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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第37.7話【踊れ、人形と女神―side.Regen―】

35~37話のレーゲン、ナナ視点です。

対した話でもないので短め

「……さーてと、俺達もそろそろ外に出掛けるか」

「「ワーイ!」」


 スピカが部屋を出てしばらくした後、悪戯っ子の様な無邪気な笑みを浮かべながらレーゲンは立ち上がった。その左右の肩にはそれぞれ、シュヴエとシルトが座っている。


「スピカちゃん、待っててって言ってたよ?」

「おいおい、こんな古くさい宿屋に今日一日ずっと居るつもりか? 散歩しないと体に毒だぜ?」

「アソボウヨ!」

「イッショニイコウヨ!」


 大人しくベッドの上で丸くなっているナナに、レーゲン達は力説する。最初はうーん、と悩ましげな表情でレーゲンを見ていたが、窓の外の景色を見て外に出たくなったのかぴょんとベッドから降りた。


「……やっぱりお外行く!」

「よし!じゃあスピカが帰る前に街中を見て回ろうぜ」

「うん!」


 こうして、レーゲン達も宿屋を後にした。






 一度街に踏み出せばそこは今までに無い、新しいもので溢れていた。昨日とは違う人間が、違う店が目につき興味を引くのか、ナナはキョロキョロと落ち着かない様子で辺りを見ながら、体を弾ませるように歩いていた。


「どうだ? 歩くだけでも面白いだろ?」

「うん!」


 嬉しそうに歩くナナの姿を見るだけでも、無理にでも外に出してよかったと思えてくる。こんなにも外に興味を示すナナを何故スピカは閉じ込めようとするのか理解できないと、レーゲンはぼんやり思った。


(ま、俺が居るうちはこうやって出してやれるけどな)


 あちらこちらウロウロするナナが迷子にならないように目で追う。この程度の子守りなら人間だった頃にもよくやっていたから得意だ。


 ……と、様子を見ていたらふとナナが1件の店の前で止まったのが見えた。時々尻尾を動かしながらキラキラと輝く目でじっと店を見つめている。


「どうした?何か……お、ここは……」


 ナナが止まっていた場所へ向かうと、そこにあったのはアクセサリー屋だった。他の店屋と違って店先には派手だが品のあるガラス細工の装飾が施されており、チュラのアクセサリー屋とはまた違った雰囲気を醸し出している。


「……何か欲しいのか?」


 ナナは力強く頷く。そんなに気に入ったのかと店を再び見たが、確かにこういうキラキラした派手なアクセサリーは女の子の心をしっかりと掴むかもしれない。


「よし、折角だし俺がナナにひとつだけ買ってやるよ」

「いいの!?やったー!」

「ボクタチモ……」

「ホシイナ」


 ふと、左右に居たシュヴエ達も騒ぎだした。こんなに人間味のある2人を見たのはいつ以来だろうかと考えながらも、レーゲンは優しく2人に話しかける。


「わかったわかった、お前達にも買ってやるからな」

「「ワーイ!」」


 かくして4人はワイワイ騒ぎながら、アクセサリー屋へと足を踏み入れた。






 店内に入ったレーゲンは、その場で呆気にとられてしまった。中は外と同じく、見事なガラス細工で装飾されていたのだ。


「わぁ~……綺麗だね!」

「あ、あぁ……そうだな」


 レーゲンは露出が少ない道化師と魔法使いの2つをイメージした服装を着こなしており、道行く人々と比べて派手な姿をしているのだが実は等の本人はそんなに派手な物が好きな訳では無い。


 ナナが何を買おうか悩んでいるのを横目に、レーゲンも商品が並べられた棚を見つめた。値段が高くなればなるほど、派手さや精巧さが上がり、中にはとんでもない値段がつけられたものもある。このガラス細工がどこの国のアクセサリーなのかはわからないが良い腕だとレーゲンは感じた。


 シュヴエとシルトは人前なのもあって、レーゲンのマントの中に隠れてしまっているが、マントの中からあれこれ指示を出してくる。2人が欲しがったお揃いの赤と青の安いガラスの指輪を手に取ったその時、ふとあるものが目についた。


 それは、非常に安いながらも、シンプルな黄色い星のネックレスだった。それに吸い寄せられるように手を伸ばした……その時だった。


「なにかお探しですか?」

「!……な、なんだ店員か……いや、別になにか探してる訳じゃねぇけどよ」


 レーゲンが慌てて後ろを振り向くと、そこに居たのはこの店の店員だった。慌てて帽子を深くかぶり直しながらも、必要以上に驚いてしまったことを少しだけ恥ずかしく思ってしまう。


「こちらは如何でしょうか?」

「んー……どっちかって言うとこっちの方が好みかもねぇ」


 レーゲンがとっさに手を伸ばしたのは、先程見ていた安いネックレスだった。中央に位置するのは星を型どった綺麗な黄色いガラスだが、全体は淡い色に纏まっており、その一点の輝きはまるで、飾り気のない彼女を彷彿とさせた。


「……そのネックレスは、お客様の服装とは少し……」

「そうか? まぁ人間、そんなもんだろ」


 店員の言いたいこともわからなくはないが、押しの強い人間は苦手だ。苦笑いを浮かべながら何とか店員を振りきり、レーゲンはそっとナナの方へと近づいた。


「どうだ? 何かあったか?」


 犬に話しかけている危ない人間だと思われぬよう、レーゲンはナナに小声で話しかける。一方のナナは鼻先でくいっとある商品を指した。


「これが欲しいのか」


 ナナに指示されるままにレーゲンがとったのは二点セットの髪飾りだった。片方は淡いピンク、もう片方は淡い緑色をしている。精巧さもあってか今までで一番値の張る商品だ。


「よし、買ってやるよ」


 ぱぁっとナナの表情が明るくなる。ここにつれてきてよかったと思いながら、レーゲンはカウンターに購入する商品を置いた。


「お会計お願いします」

「はい、少々お待ち下さい!」


 先程の店員とは別の店員がレーゲンが持ってきた商品をじっと見つめ……そして……


「銅貨200枚になります。銀貨なら2枚です」

「げっ」


 笑顔の代償は少しだけ高くついたが、後悔はしていない。






 少しだけ恥ずかしい思いをしたものの、何とか無事に買い物を終わらせた4人は街を歩いていた。


「どうだ、ナナ。他に行きたいところはあるか?」

「うーん……もう疲れちゃった」


 そう言うナナはハァハァと下を出して呼吸をしている。犬の事など全くわからないが、なんだか辛そうだとレーゲンは感じた。


「そうか。よし、スピカが戻る前に宿屋に帰るぞー」

「おー!」

「「オー!」」


 4人のトラルの街探索は、こうして幕を下ろすのであった。

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