表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【消えた作品】  作者: 風花
第3章【森のお猿にご注意を】
27/67

第26話【vsキングアイアイ②】

「ヴォォォ!」


 キングアイアイの恐ろしげな雄叫びに合わせ、アイアイ達が一斉に襲いかかってくる。レーゲンに従うか否か、スピカに迷っている暇はもう無かった。


「スピカちゃん!」

「わかっている!」


 アイアイの素早い動きに会わせ、スピカは的確にショットを放ち、ナナは爪と、自在に動く体を用いて舞う。一方のアイアイには爪の引っ掻きと噛みつきしか無いものの、その動きは単調ながらも群れとしての統率がとれているように見えた。


 そんな2人の様子を、涼太はレーゲンのとなりで緊張しながら見つめていた。涼太とレーゲンの前に居るのは王と宝を護衛するために残った3匹のアイアイとキングアイアイだけだ。


「2人とも、大丈夫かな?」

「俺が知る2人なら大丈夫だって。それよりも涼太の方こそ大丈夫か?」

「……アイアイを引き付けるんだよね」


 アイアイを引き付ける。それが、涼太がレーゲンに教えてもらった作戦の役割だった。辺りに少しだけ残った邪魔なアイアイとキングアイアイを何とか引き付け、レーゲンはその隙に鞄を取り返すのだと言う。


 正直な所、出来るか不安だった。もしキングアイアイを上手く誘導出来ず、レーゲンの方へと攻撃を向けさせてしまえばそれだけで作戦は崩壊してしまう。重い責任が肩にのし掛かるが、こちらも悩んでいる暇は無い。


 涼太は心を落ち着け、近くにある大人の拳ぐらいの大きさの石を宙に浮かせる。アイアイは重すぎてなかなか持ち上がらなかったが石なら何とかなった。


 涼太の様子を見て危機を感じたのか、一斉に飛びかかってきた3匹のアイアイにそのまま狙いを定めると、一思いに石を飛ばした。


 何かがぶつかる音と、アイアイ達の悲痛な断末魔が聞こえ、思わず目を閉じた。わかっていたこととはいえ、以前戦った硝子で作られた偽物とは違う、今度こそ本物の命を奪ってしまったのだという後悔に涼太はとらわれてしまう。


 だからこそ、その前の危機に気がつかなかった。


「涼太!まだだ!」


 レーゲンの声に目を開くと、そこには今にもこちらを殺そうと牙を剥いた1匹のアイアイがいた。1匹だけ撃ち損ねていたのだ。


「っ……!」


 すぐ目の前に、目を見開き、牙を剥いたアイアイがいる。この状況は先程とよく似ていたが、先程とは違うのは相手は確実にこちらを殺そうとしているという事。その事実に、体の底から恐怖心が沸き上がってきた。


「わぁぁぁぁぁ!」


 超能力は既に極度の恐怖で発動しなくなっていた。明確な死がすぐそこまで来ている。





 生暖かい何かが、体に付着した。





 しかし、体に痛みはない。





「……?」


 不思議に思い辺りを見渡すと、そこには体を刃物で切り裂かれたアイアイと、薄い赤色の鎧を身に纏った小さな騎士がいた。涼太が頭から被ったのはアイアイの鮮血だったのだ。


「ま、間に合った……」

「……レーゲン?」


 涼太はその時、安心したような表情のレーゲンの手と、騎士の体が糸で繋がっていることに気がついた。どうやらレーゲンが騎士の人形を使って助けてくれたらしい。レーゲンの足元にはいつの間にか取り返した鞄が転がっていた。


「キングアイアイも涼太に集中してくれてたお陰で鞄を取り返せたけど……キングアイアイも倒さないとヤバそうだな」


 レーゲンが見た方向には、鼻息を荒上げ、こちらを苛立った様子で睨み付けるキングアイアイの姿があった。今にもいきり立って襲いかかってきそうだ。


 レーゲンはじっとキングアイアイを見つめる。その目はどこか遠くを見ているようだ。


「あのボス猿って水晶の事も知ってたしそうとう頭が良いんだろうなぁ……となると普通に殴りにいってもまず勝てねぇ。上手いこと隙を作って止めを刺すしかねぇな」

「じゃあどうやって……」

「その隙は俺が作るから、涼太は合図したらあの岩をボス猿の頭に思いきり叩きつけてくれればいい。じゃ、頼んだぜ?」


 レーゲンは有無を言わさずに涼太の頭を軽く撫でると、そのまま前へ進み出た。キングアイアイはじーっとレーゲンを見つめている。


「よーく見ろよ?種と仕掛けしかねぇから」


 レーゲンはそう言うと、先程の赤い騎士の人形と……もう一つ、青い騎士の人形を手に取った。人形はとレーゲンの指の糸と絡まり、ふわりと宙に浮いた。






 一方、レーゲンと対峙するキングアイアイはあの小さなものは糸の長さの範囲しか動けないのだという事を、先程の兵の戦いから既に理解していた。糸は短いため、リーチに入るにはあの人間はこちらの間合いに入る必要がある。その隙にあの体を砕いてやろう。


「ヴォオオオオオ!」


 そんな威厳と自信に満ち溢れた咆哮に、涼太は思わずすくんでしまう。そんな中、レーゲンは涼しげにキングアイアイを見つめていた。


「そんなことしてる余裕、あるか?」


 ふと、涼太がレーゲンを見ると、手の糸がいつの間にか消えていた。糸に繋がっていた人形達の姿もない。あまりにも一瞬の出来事に、涼太もキングアイアイもその異変に気がつくのに遅れてしまった。


「アハハハハハハ!」

「キャハハハハハ!」


 突然、不快な笑い声が辺りに響き、ユラリ、ユラリと赤と青が交差するように宙を自由に舞う。


「人形が糸無しで……しかも宙に……!」


 レーゲンの手から離れたはずの赤い剣の騎士人形と、青い盾の騎士人形はキングアイアイを2人で囲み、遊ぶように周囲をクルクルと回り出した。


「ヴォッ……ヴォォォ!」


 キングアイアイは困惑しながらも人形に狙いを定め、腕を振り下ろす……が、5mほどもあるキングアイアイが30cmほどしかない上に素早く動く小さな人形に攻撃を当てるのは至難の技だ。何度も何度も空振りし、それでも諦めずに攻撃を続けている。


「涼太!」


 ふと、人形に見とれていた涼太が我に返るとレーゲンがこちらを見つめていることに気がついた。


「今だ、やれ!」

「!」


 そうだ、キングアイアイはあの不思議な人形達に気を取られている。攻撃するなら今しかない。周囲を見渡せば、大きな岩が転がっているのが見えた。


(嫌だとか、言ってる場合じゃない)


 涼太は決意を固めるとテレキネシスで、大岩を持ち上げるように意識する。アイアイですらなかなか持ち上がらなかったが大岩となれば持ち上げるのにそうとうな力が必要となるのか、いくら力を込めても全く動く気配すらない。


(っ……重い……けど……動け!)


 心と体が伴えば、超能力は発動する。エスプリに聞いた言葉の通り、心と体を1つにするイメージで大岩に力を集めれば、ついに大岩が宙に浮いた……が非常に重たい。長時間持ち上げるのは不可能だ。なら、することは一つしかない。


「っ……くらえぇぇ!」


 大岩は涼太の声と共に持ち上げられると、そのままキングアイアイの頭に激しく打ち付けられ……次の瞬間聞こえたのは、大岩が砕ける音と、キングアイアイが倒れる音だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ