん、あんまり臭くないからまだ新しい血の臭いだと思う」

「新しい……」


 そう呟けば、ふと嫌な予感がした。リエットとルルは朝から武器だけを持って何処かに行っている。姿が見えぬ2人と、新しい血の臭い。起こって欲しくない出来事が脳裏をよぎってしまった。


「ナナ!臭いの場所に案内して!」

「へ? うん、良いよ」


 ナナは改めて大気の臭いを嗅ぎ、辺りを見渡し始めたかと思うと、ふと1方向へと向かって走り始めた。間違いない、昨日人間の惨死体があった森の方角だ。


(2人共……無事でいて)


 祈るように思いながら、涼太はナナの後ろを着いて行った。

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