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【消えた作品】  作者: 風花
第3章【森のお猿にご注意を】
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第27話【戦いの終わりに】

 激しい音を立ててその場に倒れ付した(キングアイアイ)を見て、ようやく終わったのだということを自覚し、涼太は気が抜けたかのように、その場に座り込んでしまう。


 まだ無事だったアイアイ達からは低く唸るような困惑するような声が上がるも、自分達の王が倒されたと知ればすぐに散り散りとなって森の中へと姿を消した。


「涼太君!大丈夫?」


 アイアイが姿を消した直後、ナナは慌ててこちらへと走りよってきた。その口元や体は赤い血で汚れているが何か遠くの出来事のように感じる。


「……自分達を統率する王が居なくなればすぐに逃げるのか。所詮獣、薄情なものだな」


 スピカはアイアイの滑稽な姿にため息をつきつつ、こちらを……正確にはレーゲンの方を見ていた。その目は怒って居るように見える。


「いやー……まさかこうも上手くいくとは」


 動かなくなった赤と青の騎士の鉄人形を優しく抱き抱えるレーゲンも、自分の作戦がここまで上手くいくとは思っていなかったらしい……最も、それも本当なのかは涼太にはわからないが。


「貴様、わかっているだろうな」

「わかってるって何が?」

「……もういい、貴様は用件を片付けてからだ」


 スピカは吐き捨てるようにそう告げると、涼太達の方へ歩んできた。片ひざをつき、こちらへ目線を合わせるスピカの目はとても優しい色を帯びている。そのお陰で、涼太もようやく、少しだけ安心できた。


「大丈夫か? どこも怪我してないか?」

「多分……」

「私は大丈夫だよ!」


 涼太とナナの返事を聞いたスピカはふわりと微笑んだ。先程、戦いの最中に取り乱していた人物と同一人物なのかと思うほどだ。


「そうか。……しかしまぁ随分と汚れたな」


 戦いでの間合いの取り方が上手いのか、それとも魔法で戦うからなのか。そう言うスピカの体は返り血一つ浴びていない。


「……血、取れるかな?」

「完全に乾かぬ内に水で洗えば多少は落ちる。……どのみち一度、ハーピーの村へ戻るがその時に川の位置も聞いてみるとしようか」

「川か……ならこいつらもそこで洗ってやれるよな。よし、そうと決まればさっさと戻ろうぜ?」


 レーゲンも早く川で人形を洗いたいのか、スピカに同意して先へと促す。スピカはレーゲンを疑うような目で見ていたが、立ち上がると先程の道を戻り始めた。


「行こう、涼太君」

「うん」


 スピカ達とはぐれたら危険だ、涼太は体に無理矢理力を込めて何とか立ち上がり、ナナと共にスピカの後を追おうとして……その時、あるものが目に入った。それは猿達が集めた人間の道具の中にある。好奇心から拾い上げると、それは涼太が少し力をこめれば持てるほど軽い、錆び付いた1本の槍だった。


「涼太君!置いてっちゃうよ!」

「ご、ごめん!今行くよ!」


 ナナに呼ばれている。涼太は錆びた槍をどうするか悩んだが、結局そのまま手にし、慌てて来た道を戻った。







「ごめん!皆!」

「遅いぞ、涼太……ん?どうしたんだ、それは」


 仲間達の目線は涼太が持ってきた1本の槍に注がれていた。それもそのはず、槍は今でこそ錆び付いて無惨な姿となっているが、ハーピー達が持つシンプルなものとは違い、豪華な装飾が施されていたような跡が残されていたのだ。


「アイアイが集めた物の中にあったんだけど……気になって、つい」

「こりゃ……そうとう古い槍だな。使ったら壊れそうだぜ?」

「……何だか鉄臭い」


 ナナは何だかムッとしている。確かにこの槍は涼太からも鉄臭く感じるので、ナナからしてみれば相当な臭いとして感じられるのだろう。


「……この槍……どこかで見た記憶があるが思い出せんな。そうとう昔の話だ、もう持ち主も生きては居ないだろう。自由にするといい」


 スピカはなにかを考えながらもそう言うと、先へと進む。


(……昔のものなのかな。……スピカさんはいつから生きてるんだろう?)


涼太はそう思いつつ、スピカの後ろについて道を歩いていった。







「旅人よ、無事でよかった」


 村につくと、若長が4人を出迎えた。ハーピー達の混乱は既に収まっており、最初に村へ来た時と同じ静寂が村を包んでいる。


「悪いがキングアイアイはこちらの都合で討伐させてもらった。恐らくだが、しばらくの間はアイアイとの衝突も無くなるだろう」

「そうか。なら、何人か解体に回そう」

「それがいいだろうな」

「解体って……まさか、アイアイを食べるの!?」


 解体、と聞いてまさかあり得ないとは思いつつも涼太は質問してしまう。それを聞いた若長は不思議そうな表情をした。


「私たちは、猿も食べる。食べれない獣は、居ない」

「そ、そうなんだ……」


 そう聞いて、涼太は身震いした。猿は人間に似ているのでそれを食べると聞いてどうも居心地が悪くなる。


「旅人よ、もういくのか?」

「そのつもりだが」

「……村を出て西、そこに川がある。川を道沿いに下れば、人間の町につく」

「なるほど。鉄の道具も、言葉も、その町で手にいれたのか」


 スピカの言葉に、若長はこくんと頷く。


「仲間を守るため、覚えた」

「……そうか。何から何まで済まないな。私たちはもう行くとしよう」

「ま、色々あって楽しかったぜ。またな」

「バイバイ!」


 スピカの言葉の後に、皆が思い思いの言葉を村のハーピー達に投げ掛ける中涼太の脳裏にあったのは、僅かな時を一緒に過ごしたあの3人のハーピーだった。


「さようなら、またいつか会おうね」


 こうして4人は、ハーピーの村を後にした。

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