第36話【涼太の修行、一日目②】
涼太が放った一撃は、木は僅かに傷が入る程度だったが確かな動きだった。槍の使い方すら知らなかった涼太がそこまでやってのけたという事実に、ルルは驚きを隠せない。
「はぁ……はぁ……」
一方の涼太は超能力を発動させたことにより疲労し、超能力を解いて槍を下ろしていた。
(……おかしい)
槍をあれだけ軽々と振るったのに今はそんな様子もなく、かなりの疲労が見える。その様子を怪しんだルルはそっと涼太に近づき……あることに気がついたかの様に表情を変える。涼太も、ルルの異変に気がつき、ルルの方を見た。
「ルル……?」
「……」
お互いに、何とも言えない表情で見つめ会う。
「今の、何?」
「……へ?」
「不思議な力の流れを感じた。今の何?」
(……!?ど、どうしよう……)
完全に気づかれた。緊張で心臓が痛いほど高鳴るのを感じる。幸いにも超能力であるということはばれなかったものの、ルルはこちらを怪しむように見つめている。
「き、気のせいじゃないかな?」
「気のせいじゃない」
何とかして切り抜けようと、涼太は咄嗟に誤魔化そうとしたがルルには誤魔化しなど通用しない。こんな状況になってしまうならいっそのこと、超能力について素直に話してしまうか、などと思ってしまう。
そんな中、ふとルルが不思議な事を口にした。
「……私達は一緒に行動している、今の私達はチーム。チームに隠し事は無し……リエットが言ってた」
「……ルル?」
ルルは意を決した表情をしていた。それは今までに見たこと無いような、ルルはこんな表情も出来るのだと涼太に思わせる表情だ。最も、すぐに元の無表情に戻ってしまったのだが。
「私は、本物のドリアードじゃない。半樹人。人とドリアードの間に生まれた化物……これが私の秘密」
そう言う間もルルの表情は変わらず、無表情だ。そんな子なのだとわかっていても冷たい印象を受ける。
「教えて、秘密。さっきのは何?」
ルルが本当の事を言っている保証は無い。何でも信じてしまうのが自分の悪い所で、まずは疑ってみるべきだとスピカも言っていた。
だが、ルルの無表情ながらも真剣な目は嘘をついているものではないと自分の勘が告げる、なら信じるしかないと涼太は直感的に思った。
「……わかった、僕の秘密も話すよ」
こうして涼太は、ルルにほぼ全てを話した。超能力の事。その力が上手くコントロール出来ず、今後の為に、仲間の為に槍を使えるようにしたかった事。外の世界から来たことはどうしても話せなかったが、ルルを納得させるのには充分だったようでルルは何度も頷いていた。
「そう」
「……うん」
「私は、魔法を使わないから詳しくはわからないけど……多分、心の問題」
「へ?」
ルルは、理解したかのように笑っていた。
「心が伴わないから力に振り回される。それは槍を使っても変わらない。変わらないけど……槍を使うことは修行になる」
「修行……」
「戦いの時は集中して、さっきの槍のコントロールは上手く出来てたから、今は槍とその魔法を合わせて使う事をもっと意識して」
涼太はこくんと頷き、槍を超能力で支えるように意識するが……緊張すると、どうしても超能力が上手く働かないのか槍は先程のようには持ち上がらない。
(くっ……)
そもそもの話、槍を支える涼太の腕はあまりにも非力すぎた。それ故に涼太は槍を使う際に超能力、テレキネシスを沢山使う必要があり、その分超能力はコントロールも難しくなっていく。
「……あっ!」
テレキネシスを暴走させた涼太は、恐ろしげな音と共に槍を思い切り木に突き刺してしまった。手では取れず、結局テレキネシスで思い切り引っ張る羽目になり、疲れてしまった。
「……先に基礎的な筋力をつけた方がいいのかも」
「基礎的な……?」
涼太の様子を黙って見ていたはずのルルがふと呟く。どうやらルルは、涼太の一連の動作から何が足りないのか判断したらしい。
「うん 、私が思うのは……」
ふと、ルルは言葉が詰まり、慌てて警戒しているかのように辺りを見渡し始めた。その表情はなにかを見つけてしまったと言わんばかりだ。
「……ルル?」
「待って、あっちから風に乗って血の臭いがする」
「へ?」
涼太は大気の匂いを嗅いだが、血の臭いは感じない。一体ルルが何を言っているのかと思えば不意にルルが走り出した。
「あ、ルル!」
ルルは走り、森の中へと入っていってしまう。涼太は重い槍を抱え、倒れそうになりながらも、何とかルルを見失わないように森へとついて入った。




