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【消えた作品】  作者: 風花
第4章【狩人という仕事】
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第29話【裏通りのガラクタ集め】

 川沿いに進んで古代の森を抜け、2日久しぶりに森の外へと出た4人は舗装された道を通り、次の街を目指していた。


「……涼太よ、この先いずれエウペル国の王都を通ることとなる。お前のその服は外の大陸から持ち込んだもの。今は何の問題も起こらないだろうが王都に到着するまでに服を変える必要がある」


 ふと、先行して歩いていたスピカが立ち止まり涼太の方を見ながらそう告げた。その目は真剣そのものだ。


「そ、そうかな……」


 涼太の服は日本からこの大陸へやって来てしまったあの日そのままだ。涼太はまだこちらの普通の人間を見ては居なかったが、その格好が目立つと言うのも何となく理解できた。


「……服装ぐらい、俺の方が目立つし大丈夫じゃねーの?」


 レーゲンはいつも通りの口調でそう告げるがスピカは首を横に降った。


「お前は何もわかって無いな。旅芸人のお前のその姿もこの大陸ではよくあるものだ。()()()()()()()()()ではない。()()()()()()()()()()だ。……詳しくは街についたら話そう、先を急ぐぞ」


 スピカはそう言うと再び先へと歩き出す。


「旅芸人って……俺には一応人形遣いって肩書きがあるんだけどなぁ……」


 レーゲンもそう呟き歩きだしたが、その呟きは誰にも届なかった。






 街にたどり着いた頃には太陽は頭上で輝いていた。太陽の位置は時間で変わるのだと学校で習った事がある涼太は、今は昼ぐらいなのだろうかと涼太はぼんやりと考えた。


「こっちだ、付いてこい」


 スピカはこの街を知っているのか、人混みの中でも迷うこと無く進んで行く。歩きながらちらりと街の案内図を見るとそこにはようこそ、トラルの街へと書かれていた。


「この街には来たことなかったなぁ……」

「あ、そっか。レーゲンは僕らに会う前は街を巡ってたんだっけ?」

「あぁ、人形劇の公演をしながらな」


 そう言い、レーゲンは得意気に笑う。いつかレーゲンの人形劇を見てみたいと思いつつ、涼太は周囲を見渡し……ふと、後ろに服屋と書かれた店がある事に気がついた。目的の店を通りすぎてしまっている。


「スピカさん、服屋あっちみたいだけど」

「目的は服屋じゃない。ガラクタ集めの所だ」

「ガ、ガラクタ集め……?」


 聞いたことも無いような店の名前だが、何となく嫌な響きだと涼太は感じた。


「怯える必要はない、ガラクタ集めは変わった奴……とにかく変わった奴だが、客の情報を外に漏らさない良い奴だ」


 スピカはそう言いながらも先へと進んで行く。表通りから外れ、細く、薄暗い道を進んで行き、気がつくと辺りは人の通りも疎らになっていた。


「ここ、完全に裏通りだよな……」

「うん……」


 レーゲンの怯えた声が聞こえる。涼太も辺りを見渡したが、古びた人気を感じない家、ゴミを漁るネズミ、苔の生えた道など見たくもないものがつい目についてしまう。


「涼太君、大丈夫?」


 ふと、ナナの方が心配になり見てみると、ナナはあまり緊張していなかったのか逆に心配されてしまった。ナナの背に乗るシュヴェとシルトは表情がよくわからないが先ほどと様子が変わらないように見える。


 不意にスピカが立ち止まった。そこには明かりが点る家が建っており、ようやく薄暗闇の探検は終わりを迎えたと涼太の心は安堵で満たされる。


「ここがガラクタ集めの家だ」

「なぁ……本当にここで服が手にはいるのか?」

「置いていないものは殆どない、ここはそういう場所だ」


 スピカがそう言い、躊躇無く家の扉をあるとなにか仕掛けがあったのかチリンチリンと静かな通りに鈴の音が鳴り響く。涼太は、この暗い場所と、明るい鈴の音と言うミスマッチな不気味さに思わず身を震わせつつもスピカの後について中へと入った。






 扉を潜り中へと入ると、そこには自分達以外の人間はおらず物で溢れていた。武器のようなものから、日曜雑貨らしきもの、中には見たことも無いような不気味な置物まである。


「ガラクタ集め、店が開いていたのならば居るのだろう?早く出てこい」


 いつまでたっても出てこない店主にしびれを切らしたのかスピカの怒気を含んだ声が店に響く。やがて店の奥からゴトゴトと音を立てながら涼太よりも年下のようにしか見えない小さな少年が現れた。


 少年の頭は天然パーマなのか黒い髪の毛がアフロのようになっており、その目には変わったデザインのゴーグルがかけられている。スピカは少年の登場を予想していなかったのか、驚いているようだ。


「はーい……って、何じゃお主らは」

「……お前こそ誰だ、おい、ガラクタ集めは何処に行った」

「何じゃ、先代の知り合いか。先代なら売り上げを伸ばすために王都へ出たぞ。今、この街に居るのはこの2代目ガラクタ集め様じゃ!」

「仕事ができるなら2代目でも何でもいい。こいつの服を探している。丁度良いものを出せるか?」


 スピカが目線で涼太はを示す、じっくりとガラクタ集めに見られ、涼太は生きた心地がしなかった。


「んー?……お主、見たこと無い服装じゃな。何か訳ありか?……まぁ良い、暫し待たれよ!」


 ガラクタ集めはそう言うと、先程出てきた奥の部屋へと入っていった。


「さっきの子がガラクタ集め……?それともガラクタ集めって人の子ども?」

「ガラクタ集めには何度か世話になっているが……あれは見たことがないな。ガラクタ集めに妻が居たという話は聞いたことは無い。恐らく孤児を拾ったのだろう、大きな街ではよくある話だ」


 孤児、という言葉の重さに涼太は思わず唾を飲み込む。この大陸ではそんなものも当たり前なのだろうか?


「待たせてすまんのぅ、じゃが、望みのものを見つけたぞ!」


 奥からガラクタ集めが姿を表した。その手には表通りで見かけた人達が着ていた服と良く似た服が抱えられている。


「これで良いか?」

「……あぁ、これでいい。すまないな、お代はどれくらいだ?」


 ガラクタ集めは悩むようなそぶりをしつつも、その目は涼太にしっかりと向けられている。やがて、何かを思い付いたかのように表情が変わったガラクタ集めは、答えを口にした。


「そうじゃな……銀貨5枚でどうじゃ?」

「銀貨5枚だと?」


 スピカは驚いたような声をあげる。涼太にはまだこの大陸での紙幣の価値がよくわかっていなかったが余程法外な値段を突きつけられたらしい。


「別に嫌なら良いんじゃぞ?」

「……仕方ない、払ってやろう。だがわかっているな?」

「勿論じゃ、この事は誰にも話さんぞ。情報屋の奴等にも」

「ならいい」


 スピカはそう言うと、布袋から銀貨を5枚取り出し、カウンターに叩きつけるように置く。ガラクタ集めは銀貨の枚数を確認するスピカに服を手渡した。


「交渉成立じゃな、お互いによき生活(ライフ)を」

「……また必要になったら来る」


 スピカがそう言いながら店を後にしたので、涼太達も慌てて後を追うように店を出る。


 背後のガラクタ集めの表情は確認できなかったが、何となく笑っているような気がした。

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