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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第35話【涼太の修行、一日目①】

 ルルと約束した次の日の朝を無事に迎えた涼太は、出掛ける準備をしていた。とは言うものの、あの錆びた槍はディンゴに預け、日本から持ち込んだ服はレーゲンの鞄の中で持つべき荷物は食料以外殆ど無い。


 強いて言うなら、先程スピカから無理矢理渡された癒の魔女の薬ぐらいだろうか。


「涼太」


 部屋を出ようとしたところで、ふとスピカから声をかけられた。振り向けば、心配そうにこちらを見つめるスピカの姿がある。


「月の魔女に再び接触されたら何も話さずに逃げろ。昨日のままなら恐らく、あちらは何も手出し出来ない筈だ」

「……うん」


 出来ることなら二度と会いたくないが、相手が魔女なので何をしてくるのかは全く予測できない。スピカの真っ直ぐな目に涼太も神妙な表情で頷く。


「よし、行ってこい」

「行ってきます」


 スピカに優しく頭を撫でられ、涼太は今度こそ部屋を出た。






 少しだけ道に迷いながら涼太はようやくルルが泊まっている宿屋にたどり着いた。慌ててルル達の部屋を探し、扉を開けるとルルは既に用意を整えており、扉が開いた音に反応してこちらの方を見ている。


「来た」

「ごめん、ちょっと遅かったかな?」

「ううん。あんまり朝早くても意味無いから」


 ルルはそう言い立ち上がる。その手には2本の槍が握られていた。片方は昨日見た槍だが、もう片方はシンプルで古めかしい、短い槍だ。


「この槍、貸してあげる」

「いいの?ありがとう!」

「町の外に行こう、広い草原があるからそこなら邪魔されない」

「わかった。……場所まで用意してくれてありがとう」

「気にしないで。私がやりたいって決めたからやるだけ」


 申し訳なさそうな涼太の表情を見たルルは無表情から少しだけ表情を変え、楽しそうにそう言いながら笑った。






✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼






 ルルの後を付いていきながら町を出た涼太は、町の近くにある草原に来ていた。草で出来た緑色の絨毯が辺り一面を覆い、心地よい風が優しく吹いては草木を優しく揺らしている。


「持って」

「う、うん……」


 草原について早々、ルルからシンプルな槍を手渡された。


「っとと……」


 両手でしっかりと持とうとしたが、思わずよろけてしまう。ルルの槍ほどの重さではないものの、これを本当に使いこなせるようになるのか心配になるほどの重さだ。


「その内慣れる、きっと」


 ルルはそう言い、涼太を見つめながら次々と言葉を紡いでいく。


「……槍はどうやって使うと思う?」

「え?うーん……」


 急にそう聞かれ、涼太は驚きを隠せないもののしっかりと考える。


「槍は相手を刺すものだと思う」


 涼太の中で槍と言えばやはり狩りで槍を使うハーピーの姿が思い付いた。ハーピー達は槍を刺して使っていた、ならこれが正解だろうと涼太は軽い気持ちで答えたが、答えを聞いたルルの表情は渋い。


「……違う」

「え、違うの!?」


 ハーピー達のように槍を使うのだとばかり考えていた涼太にとって、ルルの答えは槍に対しての価値観を大きく変えるものだった。


「槍はリーチの長い剣」

「……槍が、剣?」


 ルルはこくんと頷くと槍の上の方を持ち、先の方を涼太へと見せた。槍の先は鋭く、刺されたらひとたまりもないだろう。見ているだけでも少しだけ恐怖心が湧き上がる。


「見て、槍の先端は剣と同じ形をしているの。確かに槍は相手を刺す事にも使える、でもそれは槍本来の戦い方じゃない……槍は先端を叩きつけるもの」

「刺すんじゃなくて叩きつける……?」

「見てて」


 今一つピンと来ないといった表情の涼太にルルはそう言うと、左手で前を、右手で槍の根本を持った姿勢で槍を構え……そのまま走りながら滑らせるように手を動かし、槍の先端を木の表情に叩きつけた。木は激しい音を立て、表面が剥がれ落ち、その槍先が滑った場所は生々しい傷跡がはっきりと残っている。


 ルルのあまりの早業に涼太は驚きを隠せず、ただ呆然と木に出来た傷を見つめた。


「槍はこうやって使うの」

「す、凄い……」

「……やってみる?」


 ふと、ルルがこちらの顔を覗いてきた。ルルの背は同じぐらいで、顔つきもまたまだ子供っぽいのだが、その表情からかとても大人びて見えてしまう。


「へ?」

「実際に持ってみて、構えて、さっきのが形でも出来たら技として教えてあげる、どう?」


 その声は貴方には期待していないという意味が含まれているような気がしたが、涼太はそれでも、やり遂げてみせるという決意を固めた。


「……やる、やってみせるよ」


 この重さで出来るなんて思わないが、ここで止まっていては先へは進めない。槍を見つめれば額の汗が滴となり落ちる。そっと槍を構えようとするが、案の定持つだけで精一杯だ。


(ルルはこれが持てれば教えると言っていた……なら、ここで諦める事なんか出来ない……!!)


 ふと、ここで妙案を思い付いた。バレるかバレないかはわからい上、少しだけ卑怯な気もするが背に腹は変えられない。


 涼太は意を決すると、槍を少しだけ持ち上げるように超能力で働きかけた……槍は涼太の力だけでなく、テレキネシスでも支えられた事により、涼太でも扱える程の重さへと変化した。


(行ける……これなら!)


 ルルの先ほどの構え方を思い出しながら、涼太は見よう見まねで槍を構え、そのまま、バットを横に振る様に槍を古い木に思い切りぶつけた。


 涼太の一連の変化と動きを見たルルがどのような表情をしていたか、必死だった涼太は最後まで確認する事が出来なかった。

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