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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第30話【強さと役割と、意外な再会】

「似合っているぞ、涼太」

「おー、まぁ様にはなったな」

「似合ってるよ!涼太君!」

「あ、ありがとう……」


 ガラクタ集めの店を後にした涼太達はそのまま今夜泊まる宿屋の一室に居た。理由はもちろん、手に入れた服を着るためだ。


 シンプルなその服は正にごく普通の町人を連想させるデザインで、似合っていると言われるとなんだか複雑な気分になる。


「さて、涼太の着替えも終わったことだ、私は今の内に用事を済ませて来る。明日の朝にはこの街を出るぞ」

「えー、もう行くのー?」

「ナナ、私達は遊びに来ている訳では無いんだぞ」


 ナナはムッとしていたが、スピカに諭され渋々提案を飲み込む。そのままスピカが部屋を出ていこうとしたので涼太はふと、あの事を言ってみようと思った。


「スピカさん」

「どうした?涼太」


 荷物として足元に置いてあった錆びた槍を手に取り、両手で握りしめる。きっと大丈夫だと自分に何度も言い聞かせ……涼太は口を開いた






「この槍、なんとか直せないかな?直して使いたいんだ」


 涼太の脳裏にあったのは森で出会ったハーピーの姿だった。槍を持ち空を舞い獣を狩る、その姿が涼太の脳裏に焼き付いて離れない。その強さに涼太は憧れたのだ。


 真剣な目で、じっとスピカを見つめる。スピカはため息をつくとそのまま返した。


「駄目だ」


 提案を拒絶されて少しショックを受けるものの、元々良い答えは期待して居なかったのでこの答えは涼太にとってある意味想定内だ。


「僕も自分の身は自分で守りたいんだ、それに、少しでもスピカさんの力に」

「涼太……この大陸に獣や、他の人間に殺される人間がどれ程居ると思う? 戦いに慣れた人間ですら簡単な判断ミスで死んでしまう。ここはそういう場所だ」

「……」


 死という言葉に対し、涼太はなにも答えられない。どうしたら説得できるのか考える内に、スピカは目線を合わせるようにしゃがみじっとこちらを見つめてきた。


 その目は、どこか不安げだ。だが、何故スピカがこのような目をするのか涼太には理解できなかった。


「涼太、私じゃ不満か?」

「ううん、そんな訳じゃ……ただ、僕はスピカさんに負担がかかってるような気がして……」

「……私なら大丈夫だ、気にする必要はない」


 スピカは話は終わりだと言わんばかりに涼太の頭をくしゃりと撫でると、用事があるのか部屋から出ていってしまった。


「今のスピカちゃん、ちょっと怖かったねー」

「「ネー」」


 ナナと人形達の何気ない会話がどこか遠くにあるように聞こえる。


「……ちょっと黙って聞いてたけどよ。涼太はいずれ、元々居た国に帰るんだろ? なら強くなる意味ってあんまり無いんじゃねって俺は思うけどなぁ……それに、槍の使い方かんて一朝一夕で覚えられるものでもねぇしよ」


 レーゲンの言った事はほとんど正論だった。だが、涼太にはどうしても思うことがある。曲げられない、理由があるのだ。


「でも!この旅は……僕の為のものなんだ。本当なら、スピカさんもナナも、レーゲンも……皆僕のために頑張ってくれているのに、僕にあるのは操りきれない超能力だけで……痛っ……」


 突然、何かが涼太にぶつけられた。ぶつかったものを手に取ると……それは小さな袋だった。中には銀色の硬貨が入っている。


「これって……」


 慌ててレーゲンの方を見ればレーゲンは笑っていた。


「それ俺のお金、余りは返せよ~」

「レーゲン、ありがとう!必ず返すよ!」


 のんびりした声の主に心なかでも最大限感謝しつつ、涼太は急いで部屋をを後にした。






「この街の鍛冶屋ってここかな……」


 鍛冶屋と書かれている看板が掲げられたその店は、明らかに他の店と違う、異質な気配を漂わせていて、涼太は思わず入るのをためらってしまう。


「……こんにちは」


 涼太が意を決して中に入ると、そこでは涼太の来訪にすら気づかずに鍛冶職人が黙々と作業に取りかかっていた。


 鍛冶屋その物は最初に訪れたハンデルで見かけた事があったものの、中に入るのは今回が初めてで、その熱気にどうしていいのかわからず、呆気に取られてしまう。そんな中、後ろにあった店の入り口が開いた。


 店に入ってきたその男は、涼太が見たことある男だ。たくましい腕に、頭にはバンダナ、そしてあの狼のような耳は……


「ディンゴさん……!?」

「お、おお? お前……涼太じゃないか!久しぶりだな!」


 あっちもこちらに気がついたらしく、豪快な笑顔で笑いながらこちらに近づいてきて……たくましい腕で背中を叩かた。少しだけ痛みを感じつつも 、涼太はハンデルに店を持つはずのディンゴが何故ここにいるのかが気になった。


「ディンゴさん、鍛冶のお店はどうしたんですか?それに、どうしてここに……」

「あの店は今は弟子に任せてあるから大丈夫だ!そしてこの店は実は俺が修行した場所でよ!王都に向かう途中だったんだけど久しぶりに顔を出したって訳よ。……ところでボウズ、手にあるそれ……どうしたんだ?」

「これは……」


 涼太は、自分はスピカと共に旅をして居る事と、この槍を森で拾った事をディンゴに伝えた。もちろん話の中で大切な場所はぼかしてある。


「古い槍なぁ……ちょっと見せてくれ」

「はい」


 涼太は手にしていた槍をディンゴに差し出した。ディンゴは槍を軽々と持ち上げると、じっと見つめ……やがて頷いた。


「これは……相当古い槍だな。これをどうするつもりだったんだ?」

「直して、使おうと思ってます」

「直して使うだ?これをか? ……ボウズ、悪いことは言わねぇからこれは止めておきな。もう殆ど使える場所が……いや、待てよ」


 ディンゴは店に飾られていた槍と錆びた槍を交互に見つめ……笑った。


「おい、ボウズ!この槍もしかしたら直せるかも知れねぇぞ!」

「本当ですか!?」

「ああ!3日、3日ありゃ何とかなるかも知れねぇ!」

「3日……」


 3日、そんなに時間が必要となるとスピカが怒るだろうか。だがここでNoと言えばもう二度と、この槍を直す機会は訪れないだろうと涼太は感じていた。


「ボウズ、どうする?」

「お願いします!」

「よし!ちょっと待ってなボウズ。今ここの職人に話をつけて来てやるからな」


 ディンゴはそう言うと鍛冶屋の奥の部屋へと入っていく。どれぐらいお金がかかるのだろうか、レーゲンに返せるだろうかとそんな事を思いながら待っていると……再び、鍛冶屋の扉が開いた。


「……へ?あ、君は……」


 そこにいたのは、またもや意外な人物だった

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